侍ジャパン戦士に必要な“能力”は…川口和久氏が訴える「技術力」と「対応力」

2019.4.8

野球日本代表「侍ジャパン」は3月9、10日に行われた「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019 日本vsメキシコ」で1勝1敗という結果を残した。若手中心のメンバーで戦力の底上げを図り、稲葉篤紀監督は収穫も課題も手にした様子。11月には世界一を目指して「WBSCプレミア12」に挑む。

写真提供=Full-Count

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2006、09年と世界一を獲った日本「『野球』は『ベースボール』を超えている」

 野球日本代表「侍ジャパン」は3月9、10日に行われた「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019 日本vsメキシコ」で1勝1敗という結果を残した。若手中心のメンバーで戦力の底上げを図り、稲葉篤紀監督は収穫も課題も手にした様子。11月には世界一を目指して「WBSCプレミア12」に挑む。

 2006、09年と世界一に輝いた日本。その後は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の世界ランキング1位に座る期間が長いものの、トップチームは頂点に上り詰めることができていない。今、あらためて必要なものは何か。広島東洋と読売の2球団で通算435試合登板、139勝135敗4セーブ、防御率3.38の成績を残し、現役引退後は読売の1軍投手総合コーチを4年間務めた川口和久氏は「技術力」「対応力」に長けた選手が必要だと分析する。

 投手コーチとして多くの外国人投手も指導してきた川口氏。そこで実感したのは、日本の「野球」のきめ細かさだという。投手がマウンドでやらなければいけないことは多いが、それをできない外国人投手は少なくないというのだ。

「外国人ピッチャーが日本に来れば、セットポジションがしっかり止まる、クイックモーションが1.2秒以内、サインを全て覚える……こういうことが必要になってきます。野球とベースボールはまったく違うもの。野球をやるには頭を動かさないといけない。ただ、それができない投手は多い。パワーに対抗するための技術が日本にはあるんです」

 パワーで勝る米国や中南米の強豪を「技術」を生かした「スモールベースボール」で打ち負かす。川口氏は「日本はそういう野球で(2006、09年と)2回世界一になった。ある意味、『野球』は『ベースボール』を超えている」と話す。

「世界のパワーに対抗するためには、日本の技術力が大事。日本の野球には技術があって、そういう小さな話を解説でするとファンも楽しんでくれるような文化があります」

イチローと大谷がメジャーで活躍する鍵となった「対応力」

 川口氏は、投球フォームでも日本の「技術」を感じさせてくれる左腕がいると明かす。国際大会でも活躍してきた和田毅投手(福岡ソフトバンク)だ。独特のスタイルで外国人打者から凡打の山を築いてきた。

「投球モーションに入ったら、お尻の横辺りにボールを置いて、ピュッと投げる。誰も使えない技術です。いわゆる『トップ』の位置を作ってない。お尻の横が『トップ』の位置なんですよ。ちょっと違うタイミング。動きのメカニズムを普通のピッチャーと変えることによって活躍している」

 犠打、盗塁、牽制、セットポジション、クイックモーション、そして、投球フォーム……。日本が勝っている部分を駆使して世界一を獲りに行くべきだと川口氏は力説する。

 一方で、高い技術も国際大会の舞台で生かすことができなければ意味がない。世界一まで上り詰めるためには、ペナントレースとは全く違う雰囲気の中、初めてプレーする球場で初めて対戦する相手を上回らなければいけない。つまり「対応力」は侍ジャパンの選手として必須だ。

「今のプロ野球は人材も豊富で、侍ジャパンの人材もすごく豊富だと思います。ただ、世界に出たときに、いかに相手に合わせることができるか。先日のメキシコ戦でも、稲葉監督は若手選手の対応能力を見ていたと思います」

 大舞台でパワーに勝る強豪国を破るため、「技術」を生かし、「対応」する。これこそが侍ジャパン戦士に求められる要素だと川口氏は言う。そして、引退したばかりのイチロー外野手(マリナーズ)、二刀流でメジャーリーグを沸かせる大谷翔平投手(エンゼルス)を例に挙げて、日本人選手の“良さ”を強調した。

「イチロー選手は、アメリカでは(オリックス時代のような)振り子打法をせずにあれだけのヒットを打ちました。大谷選手がエンゼルスであれだけ打てるのは、去年の開幕直前に打席でステップをしなくなったからです。日本人のそういった技術力の高さ、対応力には定評があります。大事なのは、侍ジャパンには頭を動かせる選手をどんどん入れて、国際大会の舞台、相手に対応できるかということです」

 まずは今年11月の「WBSCプレミア12」で世界一へ――。稲葉監督の選手選考の“基準“にも注目が集まる。

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