「全体としてレベルを上げないと…」 周東佑京が痛感した世界との距離と課された宿題

2026.4.27

2026年、春。マイアミの空に歓喜の咆哮を響かせたのは、野球日本代表「侍ジャパン」ではなく、ベネズエラ代表だった。連覇を目指した2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™(WBC)は、準々決勝の舞台で幕を閉じた。敗戦の静寂が包むベンチで、力強い眼差しで前を見つめていたのが周東佑京外野手(福岡ソフトバンク)だ。

写真提供=Getty Images

写真提供=Getty Images

“代走の切り札”から“主軸の1人”へと変化を遂げた3年

 2026年、春。マイアミの空に歓喜の咆哮を響かせたのは、野球日本代表「侍ジャパン」ではなく、ベネズエラ代表だった。連覇を目指した2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™(WBC)は、準々決勝の舞台で幕を閉じた。敗戦の静寂が包むベンチで、力強い眼差しで前を見つめていたのが周東佑京外野手(福岡ソフトバンク)だ。

 2023年大会の準決勝・メキシコ戦でサヨナラのホームを駆け抜け、「世界の周東」として名を轟かせた男は、この3年間で「代走の切り札」から、日本を背負って立つ「主軸の1人」へと進化を遂げていた。

 今大会は1次ラウンドでの本塁打を含め、走攻守すべてにおいて圧倒的な存在感を示した。しかし、戦いを終えた周東選手が口にしたのは、自身の活躍への満足感ではない。世界との距離、そして「日本代表」という重責に対する、あまりにもストイックな覚悟だった。

「どうなるか分からないですけど、“最後の代表”だと思いながらやっていたので。『次に出たい』とかは、まだ終わったばかりなので特にないです。選ばれればいいと思いますし、選ばれるように努力し続けるだけかなとは思っています」

 2023年大会の熱狂から3年。当時20代半ばだった周東選手も、今や30歳。チームの中堅からベテランへと差し掛かる年齢となった。若手の台頭が著しい日本球界において、代表の椅子を勝ち取り続けることの難しさを、誰よりも理解しているからこその言葉だろう。

身近な先輩から学んだ「チームが勝つために何が必要か」

 今回の侍ジャパンには、佐藤輝明内野手や森下翔太外野手(ともに阪神)といった、次代を担う若きスラッガーたちも名を連ねた。彼らと積極的に技術論を交わし、惜しみなく自身の経験を伝える周東選手の姿は、かつて先輩たちの背中を追いかけていた若手のそれではない。

「森下(翔太)とか、テル(佐藤輝明)とかもそうですけど、『こういう風に打っている』とか『こういう風にした方がいい』っていうのは、いろいろ聞きながらやっていました。その話を聞いて、今までコンさん(近藤健介外野手)やいろいろな方に教えてもらったことが、(若い世代に)繋がってきたのかなっていう感じではありますね」

「コンさん」と慕う先輩の姿からは、まだまだ学ぶことが多い。今大会では、日本屈指の安打製造機であり、自チームの同僚でもある近藤選手が打撃不振に苦しんだ。WBC特有の重圧と徹底マークに翻弄され、苦悩しながらも必死にもがく姿を、周東選手は誰よりも近くで見てきた。

「(吉田)正尚さんとかに聞きながらやっているのは近くで見ていました。本当にいろいろ考えながら(状態を)より良くしようと思っているんだろうなとは思っていました。でも、(自分が)出ていない試合でも、コンさんが一番声を出していた。そこは今までホークスでやっていたコンさんと変わらなかったのかなとは思います」

 自らのプレーで貢献するのはもちろんだが、控えに回る時も、練習の合間も、常に「チームが勝つために何が必要か」を考え抜く。今大会、侍ジャパンのベンチでは投手陣への声がけをしたり、仲間を励まし鼓舞する周東選手の姿が何度も見られた。こうした振る舞いや「“最後の代表”だと思って戦った」という言葉の裏には、個人のキャリアのためではなく、この最高のメンバーで世界一を奪いに行くという、純粋な決意が込められていたのだろう。


写真提供=Getty Images

想像以上に厚かった優勝国・ベネズエラの壁

 3年前のWBCと今大会。周東選手にとって最も大きな変化は、出場機会だろう。前回は主に代走という限定的な役割だったが、今回は「走・攻・守」の三拍子揃った野手としてスタメンに名を連ねる機会が増えた。1次ラウンドのチェコ戦で叩き込んだホームランは「足のスペシャリスト」を卒業し、国際舞台でも通用する強打を備えた証明でもあった。

 しかし、準々決勝で対峙したメジャー軍団・ベネズエラの壁は想像以上に厚かった。

「皆さんはパワー、パワーって言いますけど、(もちろん)外国人選手はパワーがすごいですけど、やっぱり技術が高いなと。日本代表を見てもそうですけど、メジャーで活躍している選手はすごく技術が高いな、と思いながら見ていましたね」

 メジャーの第一線で活躍する選手の凄みを冷静に分析する一方、世界トップクラスの脚力を持ち、十分な結果を残した周東選手だが、自身の現状を「フィジカルも技術もない」と断じている。

「技術を上げるだけですかね。フィジカルもそうですけど。フィジカルも弱いし、技術もないし、というところなんで、現状の僕は。両方とも上げていかないと、日本のレベルもどんどん上がっていく。ピッチャーのレベルが上がってきた時に、何もできないんじゃないかなっていうのは、すごく思いました」

ベスト8という成績から課せられた「宿題」

 準々決勝での敗戦後、大谷翔平選手(ロサンゼルス・ドジャース)が選手たちに「また会おう」と言葉をかけたという。それは、2年後の2028年ロサンゼルス、そして2029年WBCに向けた再戦の約束だった。しかし、周東選手は安易に「次」を語らない。

 日本がもう一度チャンピオンになるために何が必要か――。

「僕が言うのもなんですけど……。一人ひとりの技術を上げることじゃないですか。それは出た選手、選ばれるような選手だけではなくて、もう全体として。レベルをメジャーに合わせにいくのではないですけど、全体として上げていくことが一番かなとは思います」

 日本野球が世界標準を超えていくこと。それが今回のベスト8という成績から課せられた「宿題」だという。

 大会を終えて帰国した周東選手を待っていたのは、わずか10日後に迫ったシーズン開幕だった。チームへの合流を予定より早め、休む間もなくグラウンドに姿を現した。そこには個人ではなく、チームの勝利を第一に考える、変わらぬ姿勢がある。

 侍ジャパンで見せた献身、そして世界で見つけた課題はすべて、福岡ソフトバンクでの戦いへと還元されていく。数年後「2026年のマイアミでの敗戦が自分を強くした」と振り返る日が来るように、日の丸を背負う覚悟と飽くなき探究心を持って、進化し続ける。

記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images

NEWS新着記事