「国民の夢をのせる」 WBC優勝戦士・岩村明憲氏が期待する侍ジャパンの持つ力

2020.5.18

新型コロナウイルスの世界的大流行により、2020年以降に予定されていたスポーツイベントの多くが中止や延期となってしまった。日本プロ野球(NPB)の今季開幕は6月以降になる見通しで、7月19、20日に予定されていたオールスターは史上初の中止を決定。ファンは国民的スポーツとして当たり前のように楽しめていた野球が、実は特別なものだったことに気付かされている。

写真提供=Full-Count

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コロナ禍で気付く野球が持つ魅力「野球には社会を活気づけるパワーがある」

 新型コロナウイルスの世界的大流行により、2020年以降に予定されていたスポーツイベントの多くが中止や延期となってしまった。日本プロ野球(NPB)の今季開幕は6月以降になる見通しで、7月19、20日に予定されていたオールスターは史上初の中止を決定。ファンは国民的スポーツとして当たり前のように楽しめていた野球が、実は特別なものだったことに気付かされている。

 日本、そして世界中の人々が手を取り合い、目に見えぬ敵と戦う日々は不安も多い。自粛や行動制限などが続き、気分が滅入りがちになってしまうが、「野球にはそんな社会を活気づけるパワーがある」と語る人がいる。第1回、第2回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)に出場し、世界の頂点に2度輝いた岩村明憲氏だ。

 現在はルートインBCリーグ・福島レッドホープスで球団取締役社長兼監督を務める岩村氏は「今は人の命が大事だということが全世界共通の想い。一日も早く事態を収束させることが大前提」と語る。同時に、一時的ではあるが野球が遠い存在になったからこそ気付く「力」について言及した。

「インターハイが中止になり、夏の甲子園もどうなるか分からない。そこを目標にしてきた子どもたちは、やりきれない思いだと思います。ただ、そこが人生のゴールではないし、来年以降、その悔しさを発揮する舞台は必ずやってくる。そして、今まで積み上げてきた練習は必ず財産になるでしょう。

 こうやって、学生やアマチュア競技が我慢を強いられる中で、プロ野球が開催に向けて動いている意味は大きい。野球は見る人がともにハートを熱くしたり悔しがったり、一喜一憂できる娯楽として楽しんでもらえるものだと思います。特に、日本のトップが集まる侍ジャパンは国民の夢をのせる役割があるので、みんなが日常を取り戻すきっかけの一つにもなるのではないかと思います」

2度のWBCで心強かったファンの声援「侍ジャパンは国民が一つにまとまれる対象」

 野球日本代表「侍ジャパン」が日本を一つにまとめる魅力を持つことは、自身の経験を通じて感じている。第1回WBCでは日本が勝ち進むにつれ、ファンからの注目は急上昇。米サンディエゴにあるペトコパークで開催された決勝戦では、ファンの大きな声援が後押しとなり、キューバを下して世界一となった。

 ディフェンディング王者として臨んだ第2回大会は、東京が舞台となった第1ラウンドから大いに盛り上がり、見事2連覇。「2度の世界一では、日本のファンの方の声援が本当に近く感じられて、自分たちは非常に心強く思いました」と振り返る。

「侍ジャパンはファンはもちろん、国民が一つにまとまれる対象だと思います。いいプレーや勝利を喜ぶと同時に、悔しさや悲しみさえもみんなで共有できる。こういうことは、コロナ禍を経験した今は特に、すごく有意義な時間に感じると思います。国際大会を開催できることが幸せなことだし、勝ち負けで一喜一憂できる状況にあることが幸せ。みんなが少なからず我慢をし、ストレスを溜めながら過ごしているだけに、侍ジャパンとして戦う舞台が整った時には、日本が元気を取り戻すきっかけになってくれると信じています」

東日本大震災からの復興に励む人々を明るく照らした東北楽天の優勝劇

 野球は人々に明るい笑顔を取り戻させ、活力を与えるもの。岩村氏はそう信じている。「野球はそういう特別なもの」と実感したのが、2013年に東北楽天ゴールデンイーグルスが初めて日本一に輝いた時だった。東北楽天の優勝は、2011年に起きた東日本大震災から復興を目指す東北を明るく照らす出来事となった。震災当時、東北楽天に所属していた岩村氏は、2013年にはプロデビューを飾った東京ヤクルトスワローズに移籍していたが、東北の人々の喜びは心に響いたという。そして今、縁あって移り住んだ福島でも、球団取締役社長兼監督として、野球を通じた復興支援と地域活性に努める。

「この先、日の丸を背負って戦う大会では、侍ジャパンには国民の夢をのせて頑張ってもらいたいと思います。選手もなかなか練習ができない状況が続いていますから、侍ジャパンに選ばれれば『自分たちの力で盛り上げよう』と誇りに思ってくれるでしょう。人々の想いを背負って戦うことは、そんなに簡単なことではありません。ただ、今の選手たちは夢や想いを背負い、世界一になる可能性を十分に秘めていますから、その時には大きな声援を送りたいですね」

 侍ジャパンの活躍に、日本が一丸となって大声援を送る。そんな日が一日も早くやってくることを祈りたい。

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