日の丸を背負って「優勝目指す」 異色の経歴・細山田が語る勝利へのこだわり

2017.9.25

今年10月に台湾で開催される「第28回 BFA アジア選手権」。その決戦に臨む侍ジャパン社会人代表メンバー24選手に異色の経歴を持つ捕手が選ばれた。トヨタ自動車でプレーする細山田武史だ。日の丸に対してどのような思いを秘めているのか。そして元プロ選手として社会人野球に対してどのように取り組んでいるのか。インタビューで胸の内を語ってもらった。

写真提供=Full-Count

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プロ野球を経てトヨタ自動車へ、細山田が侍ジャパン社会人代表メンバー入り

 今年10月に台湾で開催される「第28回 BFA アジア選手権」。その決戦に臨む侍ジャパン社会人代表メンバー24選手に異色の経歴を持つ捕手が選ばれた。トヨタ自動車でプレーする細山田武史だ。鹿児島城西高校から早稲田大学に進み、2008年のドラフトで4位指名を受けて横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)に入団。その後、福岡ソフトバンクに入団し、2015年11月にトヨタ自動車硬式野球部への加入が発表された。

 大学時代は斎藤佑樹投手(北海道日本ハム)とバッテリーを組んで早稲田大学の黄金期を支え、プロ野球では通算203試合に出場。一方、プロ人生では戦力外通告も経験し、福岡ソフトバンクでは育成契約から支配下登録へと這い上がった経歴も持つ。そして2016年からはトヨタ自動車硬式野球部の一員としてプレー。福岡ソフトバンクを戦力外となった際、トヨタ自動車でプレーする早稲田大学時代の先輩・佐竹功年投手から「トヨタを優勝させるために来てくれ」と声をかけられたことがきっかけだったという。それが入部1年目での都市対抗野球大会初優勝という結果につながった。

 プロとアマで数々の大舞台を潜り抜けてきた31歳はトヨタ自動車での活躍が認められ、今回、侍ジャパン社会人代表メンバー入りを果たした。「第28回 BFA アジア選手権」は韓国、チャイニーズ・タイペイ、中国、パキスタン、香港、フィリピン、スリランカなどの出場が予定されており、前回3位となった日本は今大会で王座奪還を目指している。その一員に選ばれた細山田は日の丸に対してどのような思いを秘めているのか。そして元プロ選手として社会人野球に対してどのように取り組んでいるのか。インタビューで胸の内を語ってもらった。

――プロ野球と社会人野球の違いはどんなところだと感じていますか?

「プロは自己の成績が給料につながりますから、個人がどれだけ成績が残せるか。生活がかかっているので、基本的には『自分のため』になります。社会人野球は会社があって、僕たちがいるというところが違いますね。プロもファンのためにというところはありますが、基本的には自己が一番です。今は『会社の方たちのために頑張らなきゃ』という思いが強いです。様々な大会がありますが、都市対抗野球と日本選手権という大きな大会を勝たないとなかなか喜んでもらえないですね」

――トヨタ自動車硬式野球部の環境、チームの現状をどう感じていますか?

「プロとは違う世界で、すごくいい勉強をさせてもらっています。周りの人たちもちゃんとしている。今まで経験してきた体育会の勢いはないですが、賢い人が多くて『すごいな』と思っています。昨年の都市対抗野球大会は優勝するとは思っていなかったので、本当にラッキーでした。あとは日本選手権で優勝したいですね。今年の都市対抗野球大会は佐竹さんが怪我をしていたので、その時点でだめだと思っていました。エースが怪我をしていて優勝できるんだったら、どのチームも優勝していると思います。いつまでも佐竹さんに頼っていてはだめだと思っています。そこを変えていかなければ、強いチームにはならないと思います」

侍ジャパン社会人代表入りに「よし」ではなく「ありがとうございます」

――この2年間で印象に残っているプレーは何ですか?

「昨年の都市対抗野球大会準々決勝のNTT東日本戦で、延長10回にサヨナラヒットを打ったのは印象にありますね。日本一の経験は大学でもありますが、大学時代は生活を共にした仲間たちと戦って、すごく濃い4年間だったので、正直、思い入れは大学のほうがあります。都市対抗野球大会はまだ1年目だったので、感動という気持ちは少なかったですね。ただ、周りの人たちがすごく喜んでくれたので、それは嬉しかったです。声をかけてくれた佐竹さんをはじめとする先輩方、ずっとトヨタを引っ張ってきた、野球部を辞めていった先輩方、社員の方々。みんなが喜んでくれて。それは大学野球にはないところです」

 そう語る細山田は入部2年目の今年、侍ジャパン社会人代表メンバーとして日の丸を背負うことになった。早稲田大学時代には3年の時に日米大学野球選手権大会の日本代表メンバーに選出。4年では第4回世界大学野球選手権大会の日本代表にも選ばれ、両大会とも斎藤とバッテリーを組んだ。当時は世界を相手に海外のバッターとの力の差を痛感したという。プロの世界を経て再び日の丸を背負うことに対してどのような思いを秘めているのか。

――日の丸への思いは?

「大学の時の日本代表の経験は、海外の人と触れ合う機会もあり、すごくいい経験になりましたし、よく覚えています。世界大学野球選手権では、大会中に父親が亡くなり、チームメートもみんな気を使ってくれて。銀メダルという結果でしたけど、天国の父親にいい報告ができました」

――侍ジャパン社会人代表のメンバーに選ばれた時の心境は?

「選ばれたから『よし』とかいう気持ちではなく、『ありがとうございます』という感じでした。実力を認めてもらえたというのはすごくありがたいですね。なかなかジャパンのユニフォームを着ることはできません。プロでは絶対無理ですから(笑)。大学でも着させてもらったし、社会人でも着られたらと思っていました」

――「第28回 BFA アジア選手権」に向けての目標は?

「金メダルを取りたいです。野球をやっている以上、目指せるところにいるんだったら、そこを目指すのは当たり前だと思います。都市対抗野球大会で優勝したいと思うのと一緒で、日本代表でも金メダルを取りたいですね。普通に野球をやっていたら当たり前のことだと思いますし、そうじゃない人はいないと思います。せっかくやるんだったら、そこを目指す。声をかけていただいたんですから、優勝を目指します」

【了】

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