女子代表・三浦伊織が見据えるV7の先の未来 「世界の女子野球を日本が引っ張る」

2023.4.24

日本が誇る世界最強チームが始動する。野球日本代表「侍ジャパン」トップチームが2009年以来3度目のWORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)制覇を成し遂げた今年、女子代表も世界へ挑む。

写真提供=Getty Images

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2012年から30連勝中、7大会連続の世界女王を目指す侍ジャパン女子代表

 日本が誇る世界最強チームが始動する。野球日本代表「侍ジャパン」トップチームが2009年以来3度目のWORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)制覇を成し遂げた今年、女子代表も世界へ挑む。

「WBSC女子野球ワールドカップ(以下W杯)」では2008年から前人未踏の6連覇を達成し(前身大会を含む)、2012年大会の第2戦で米国に敗れて以降、負けなしの30連勝を更新中だ。そんな常勝軍の一員として第一線を駆け抜けてきた阪神タイガースWomenの三浦伊織外野手は「世界の女子野球を日本が引っ張る」と奮い立つ。6度目の代表選出の先にどんな景色を見ているのか。

 幼少期から少年野球チームで男の子たちと白球を追った三浦選手は、高校では椙山女学園(愛知県)のテニス部に所属。主将を務めダブルス全国3位入賞を果たすなど輝かしい成績を残した。だが、卒業後に再び本格的に野球の道へ。2009年冬に女子プロ野球の門を叩き、20歳になった2012年、初めて日の丸を背負った。

「高校はテニス部だったので、女子野球と言えば女子プロ野球の世界しか知りませんでした。代表チームで初めて女子プロ野球リーグ以外の先輩方にお会いして、日の丸に対する想いの強さに驚きましたね。『日本のために、女子野球のために』と思ってプレーしていることを知って、すごいなと。何度でもここへ来たいと、憧れを抱くようになりました」。以来、12年に渡って代表に名を連ねている。それでもなお、代表入りは何にも代え難い目標だ。

 だが、初めて代表入りした当時は、日本では「戦績を見るほど女子野球にのめりこむ人は稀だった」時代。連覇の偉業が与える影響について「正直その感覚はなかった」と振り返る。「3連覇、4連覇をしても、野球をやっている女の子たちはその事実を知らないんじゃないかなと思いながらプレーをしていましたね。女子プロ野球選手として接した子どもたちから、そういった意味での憧れの眼差しはあまり感じたことがないので」。女子選手たちが積み上げてきた功績が認知されるまで長い時間を要した。それでも代表チームには、代々貫いてきた想いがある。

W杯連覇で広がった女子野球への理解と女子球児を取り巻く環境の変化

「女子野球を当たり前の文化にする」

 自身や先代たちが紡いできた連覇が、少しずつ女子球児を取り巻く環境を変えてきていると実感する。「女子野球を受け入れてくれる人が増えてきたんじゃないかなと思います。今は少年野球に女の子がいても不思議がられることはないじゃないですか。私の時は女子が珍しい時代でした。なんだかやっぱり違うのかなと思った時期もあります」。葛藤した少女期を振り返り、「当たり前の文化になれば、女の子が余計なことを考えずにプレーに集中できて、野球を楽しいと思えると思う」と期待を寄せる。

 さらには、異国の女子球児へも想いを馳せた。「日本だけ良くてもダメなんですよね。(世界の)女子野球人口を増やさないと、ずっと続かないですしね。どの国もレベルが上がってくることで素晴らしいことになるんじゃないかなと思います」。

 2004年7月にカナダで行われた第1回W杯は、わずか5チームで世界女王の座を争った。その後、2年に1度行われてきたが、世界的な女子野球人口増加に伴い、2022年にフォーマットを変更。それにより「BFA女子野球アジアカップ」(以下アジア杯)の上位3チームが、4年に1度へ会期を変更したW杯への出場権を得られることになった。5月21日から香港で行われるアジア杯には13チームが出場予定。女子野球は今、日本を筆頭に世界規模で前進している。

世界の先頭に立ち続ける日本の役目「世界の女子野球を引っ張る」

 世界の女子野球は競技レベルにおいて格段に進歩している。三浦選手は真剣な表情で「こちらも以前のような余裕はないですしね。以前はコールドで勝てていたチームに、そうはさせてもらえなくなりました」と語る。2018年W杯のキューバ戦では5回まで2安打に抑えられ、0-1と苦戦を強いられた。6回1死三塁の場面で、「3番・指名打者」の三浦選手が放った同点二塁打がなければ6連覇は果たせなかったかもしれない。「簡単に勝たせてもらえないようになってきていますよね」と他国の追従を警戒する。

「世界の女子野球を日本が引っ張るという形。台湾やアメリカが日本へライバル意識を持ってくれていることで、女子野球のレベルが上がってきているんじゃないかなと感じます。やっぱり連覇するということは大事なこと。勝つことに意義があるんじゃないかな、と年々意識が強くなっています」。自国に限らず世界に対して、日本代表の連覇にしか果たせない役割を背負い、闘っている。

 しかし、その表情は清々しい。「1人じゃないんで、野球は。みんなでやるスポーツなので。『女子野球を当たり前の文化に』。そういう気持ちを持っている人が集まっているから、日本は連覇してこられたのかなと思います」。

 男子に続き、女子代表も世界の頂点へ。そのためにはまず、4年ぶりの国際大会となるアジア杯での優勝を目指す。9月13日からは広島県三次市で「第9回 WBSC 女子野球ワールドカップ グループステージ」が開催され、日本はグループBでベネズエラ、キューバ、プエルトリコ、フランス、他1チームと対戦。上位2チームとなり、2024年にカナダで開催されるファイナルステージへの出場権を掴む。9年ぶりの日本開催を追い風に、世界の女子野球発展のためにも女王の座を守り抜く覚悟だ。


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