「野球で恩返しをしたい」 W杯7連覇へ、女子代表・村松珠希を掻き立てる思い

2024.1.29

2024年は野球日本代表「侍ジャパン」女子代表にとって大事な1年となる。7月28日から8月3日の日程で「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップ・ファイナルステージ」がカナダで開催され、世界一を争う戦いが繰り広げられる。昨年9月に広島で開催された同グループBを1位通過した日本は、大会7連覇を目指しファイナルステージに挑む。

写真提供=Full-Count

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7大会連続の世界女王を目指す女子代表の“扇の要”に

 2024年は野球日本代表「侍ジャパン」女子代表にとって大事な1年となる。7月28日から8月3日の日程で「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップ・ファイナルステージ」がカナダで開催され、世界一を争う戦いが繰り広げられる。昨年9月に広島で開催された同グループBを1位通過した日本は、大会7連覇を目指しファイナルステージに挑む。

 前人未到の記録達成に向け、代表選考もより熾烈なものとなる。昨年代表に選出され、グループステージ突破に貢献した「はつかいちサンブレイズ」の村松珠希捕手は、虎視眈々と正捕手の座を狙っている。村松選手は全3試合でスタメン出場。初戦のプエルトリコ戦では貴重な同点打を放つなど攻守にわたり躍動した。チームがある広島での開催だったが「プレッシャーはあまり感じませんでした。注目されていることをプラスに捉えてプレーすることができました」と振り返る。

 闘争心を掻き立てられる出来事もあった。英菜々子捕手(埼玉西武ライオンズ・レディース)、泉由希菜捕手(淡路BRAVE OCEANS)との代表正捕手を巡るポジション争いだ。「とにかく負けたくないという気持ちが強かったです。自分のチームでは味わったことのない気持ちが芽生えたのを覚えています」と両選手から受けた刺激は、今も体を動かす原動力の1つとなっている。

投手との密なコミュニケーションを図る理由

 村松選手が捕手に転向したのは高校時代。捕手歴そのものは決して長くはない。ただ、捕手への思い入れは人一倍強いものがある。目標にしているのは福岡ソフトバンクの甲斐拓也捕手だ。

「育成選手から這い上がってこられたストーリーが素敵だなと思っています。私も有名だった選手ではないですし、プロ入り当初は捕手以外のポジションを守ることもありました。そういう悔しい思いや挫折を経てきたからこそ“今”があると思っているので、甲斐選手が積み重ねてこられた過程には惹かれるものがあります」

 捕手として投手との密なコミュニケーションを大事にする。投手の“素の部分”を知るため、野球以外にもプライベートな話もするように心掛けている。グループステージのプエルトリコ戦で初めてバッテリーを組んだ小野寺佳奈投手(読売ジャイアンツ)の性格も日々の会話を通して探り、7回2失点の好投をアシストした。

「代表は短期間でチームを作っていく必要があるので、投手のリードも含めて、捕手がチームの司令塔になっていかないといけないと思っています。なので、普段のチームの雰囲気や試合運びに関しては、サンブレイズの時よりも考えることが多いです」


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“野球ができている喜び”が見る人の心を惹きつける

 今年、目標にするのはファイナルステージの代表選出、そしてその先にあるワールドカップ7連覇。「求められていることを最大限アピールして、もう一度代表に入りたい。自分たちで掴んだ切符なので離したくはありません。ただ選ばれることはあくまでも通過点。大会で活躍することを目標にやりたいと思っています」と意気込む。

 世界一を決める大会だけに、当然注目度も増す。そこで結果を残すことは、女子野球全体の魅力向上につながっていくことも理解している。「年を追うごとに女子野球をプレーする選手が増えてきている実感があります。それだけに、ワールドカップは女子野球普及の面でもすごく大事な大会になってくると思います」と、女子代表がもたらす影響力にも目を向けている。

 女性ならではの“しなやかなプレー”が女子野球の魅力と言われることが多い。もちろんプレーからも目が離せないが、村松選手はそれ以上に、選手から滲み出る“野球への愛”が1番の魅力だと考えている。

「女子野球をプレーしている選手は、とにかく野球が大好きなんです。もちろん男子もそうだと思いますが、女子はその気持ちが全面に出ています。環境面や周囲の目を気にして、野球を続けることを断念する女の子も多いと思うんです。私の周りにも数多くいました。大人になっても続けている選手はそういう経験をしているので、プレーできる喜びが全身から滲み出てくるんだと思います」

地域の方々に応援してもらうことが女子野球発展の第1歩

 女子選手たちが積み上げてきた功績が、少しずつ女子野球を取り巻く環境を変えてきた。それを痛感しているからこそ、所属チームの活動にも積極的に取り組んでいる。所属する「はつかいちサンブレイズ」は、定期的に野球イベントを開催したり、選手とファン、地域の方々が交流できるカフェをグラウンドに併設したりするなど、野球を通して地域密着の活動を展開している。

「地域の皆さんに応援してもらい、その輪が広がっていくことが女子野球の裾野拡大の第1歩になると思っていますし、野球を通して、身近にいる人を笑顔にできるのは幸せなことです」と、支えてくれる企業、ファンや地域の方々への感謝を胸にプレーを続けている。

 野球というスポーツを心から愛し、困難にも怯むことなく前進してきた村松選手。「元気な姿を見せて、応援していただいている方々に喜んでもらいたい。野球で恩返ししたいという気持ちが原動力になっています」と力を込める。もう一度、女子代表のユニホームを着て世界の頂点へ。その景色を見るための挑戦が幕を開ける。

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