ベネズエラ監督が明かすWBC優勝の舞台裏 チーム作りに影響を与えた2024年の来日経験

2026.6.8

3月に開催された「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(WBC)で世界の頂点に立ったのは、ベネズエラ代表だった。中南米の強豪国として知られながらも、なぜかWBCとは相性が合わず。2006年の第1回大会から毎回出場を重ねてきたが、最高位は2009年のベスト4止まりだった。そのベネズエラを悲願の初優勝へ導いたオマー・ロペス監督に、優勝までの歩みと対戦国から見る日本野球について語ってもらった。

写真提供=Getty Images

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母国を悲願の優勝に導いたロペス氏が重要視した選考過程

 3月に開催された「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(WBC)で世界の頂点に立ったのは、ベネズエラ代表だった。中南米の強豪国として知られながらも、なぜかWBCとは相性が合わず。2006年の第1回大会から毎回出場を重ねてきたが、最高位は2009年のベスト4止まりだった。そのベネズエラを悲願の初優勝へ導いたオマー・ロペス監督に、優勝までの歩みと対戦国から見る日本野球について語ってもらった。

 ロペス氏がベネズエラ代表監督に就任したのは、2022年のこと。翌年の第5回WBCに向けての起用だったが、WBCでは1次ラウンドを1位通過したものの、準々決勝で米国に敗れた。監督を続投し、第6回大会も代表チームを率いることになったロペス氏は今回、最も長く時間をかけたのがコーチ・選手の選考過程だったという。

「2025年4月から選考プロセスをスタートさせました。2023年のWBCを知る人物はほぼ全員が代表チームを離れていたので、私がGMの役割も任されたというわけです。まずは少人数で選考委員会を立ち上げ、目指す方向、どんな人物を求めるのか、など、詳細なチーム方針を設定。その上でコーチや選手を選んでいきました」

少なくとも3回の面談を実施…「最高のチームが出来上がった」

 まずはスカウト担当らと協力し、代表チームに興味があるという人物、ぜひ入ってほしいと願う人物をリストアップ。その数は100人以上にも及んだ。一人一人と面談を重ね、ともに戦う仲間として相応しいか否かを見極めた。この時、ロペス氏が重視したのが「自分のためではなく、ベネズエラのために戦いたい」と思う心だった。

「ベネズエラのために、という気持ちに嘘偽りがないか。私はこの1点を重視しました。中途半端な気持ちの人物が加わると、そこからチーム批判や不満が湧き出てくる。短期決戦では大きな命取りとなります。選考委員はそれぞれの立場や役回り、意見があって当然ですが、私は代表チームはもちろん、ベネズエラのためにすべてを捧げる。だからこそ、自分のエゴは捨て、謙虚な気持ちを持って、ベネズエラという国のために戦えるメンバーを選んでほしい。そう伝えた結果、最高のチームが出来上がったというわけです」

 最終ロースターに名を連ねたのは、少なくとも3回の面談をくぐり抜けてきた“選ばれし者”たち。だからこそ、ロナルド・アクーニャJr.外野手(アトランタ・ブレーブス)らスター選手を擁しながらも、誰か一人が突出するのではなく、全員が持ち味を生かせる、そして団結力の強いチームが作れたという。

「普段所属するチームとは違い、WBCは国の誇りや威信をかけて戦う場。給料のためにプレーするわけではありません。野球愛を超えた情熱、そして人生がかけられた舞台になるのです」

 選手同様に注力したのが、コーチ陣の「バランス」だ。「私が熱くなりやすいので、ベンチコーチには落ち着きがあり、『オマー、少し落ち着こう』と気づかせてくれる(ロビンソン・)チリーノスに就いてもらいました」と明かす。また、「コーチになると急に眉間に皺を寄せるようになるのが大半だが、そんな時にチームに笑顔をもたらしてくれたのがミギー(ミゲル・カブレラ)でした」とも笑う。現役時代は3冠王にもなったカブレラ氏は打撃コーチに就いたが、「本人は“メンタル打撃コーチ”と言っていましたよ(笑)」とチームを和やかな奮起にすることでも一役買ったようだ。

2024年のプレミア12で来日…得心した侍ジャパンのプレースタイル

 優勝への道のりの中で大きなヤマとなったのが、準々決勝の野球日本代表「侍ジャパン」との試合だったと振り返る。ベネズエラは初回に1点を先制するが、3回に逆転を許して3点を追う展開に。だが、5回にマイケル・ガルシア内野手(カンザスシティ・ロイヤルズ)の2ランで1点差に詰め寄ると、6回にはウィルヤー・アブレイユ外野手の3ランで逆転し、勝利を掴み取った。

 日本にとっては悔しい敗戦となったわけだが、実は2024年の「第3回WBSCプレミア12」で来日した際に見た侍ジャパンの姿が、ベネズエラ代表を率いる上で大いに参考になったと振り返る。

「日本に行った時に感じたのは、国全体として非常に規律正しく、教育が行き届いているかということ。なるほど、日本代表が規律正しく全力でプレーし、成功を収めているのは、こういった背景があるからなのかと納得しました。野球に限って言えば、試合前に与えられたチーム練習時間の45分を実に効率良く使っている。あの45分間の使い方が素晴らしく感動すら覚えました」

 限られた時間を効率良く使えるように、WBCではしっかり計画を立てた上でチーム練習に臨んだという。結果として、選手の集中力も高まり、無駄のない準備を進めることができたと大きく頷く。結果として、6大会目にして初めて頂点を掴み取った。

「今回は日本が望んだ結果は手に入れられなかったかもしれませんが、日本が世界屈指の強豪であることは変わらない事実。好敵手として日本とベネズエラの素晴らしい関係はこれからも続きますし、ともに世界の野球を盛り上げていきたいですね」

 今回のWBCを最後に代表監督から退く意向を示しているロペス氏だが、今後も代表チームの活動をサポートし、ベネズエラ野球のレベルアップや世界での野球普及に励んでいきたいと話す。試合が終われば、同じ野球を愛する者同士。WBC優勝経験を持つ仲間として、ともにさらなる野球の発展に努めていきたい。

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