強化試合に挑む侍ジャパン 小久保監督の言葉から読み解くポイントは?(投手編)

2016.11.7

11月10日から13日まで強化試合を行う野球日本代表「侍ジャパン」。東京ドームでメキシコ代表(10、11日)、オランダ代表(12、13日)と計4試合を戦う。強打者が揃う相手に挑む侍ジャパン投手陣。その中で、チェックポイントはどこになるのか。10月18日に行われた日本代表メンバー発表会見での小久保監督の言葉から、注目点が見えてくる。

写真提供=Getty Images

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10日からメキシコ、オランダと計4試合、指揮官は初招集の千賀に大きな期待

 11月10日から13日まで強化試合を行う野球日本代表「侍ジャパン」。東京ドームでメキシコ代表(10、11日)、オランダ代表(12、13日)と計4試合を戦う。メキシコ代表は、前田健太投手が所属するロサンゼルス・ドジャースの主砲エイドリアン・ゴンザレス内野手(帯同のみ)ら計4人のメジャーリーガーを招集。そして、オランダ代表はダルビッシュ有投手の同僚で、テキサス・レンジャーズの有望株のジュリクソン・プロファー内野手がメンバーに入った。

 両代表とも、伝統的にパワーのある選手が揃い、リーチの長さも大きな特徴となるだけに、侍ジャパンの投手陣にとって貴重な経験となることは間違いないだろう。特に、メジャーリーグで活躍するジュリクソン・プロファー内野手を押さえ込むことができれば、日本の「投手力」の高さを再確認することができそうだ。

 今回の強化試合で、小久保裕紀監督は野手登録となる大谷翔平(北海道日本ハム)を除くと14人の投手を招集。そのうち、千賀滉大(福岡ソフトバンク)、田口麗斗(読売)、宮西尚生(北海道日本ハム)、石川歩(千葉ロッテ)、岡田俊哉(中日)、石田健大投手(横浜DeNA)の6投手が初招集(中﨑翔太投手=広島東洋は辞退)というフレッシュな顔ぶれとなった。

 強打者が揃う相手に挑む侍ジャパン投手陣。その中で、チェックポイントはどこになるのか。10月18日に行われた日本代表メンバー発表会見での小久保監督の言葉から、注目点が見えてくる。

 小久保監督は、日本の一番の強みについて「バッテリーを中心とした投手力」と言い切る。そして、今回の強化試合では、国際大会を意識して「ある程度、その辺の球数というのをしっかり頭に入れながら、投手交代というか起用をしたいなと考えています」としている。初招集の中に、このテーマを埋めてくれそうな投手がいる。

 まずは千賀だ。昨季、シーズン後半から福岡ソフトバンクのブルペンを支え、今季は先発ローテーションに入って25試合に登板し、12勝3敗、防御率2.61、181奪三振の好成績をマーク。勝率.800はリーグトップだった。指揮官は、育成契約から日本屈指の右腕へと成長した23歳に期待を寄せる。

「世界野球WBSCプレミア12」は韓国に逆転負け、「あの悔しさを忘れる日はない」

「昨年のクライマックス(シリーズ)から日本シリーズの中継ぎでの登板を見た時に、あのフォークは国際大会で十分に通用すると感じていました。今年は先発に回ったということもあって、(国際大会では)第1先発、第2先発を用意しないといけないと思うのですが、そういう中で(千賀は)先発に回って球数も投げられるようになった。ただ、一番(評価している)はあのフォークボールです。空振りが取れるフォークがあるというところです」

 日本人投手の落ちるボールが外国人打者相手に大きな武器となることは、これまでの国際大会、そしてメジャーリーガーの活躍で証明されている。また、先発だけでなく、中継ぎでも使えることは大きな魅力。ここで結果を残せば日本代表としても心強い。

 また、北海道日本ハムで昨季39セーブを記録した増井は、今季序盤に不調で2軍落ちを経験したが、先発投手として復活。こちらもフォークが大きな武器で、先発と中継ぎをこなせる貴重な存在となる。指揮官も「(北海道日本ハムの)栗山(英樹)監督が途中、先発に起用してからの評価ですね。抑えで全球マックスで投げていた姿から、先発に回った時のピッチングスタイルというのを見て、権藤(博)ピッチングコーチもそうなんですけど、すぐに名前が挙がってきました。元々、抑えもしていたピッチャーだということで、中継ぎでも使えるという考えもあります」と高く評価する。

 一方で、先発投手では藤浪晋太郎(阪神)が今季は7勝11敗、防御率3.25と不振に終わりながら、メンバー入りした。ただ、これは期待値が高いからこそ。「(シーズン)最後の2試合の登板を見て決めました。あの姿であれば十分に通用するんじゃないかという部分も含めて。あとはピッチングコーチの強い推薦があったので決めました」。大谷と同世代の剛腕は、本調子であれば実力は確かなだけに、小久保監督は大きな戦力として計算に入れている。

 では、中継ぎが本職の投手たちはどうか。昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」では、韓国相手に3点差をひっくり返され、準決勝で敗れた侍ジャパン。あらためて継投の難しさを感じさせる試合となったが、指揮官は「自分の中で反省した部分を次に活かそうという取り組み」をしていることを明かした上で「1つ言えるのは、あの悔しさは忘れる日がないということですね」と強い口調で話した。

大谷への評価はさらに高まる、「ここ一番で頼れる投手になってきた」

 今回は、左腕・宮西を初招集。さらに、3月の強化試合で初招集した秋吉亮(東京ヤクルト)も引き続き選出した。左腕の岡田俊哉も追加招集し、ブルペンを強化した。そんな中、「まず抑えは今の時点では1人と決めていません。4試合を通して、各球団の代表するクローザーたちなので、1人には決めてません」と“複数守護神”プランを明かしていたものの、候補の1人であった中﨑が負傷で事態となったため、山崎康晃(横浜DeNA)にかかる期待が大きくなりそうだ。

 また、大谷は野手での出場となるため、マウンドに上がることはないが、小久保監督の評価はさらに上がっている。抑えとしてマウンドに上がり、日本最速を更新する165キロをマークしたクライマックスシリーズ第5戦の投球について「改めてすごいボールを投げたなと。1イニングだけで行った時にはあれだけのボールが投げられるんだなと感じました」と脱帽気味に話している。

 昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」で、大谷が初戦と準決勝でいずれも韓国相手に快投したことも振り返って、「一番大切なゲームのところで韓国をあれだけの力でねじ伏せたところぐらいから、本人も『ここ一番負けられない試合であまり強くなかった』というコメントをよくしていますけど、ここ一番で頼れる投手になってきたということを感じています」と印象を明かした。大谷とともに、「世界野球WBSCプレミア12」でエースとしてチームを牽引した前田健太投手がロサンゼルス・ドジャースに移籍し、広島東洋時代のように頻繁に招集できる状況ではなくなっただけに、新たな選手の台頭は必要不可欠だ。

 小久保監督は「新しい選手たち、初めて侍ジャパンのユニホームに袖を通す選手もいるので、その選手たちの見極めや、パフォーマンスをしっかり固められるような集まりにしたいと考えています。当然、今後を見据えて、勝ちに行く試合運びをやっていく大事な集まり、試合にしたいと思っています」と今回の4試合の狙いについて語った。投手をいかに効果的に起用していけるかは大きな鍵となる。世界に誇る投手力を活かして、勝利という確かな結果を残したいところだ。

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