U-12代表・仁志敏久監督が感じる手応えと課題 「指導者に指導する楽しみを知ってほしい」
野球日本代表「侍ジャパン」には、トップチーム、社会人、U-23、大学、U-18、U-15、U-12、女子と8つのカテゴリーがある。2013年からプロとアマチュアを「結束」する象徴として全カテゴリーが同じデザインのユニホームを着用。各カテゴリーで「世界最強」を目指して戦っている。
写真提供=Getty Images
仁志監督が選手選考で重視するポイントとは…「体を見ています」
野球日本代表「侍ジャパン」には、トップチーム、社会人、U-23、大学、U-18、U-15、U-12、女子と8つのカテゴリーがある。2013年からプロとアマチュアを「結束」する象徴として全カテゴリーが同じデザインのユニホームを着用。各カテゴリーで「世界最強」を目指して戦っている。
2014年から6年にわたり、U-12世代の監督を務めるのが、読売、横浜(現横浜DeNA)で活躍した仁志敏久氏だ。現役時代は二塁手としてゴールデングラブ賞に4度輝いた守備の名手で、打席ではシュアな打撃でチームに貢献。米独立リーグを経て、指導者に転身した仁志監督が考える「U-12世代に大切にしてほしいこと」、そして「侍ジャパンとして取り組むアンダー世代の育成」について語ってもらった。2週にわたる前後編でお届けする。今回は後編を。
U-12代表は今年7月、台湾で「第11回 BFA U12アジア選手権」を戦う予定だったが、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、暫定的に11月の開催に延期された。これに伴い、代表選手を公募する「侍ジャパンU-12代表 全日本合同トライアウト~デジタルチャレンジ~」も一時中止となっている。2014年の「第8回 BFA 12Uアジア選手権」から始まった「デジタルチャレンジ」には、多くの子どもたちに代表になるチャンスを与えたいという願いが込められている。
「侍ジャパンとしてアンダー世代の強化を始めた2014年に掲げたコンセプトの1つが、野球の普及という意味も含め、幅広く代表選手を目指せる形を作ろうというものでした。特に小学生の場合は、地方に住んでいるとセレクション会場まで、なかなか出てこられないこともあります。デジタルチャレンジであれば、誰でも応募できる利点がありますからね」
仁志監督によれば、今回は送られてきた動画を監督やコーチなどスタッフがそれぞれ目を通し、選んだ候補を会議に持ち寄って、そこで厳選された子どもたちを対象に実技のトライアウトを行う予定だった。2014年は実技のトライアウトを行わずに動画のみの選考で「アジア選手権」準優勝の成績を残したが、やはり実際にプレーする姿を見ることが大切だという。
「実際に子どもの姿を見ると、プレーだけではなく、立ち居振る舞いだったり、表情だったりを見ることもできます。2016年は夏休みに開催された全国大会を見に行き、『この子をキャプテンにしよう』と心の中で決めてしまったくらいです」
それでは実技を見る際に、仁志監督が重要視するポイントはどこにあるのだろうか。
「打っても投げても体がよれない子ですね。U-12世代だと早熟傾向の子もいますが、やっぱり体幹が強い子はどんな運動をしても上手です。投げた後にヨロヨロしたり、バットを振った後にフラフラしたりしない。だから、実技テストの時に僕はずっとバッティングピッチャーをするんですが、ほとんど打球は見ません。体を見ています」
2014年の6年生が高校3年生に「プロ入りする子が出たらうれしいですね」
代表監督としてU-12代表の強化に携わり7年目を迎える今年、仁志監督はそれぞれ手応えと課題を感じているという。
「U-12代表の存在は広く認知されてきたと思います。代表入りを目指す子どもたちが数多くいるという点では、当初の目的の1つは果たせているでしょう。ただ、本当の意味での普及や底上げということを考えた場合、もっと定期的に能力の高い子どもたちを集めて合宿をしたり、年間を通じて各地を回り、キャラバン活動を行ったりすることが望ましいと思います。これは今後の課題ですね。
さらに普及に関して言えば、子どもたちに野球に興味を持たせるだけではダメ。指導者に正しい指導方法や、指導する楽しさを知ってもらわないといけないと思います。指導の大変さばかり取り上げられることが多いですが、指導する楽しさも必ず出てくるもの。野球ができる場所のリサーチも含め、侍ジャパンやプロ野球が先導してサポートできたらいいと思います」
仁志監督自身も、指導する楽しみを感じている1人だ。就任から6年間でU-12代表として指導した選手は99人に及ぶ。教え子たちの中には年賀状や手紙を送ってくれる子や、大会の応援や講演会などに駆けつけてくれる子もおり、「そういうことが僕らとしては楽しみですね」と話す。そしてもう1つ、今年は新たな楽しみが加わることになる。
「2014年に6年生だった子たちが、今年高校3年生なんです。その中には、中止になった選抜高校野球に出場予定だった子もいたり、今年の秋にドラフトされそうな子もいるんですよ。長くやっていると、こういう楽しみもあるので、子どもたちの名前は必ず全員フルネームで覚えるようにしています。U-12代表を経てプロ入りする子が出たらうれしいですね」
侍ジャパンとして野球のさらなる発展に貢献できるよう、これからも仁志監督の挑戦は続く。
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