U-23代表が「チャレンジ」精神で3大会ぶりW杯優勝 トップチームへ勢いを繋ぐ

2022.10.31

10月13日から23日まで台湾で開催された「第4回 WBSC U-23ワールドカップ」で、野球日本代表「侍ジャパン」U-23代表が見事、世界の頂点に立った。3大会ぶり2度目の優勝を果たしたのは、社会人野球の若手選手で構成されたアマチュアチーム。決勝では、若手のプロ選手らを集めて大会に臨んでいた韓国を完封する鮮やかな勝利を収め、栄冠を手に入れた。

写真提供=Getty Images

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石井章夫監督の下、社会人野球の若手23選手が集結

 10月13日から23日まで台湾で開催された「第4回 WBSC U-23ワールドカップ」で、野球日本代表「侍ジャパン」U-23代表が見事、世界の頂点に立った。3大会ぶり2度目の優勝を果たしたのは、社会人野球の若手選手で構成されたアマチュアチーム。決勝では、若手のプロ選手らを集めて大会に臨んでいた韓国を完封する鮮やかな勝利を収め、栄冠を手に入れた。

 2016年に開催された第1回大会は、プロアマ混成チームで初代王者となった日本。同じくプロアマ混成で臨んだ2018年の第2回大会は惜しくも2位に終わり、2021年の第3回大会はコロナ禍の影響もあり不参加だった。

 今回、U-23代表を率いたのは石井章夫監督だ。2017年から社会人代表監督を務める指揮官の下、社会人野球で注目の若手23選手が集結。「チャレンジ」をテーマに掲げ、体格やパワーで勝る海外チームを相手に、投打にわたり真っ向勝負を挑んだ。

 全試合が7イニング制で行われた今大会。ドイツを迎えたオープニングラウンド初戦で先発を任されたのは、注目の左腕・富田蓮投手(三菱自動車岡崎)だった。3回を無安打無失点に抑えると、後続が無失点リレーを繋ぎ、日本は初戦を6-0の完封勝利で飾った。

 続くベネズエラ戦にも5-2で勝利したが、第3戦のチャイニーズ・タイペイ戦は初回に2失点。2回に大西蓮内野手(JR東日本東北)のタイムリー二塁打で1点を返したが、強力な相手投手陣に3回以降は1安打に抑え込まれ、1−3で初黒星を喫した。

 だが、第4戦のコロンビア戦は先発の富田投手が3安打8奪三振1失点と好投すると、丸山壮史内野手(ENEOS)が初回に先制タイムリー、6回にダメ押しの犠牲フライで2打点を記録。前日の敗戦を吹き飛ばす勝利で、日本はスーパーラウンド進出を決めた。

オープニングラウンドで黒星喫すも、スーパーラウンドでは接戦に連勝

 南アフリカに9-0と快勝し、オープニングラウンド2位で進んだスーパーラウンドは、世界の強豪を相手に接戦が続いたが、日本の実力と可能性が光る好ゲームとなった。

 スーパーラウンド初戦の先発を任されたのは、オープニングラウンド初戦に続き、富田投手だった。対戦相手はトップチームが11月に強化試合を行うオーストラリア。強打を誇る相手打線に力強いボールで攻めかかり、6回4安打8奪三振1失点の好投を披露。6回に1点を失い、2−1と1点差に詰め寄られたが、最終回は権田琉成投手(TDK)が3者凡退で締めくくり、勝利をもたらした。

 この日(20日)は奇しくも日本で「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が行われた。ドラフト指名候補として名前が挙がっていた富田投手は、阪神から6位指名を受けた。海外滞在中に指名を受けること自体珍しいが、さらに指名を知ったのは試合終了後のドーピング検査中。帰国後の会見で「指名された瞬間は見ていないので、その瞬間は見たかったですね」と明かしているが、忘れられない1日となった。

 続く韓国戦では、先発の藤村哲之投手(東芝)が4回1安打無失点と好投すると、打線は4回に中川拓紀内野手(Honda鈴鹿)のタイムリーで1点を先制。5回にも主将の中村迅内野手(NTT東日本)が右翼へ放った二塁打で1点を追加した。最終7回に1点を許したが、なんとか逃げ切り、ここまで無敗だった韓国に土をつけた。

 スーパーラウンド最終戦は3勝1敗で並ぶメキシコとの対戦。勝ったチームが決勝進出という大一番で、日本は2回に齋田海斗外野手(TDK)が中堅へ貴重な先制タイムリー。3回には無死満塁から相羽寛太内野手(ヤマハ)の右適時打などで3点を追加し、試合の流れを引き寄せた。投げては、先発の片山楽生投手(NTT東日本)が5回を無安打無失点と快投。6回、7回と1点ずつを許したが、見事勝ちきって決勝進出を決めた。

プロの若手選手を集めた韓国を決勝で撃破

 3大会ぶりの優勝がかかる決勝で対戦したのは、韓国だった。韓国とは2日前に対戦したばかり。その時、接戦を制した日本は、決勝の舞台でも思いきりのいいプレーを随所で発揮した。先発マウンドに上がったのは、今大会4先発目となる富田投手。立ち上がりから打者6人を連続凡退とすると、3回から工藤稜太投手(信越硬式野球クラブ)にバトンタッチ。工藤投手も無安打で繋いだ。

 投手陣の快投リレーに打線も呼応。3回に2連続死球で1死一、二塁の好機を迎えると、ここで丸山内野手が豪快なスイングで値千金の3ラン本塁打を右翼へ運んだ。

 4回からは柳橋巧人投手(JR東海)、6回は藤村投手、7回は権田投手が無失点で繋ぎ、ゲームセット。第1回大会以来となる2度目の優勝を、完封リレーで飾った。

 大会期間中にドラフト指名を受けた富田投手は4試合(16回)に投げて2勝無敗、防御率0.44という圧巻の活躍で、最優秀投手とベストナイン(先発投手)をダブル受賞。プロ入りの道に花を添えた。MVPに輝いたのは、全9戦のうち7戦に登板し、5セーブを挙げた権田投手。指名打者として活躍した大西内野手は打率.429で首位打者となり、ベストナイン(指名打者)に選出され、中川内野手もベストナイン(三塁手)となった。

石井監督「ミスをしていいから挑んでくれ」

 帰国後の記者会見で、石井監督は「日本と言えば、堅実な野球。それでは世界では勝てない。選手たちには『ミスをしていいから挑んでくれ』と言い続けてきました」と話し、恐れずにチャレンジし続けた選手の姿勢が優勝をたぐり寄せたと明かした。

 さらには、今回のU-23代表チームには内川義久ヘッドコーチ、投打の技術を見る加藤徹コーチと甲元訓コーチのほかに、スポーツサイコロジストの布施努氏、ドクターの可知芳則氏、トレーナーの佐藤照己氏、クオリティコントロール担当の島孝明氏らスペシャリストが同行したことに言及。「彼らの貢献度は絶大。このシステムでチーム作りができたことが、今大会の一番の収穫です。侍ジャパンの全世代において、そういう視点で取り組む必要があると思います」と語っている。

 来年3月にはトップチームが、同じく3大会ぶりの優勝を目指して「ワールド・ベースボール・クラシック™」に臨む。挑戦する心を前面に押し出して栄冠を掴んだU-23代表の戦いぶりは、まずは11月に強化試合を控えているトップチームにとって何よりも力強いエールになったことだろう。


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