元U-23代表・オリックス5年目右腕が明かす コロンビアでつかんだ成長のヒント
まさか、の選出だった。2018年10月にコロンビア・バランキージャで開催された「第2回 WBSC U-23ワールドカップ」。この年、プロ2年目だったオリックス・山崎颯一郎投手は野球日本代表「侍ジャパン」U-23代表のメンバーとして縦縞のユニホームに袖を通した。まだ1軍デビューを飾る前のこと。「まさか選ばれるとは思っていなかったです」と、驚きをもって振り返る。
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山崎颯一郎投手を驚かせた稲葉篤紀監督の存在感「やっぱりすごいな、と」
まさか、の選出だった。2018年10月にコロンビア・バランキージャで開催された「第2回 WBSC U-23ワールドカップ」。この年、プロ2年目だったオリックス・山崎颯一郎投手は野球日本代表「侍ジャパン」U-23代表のメンバーとして縦縞のユニホームに袖を通した。まだ1軍デビューを飾る前のこと。「まさか選ばれるとは思っていなかったです」と、驚きをもって振り返る。
身の引き締まる思いで向かった事前合宿。この時、U-23代表を率いたのはトップチームと同じ、稲葉篤紀監督だった。「まず最初に思ったのは、後ろ姿がデカい。やっぱりすごいな、と。そこにすごくビックリしたことを、はっきり覚えています」。指揮官が歩んだ20年の現役生活、そして重ねる指導者としての経験がギュッと詰まった体は大きくて厚みがあった。「あのくらいにならないとダメだな」と、ハッとさせられたという。
合宿に入った当初、少なからず感じていた緊張は、大会が近づくにつれ「いつもとは違う、独特のピリつき感」に変わっていった。U-23代表とはいえ「侍ジャパン」を名乗り、トップチームと同じユニホームで戦うのだから、選手たちの背筋が伸びるのも当然の話だろう。
中学3年生以来の海外でのマウンドも「問題なく投げられました」
初めて訪れたコロンビアは、10月下旬だというのに「メチャメチャ暑かったです」。舞台となったバランキージャはカリブ海に面した街で、中南米独特の湿度の高い空気が立ちこめていた。慣れない海外での国際大会。環境の変化に戸惑う選手も多いが、「僕は問題なく投げられましたね。カーブとストレートが投げやすかったです。むしろ湿気でボールの掛かりが良かったくらいです」と頼もしい。
海外で野球をするのは、中学3年生以来のことだった。2013年にボーイズリーグの日本代表として米国・フレズノで開催された「世界少年野球大会」に出場した。この時、同じく代表メンバーだった寺島成輝投手(東京ヤクルト)と5年後、今度はU-23代表としてチームメートになるとは、不思議な縁を感じずにはいられない。
コロンビアでは2度、先発マウンドを任された。オープニングラウンド初戦の南アフリカ戦では、6回を2安打無失点。スーパーラウンド初戦の韓国戦では、たびたび得点圏に走者を置きながらも4回2/3を投げてホームは踏ませず。先発投手としての役割を果たし、勝利のバトンを繋いだ。
海外の打者を相手に手応えを感じたカーブ「ヒットにされていない」
当然ながら、いつもとは勝手が違った。打線は1番から9番まで体の大きな海外の打者が並ぶ。「みんな体がすごくデカくて、手足が長い。プラス、パワーもすごくある。甘め(のコース)には投げないでおこうと考えていました」。外角低めのきわどいコースを攻めても、簡単にバットに当てられてしまう。日本人打者とは違う手強さを感じる中、一筋の光明となったのが落差の大きなカーブだった。
「やっぱりカーブは落差があるので、いい感じで打者のタイミングを外すことができました。僕の記憶ではカーブはヒットにされていません。海外の打者にはカーブを使った投球は有効だなと思いました。ただ、韓国戦では甘いコースにいった真っ直ぐは、すぐに弾き返された。真っ直ぐはコントロールはもちろん、球威や球速もまだまだだと思い知らされました」
帰国後はトレーニングでサイズアップに挑戦、今オフは未到の90キロが目標
日本は決勝に進んだものの、延長10回タイブレークの末、1-2でメキシコに惜敗し、準優勝に終わった。金メダルは逃したが、山崎投手は「いい勉強になった」と成長のヒントを見つけて帰ってきた。
「海外の選手も日本の選手も、みんな体がデカかった。それに比べて、僕はまだまだ線が細いなと思いました」
190センチと長身ながら、当時は体重80キロ。帰国後はウエイトトレーニングやストレッチなどを採り入れながら、最高87キロまでサイズアップに成功。以前に比べると「感覚的なものですが、球がバットに当たっても前に弾かれず、差し込めるイメージ」と手応えを口にする。現在はやや体重減しているが、このオフは未到の90キロを目標にしたいと話す。
コロンビアでの学びを生かそうと臨んだ2019年は、シーズン途中に右肘を痛めて右肘内側側副靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けた。長いリハビリ生活を終え、念願の1軍デビューを飾ったのは今年5月1日の福岡ソフトバンク戦。ここまで6試合に投げ、まだ初勝利は手に入れていない。チームは熾烈な優勝争いの真っ只中。今、自身が求められる仕事は「抑えることです」と言い切る。
ようやく巡ってきた1軍定着のチャンス。侍ジャパンとして得た経験を生かしながら、マウンドでの存在感を強めていきたい。
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