元プロ野球長距離砲→Baseball5代表主将 辻東倫が「野球では流さなかった涙」の理由
かつてプロ野球の次代を担う若手スラッガーとして将来を嘱望された男が、新スポーツ「Baseball5」のパイオニアとして躍動している。野球日本代表「侍ジャパン」Baseball5代表として、今年3月に香港で行われた「第3回Baseball5 アジアカップ2026」に出場して準優勝に貢献し、大会MVPに選出された辻東倫(つじ・はるとも)選手。12月にプエルトリコで開催される予定の「第3回Baseball5 ワールドカップ2026」では念願の世界一と、選手としての集大成に挑む。
写真提供=Full-Count
今年3月の「Baseball5 アジアカップ」で大会MVPに輝いた辻東倫選手
かつてプロ野球の次代を担う若手スラッガーとして将来を嘱望された男が、新スポーツ「Baseball5」のパイオニアとして躍動している。野球日本代表「侍ジャパン」Baseball5代表として、今年3月に香港で行われた「第3回Baseball5 アジアカップ2026」に出場して準優勝に貢献し、大会MVPに選出された辻東倫(つじ・はるとも)選手。12月にプエルトリコで開催される予定の「第3回Baseball5 ワールドカップ2026」では念願の世界一と、選手としての集大成に挑む。
今年3月のアジアカップ決勝では、チャイニーズ・タイペイにセットカウント1-2で敗れた。「試合終了後、僕、キャプテンとしてチームメートへ話をしながら泣いちゃったんです。野球で泣いたことは、ほぼありませんでした。高校3年の夏、最後の県大会で負けた時も泣かなかったのに……。涙が出てきて自分でもびっくりしました」。それほど、この大会、この競技に懸けていた。
用具はボール1つ、自分でトスしたボールを素手で打つ1チーム5人制
Baseball5は、2017年にWBSC(世界野球ソフトボール連盟)が野球・ソフトボール振興の一環として考案した新競技である。用具はゴムボール1つ。基本的なルールは野球・ソフトボールと同じで、自分でトスしたボールを素手で打つ。1チーム5人、5イニング制で、男女混合(公式戦では男女各2人以上)で行われるところが特徴だ。
一方、辻選手は2012年、NPBドラフト会議で読売から3位指名され、三重県立菰野高校から内野手として入団。右投げ左打ちの長距離ヒッターとして期待されていた。プロ2年目の2014年11月、NPBの若手有望株と大学生で構成する侍ジャパンU-21代表に選出され、「第1回 IBAF 21Uワールドカップ」に出場していることからも、当時の評価の高さがわかる。チームメートには広島東洋の鈴木誠也外野手(現シカゴ・カブス)、北海道日本ハムの近藤健介捕手(現福岡ソフトバンク・外野手)、福岡ソフトバンクの牧原大成内野手らがいた。
24歳の若さでプロ野球を現役引退、ジャイアンツアカデミーのコーチに
プロ野球選手としては1軍通算43試合出場で、本塁打はなく1打点。24歳の若さで読売から戦力外通告を受け、現役を引退した。国内独立リーグから誘いがあったが、「高卒でドラフト指名していただいて、勉強させていただいた読売巨人軍にご恩を感じていました。読売巨人軍の一員として貢献したい気持ちが強かったです」と、ジャイアンツアカデミーのコーチに就任。子どもを指導する日々が始まった。
転機は2023年。読売ジャイアンツ女子チームの選手で、先にBaseball5に携わっていた田中美羽選手から「ハルさん(辻選手)、たぶんハマると思いますよ。ジャイアンツアカデミーの男性コーチと読売ジャイアンツ女子チームの選手で、チームを組んでやってみませんか?」と未知のスポーツに誘われた。

フィールドはわずか21メートル四方、スピード感は野球以上
Baseball5のフィールドは、わずか21メートル四方。塁間は野球の27.431メートルの半分未満の13メートルしかない。スピード感は野球を上回り、守備側は素早いフットワークを求められる。外野フェンスを越える打球、直撃する打球、ファウルを打てば即アウトのルールで、打者はどこに打ち、誰に捕らせるかが重要で、戦術性の高いスポーツでもある。
辻選手は「最初は僕も『プロ野球をやっていたのだから、できるでしょ』と少し“上から”見ていました。やればやるほど難しいスポーツで、だからこそ面白い。徐々にハマっていきました」と振り返る。最初に組んだチーム「GIANTS」で活躍。2024年には早くも侍ジャパンBaseball5代表に選出され、4月の第2回アジアカップで優勝を遂げた。同年10月の第2回ワールドカップでは、強豪キューバに敗れ2位に終わるも、辻選手はベスト5に選出された。
「男女混合というところが時代に合っていて、お金もかからない」
「みんなにこのスポーツをやってみてほしいです。1回やっただけじゃわからないかもしれませんが、何回かやって、試合をしていくうちに、必ず面白くなってくるはずです」と辻選手は力を込める。「実際のところ、このスポーツは今後必ず盛り上がっていくと思います。男女混合というところが時代に合っていますし、お金もかからないですから」とも。Baseball5は、今年10月にセネガルのダカールで行われる「第4回ユースオリンピック競技会」の公式種目にも追加された。
Baseball5代表メンバーは、今年3月のアジアカップでは「めちゃめちゃ練習して臨みましたし、当然優勝して12月のワールドカップでキューバに挑もうと考えていました」。それだけに、3位以内に与えられるワールドカップの出場権は確保したものの、決勝でチャイニーズ・タイペイに敗れたことは衝撃だった。「チャイニーズ・タイペイはユース世代が育ち、凄くレベルが上がっていてびっくりしました」と警戒を強めている。
今年4月に読売ジャイアンツ女子チームのコーチにも就任した
辻選手は「今のところ、日本でこの競技をやっている人は少ないですが、全国に知れ渡り、将来的に企業チーム、プロができて、お金を稼げるくらいになることを願っています」と目を輝かせる。現在31歳で、「日本代表は30代が多いですが、世界は若返っています。この競技の発信、普及はずっと続けていきますが、日本代表選手としては、次のワールドカップが最後のつもりでやります」と決意を抱いて臨む。
一方、今年4月には読売ジャイアンツ女子チームのコーチにも就任した。同い年の大谷翔平投手(ロサンゼルス・ドジャース)ではないが、いわばBaseball5と野球の“二刀流”。「両方やりがいがあります。野球をなめてもらっては困りますし、野球をやっているからといってBaseball5が上手とは限りません」と躍動感に満ち溢れている。
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