日本通運に復帰、ベテラン右腕・武田久が考える「投手にとって一番大事なこと」

2018.4.30

北海道日本ハムで15年間プレーし、リリーフとして通算534試合に登板、167セーブを挙げた武田久は今年、選手兼コーチとして日本通運野球部に戻ってきた。プロで実績を残した39歳の右腕は、古巣の後輩たちにどのようなことを伝え、どんな指導をしていきたいと思っているのだろうか。インタビューで胸の内を聞いた。

写真提供=Full-Count

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日本通運に復帰、ベテラン武田久が考える「投手にとって一番大事なこと」

 北海道日本ハムで15年間プレーし、リリーフとして通算534試合に登板、167セーブを挙げた武田久は今年、選手兼コーチとして日本通運野球部に戻ってきた。プロで実績を残した39歳の右腕は、古巣の後輩たちにどのようなことを伝え、どんな指導をしていきたいと思っているのだろうか。インタビューで胸の内を聞いた。

 投手にとって一番大事なのはストレートをしっかり投げることだと武田は言う。

 それができなければ、長いイニングは投げられない。まずはストライクゾーンにストレートを投げていくことを意識し、変化球は有利なカウントになった時に投げればいい――。そう話す右腕は選手たちに対して「出来ないことをして自分を苦しめるより、出来ることをやって行こう」と伝えている。

「球の速い遅いに関係なく、真っ直ぐをしっかり投げることが一番大事だと思います。しっかり両サイドに投げて、変化球は低めに投げる。難しいことはやらなくていいんです。余裕がある時にいろんな変化球を投げればいいと思います」

 また、武田は投球フォームに関してはなるべく指摘しないようにしているのだという。短所を直すよりも長所を伸ばすことが大事だと考えているからだ。今秋のドラフト候補に挙がっている日本通運の生田目翼投手に対しても、フォームを修正するのではなく、出来るだけいいところを伸ばしてあげたいとの思いがある。

「投げ方を見ていたら、直したいところはたくさんあります。でも、それを直して球が遅くなるんだったら、今の投げ方でもスピードを落とさないようにどうやっていくかを考えたほうがいいと思う。考え方でフォーム的にもよくなる部分もあるかもしれないですから」

武田が秘める思い「長い目で見たら自分で作ったものが強い」

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 そう考える根本には「長い目で見たら、自分で作ったものが強い」との思いもある。武田自身の野球人生もまさに試行錯誤の連続だった。たとえば、北海道日本ハムに入団する前に2年間在籍した日本通運では制球力を徹底的に磨き上げた。コースが甘いとすぐに痛打されたからだ。そこで変化球のコントロールを培ったことがプロでの飛躍につながったと実感している。

 人から言われたことばかりやっていたら、困難に直面した時に自分で乗り越えていくことは難しい。そんな思いを秘める武田はこんなエピソードを明かしてくれた。

「極端に言えば、バッターボックスのラインは、人が引いているのでずれることもあるんです。自分は高校生の時、それによって、セットポジションの時に5センチクロスを入れてみたりしていました。目に入ってくる情報に体は反応する。何球か投げて、ちょっとおかしいなと思ったら足の上げ方を変えてみるとか、マウンドでやらなきゃだめですね。だから、選手たちには感覚でやれるようになって欲しいです」

 指導者が一方的に押し付ける練習ばかりでは、トップレベルで活躍する選手を育てることはできない。指導者が答えを与えるのではなく、選手たちがあらゆるヒントの中から答えを導き出し、自身の課題を解決していく。その過程で、選手たちはプレーの幅を広げていくことができる。

 社会人野球にはプロを目指す選手たちも多いが、プロ入りがゴールではなく、その先で活躍することが大切だと武田は考えている。またプロには入れなくても、社会人で長らく活躍できる選手を育てたいとの思いもある。そんな選手たちを育てるために、新たな舞台で再出発したベテランは日々、後輩たちに厳しくも温かい視線を送っている。

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