WBCで目指す王座奪還と野球文化の継承 栗山英樹監督の言葉に込められた熱い想い

2023.1.9

2023年が幕を開け、いよいよ5年ぶりの「ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」開催まで2か月と迫った。3大会ぶりの優勝が期待される野球日本代表「侍ジャパン」トップチームを率いるのは栗山英樹監督。悲願の世界一にかける指揮官の並々ならぬ思いは、これまで発信してきた数々の言葉からも窺い知れる。

写真提供=Full-Count

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3月のWBC開幕まで、あと2か月「勝つことしか考えていない」

 2023年が幕を開け、いよいよ5年ぶりの「ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)」開催まで2か月と迫った。3大会ぶりの優勝が期待される野球日本代表「侍ジャパン」トップチームを率いるのは栗山英樹監督。悲願の世界一にかける指揮官の並々ならぬ思いは、これまで発信してきた数々の言葉からも窺い知れる。

 北海道日本ハムを10シーズン率い、日本一にも輝いた栗山監督が侍ジャパントップチームの監督に就任したのは2021年11月30日のこと。その夏、東京で悲願の金メダルを達成した稲葉篤紀前監督からバトンを引き継いだ。就任会見でも明かした通り、最大の使命は2009年の第2回大会以来となる14年ぶりのWBC王座奪還。そのためには「勝つことしか考えていない」と勝利に貪欲な姿勢を見せる。

王座奪還とともに目指す、野球文化の継承と発展

 そもそも、就任発表からWBC本番までの準備期間はおよそ1年3か月と短かった。与えられた時間の中で“勝てる”チームを練り上げるためにも、侍ジャパンとして可能な限り多くの実戦を積みたい。そこで早速、2022年3月に台湾との強化試合が予定されたが、新型コロナウイルスの感染が再拡大したため中止を余儀なくされた。のちに、侍ジャパン公式YouTubeチャンネルで招集予定だった“幻の代表メンバー”を発表。NPBの若手選手に加えて大学生も含まれていたが、「この中から、次のプロ野球を背負ってくれる選手が出てくれないかなと(思った)」と話し、“今”だけではなく“未来”を意識していることを印象づけた。

 野球の未来、次世代を担う子どもたちに寄せる想いは深い。就任会見時には侍ジャパンの役目について「野球をどう発展させ、素晴らしさをどう理解してもらうか」にもあると言及。WBC本番に向けて「勝つために必要な選手を呼ぶ」とした上で、「子どもたちに野球の楽しさを知ってもらうために、全員が協力して集まってくれると思う」と話し、選手一人ひとりにも野球文化を繋ぐ意識を共有するとした。

3月の強化試合は中止も、国内外で続けた「魂を届ける作業」

 台湾との強化試合は実現しなかったが、その後、栗山監督は国内ではNPBからアマチュアまで幅広く視察・激励に訪れ、8月には米国に渡ってダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)、大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)ら日本人選手と直接対話する「魂を届ける作業」を実践。メンバー選考の肝について「第一条件は魂。ぶっ壊れてもいいから日本の野球のために、次の世代のために野球をやりますよというのが一番」と力を込めていた。

 11月の「侍ジャパンシリーズ2022」では読売、北海道日本ハム、オーストラリア代表と対戦。WBC本番を見据える中でも28選手のうち16選手が初選出というフレッシュな顔ぶれだったが、「3月勝ち切るためにやっておかなければいけないこと。まずこの4試合、しっかり戦っていきます」と勝利へのこだわりを露わにし、その言葉通り、4戦全勝で初陣を飾った。

 栗山監督の勝利への執念は、一緒に戦うコーチ陣にも伝わっている。11月の強化試合を終え、吉村禎章打撃コーチは「(WBC)本戦ではない中で勝ちにこだわっていた。色々なことを想定しながら進めている印象が強かったです」とうなずき、清水雅治外野守備走塁コーチは「勝つことを最優先にしないといけない大会ということを凄く意識されている。強化試合では自分のやりたい野球、それが誰を使うとできるのかを試されていたと思う」と必勝の決意を噛みしめた。

大谷、ダルビッシュ、鈴木らメジャー選手も参戦を表明

 印象的な言葉、心に響く言葉を発信することでも知られる指揮官だが、WBC本番が近づくにつれて「魂を届ける作業」の効果を実感することになった。まず、大谷投手がWBC出場の意思を示すと、ダルビッシュ投手、鈴木誠也外野手(シカゴ・カブス)も続いて参戦を表明。栗山監督は「やはり大きなこと。世界トップレベルの選手たちなので、メジャーの中でも。ただ出てくれた以上、彼らの『日本野球勝ちますよ』っていうメッセージだと思うので、なんかすごい責任を感じるし、そういうのはありますね」と想いを受け止めている。

 注目のWBC戦士28人は1月中にも発表される見込み。国内組、メジャー組と才能溢れる選手は多く、選手選考が困難極めることは必至だ。「ジャパンの監督は非情なり、だから」と覚悟を持って選ぶメンバーと臨むWBC。栗山監督、そして侍ジャパンが目指す世界一奪還への戦いは、すでに始まっている。

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