日本と米国、育成年代の指導法の違いをクロマティ氏が語る「酷使は絶対避けます」

2019.6.24

投手の投球回数制限の導入が検討されるなど、変化を見せている育成年代の指導法。侍ジャパンもU-12代表、U-15代表の選手たちが世界大会で奮闘しているが、若いうちにどのような指導を受けるかで、選手の未来も変わってくる。かつて読売史上最強の助っ人と呼ばれたウォーレン・クロマティ氏は米国と日本の育成年代の野球を比較。熱く持論を展開した。

写真提供=Full-Count

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元読売の助っ人が語る「私は子供の投手の肩を大事にするという意見に大賛成です」

 投手の投球回数制限の導入が検討されるなど、変化を見せている育成年代の指導法。侍ジャパンもU-12代表、U-15代表の選手たちが世界大会で奮闘しているが、若いうちにどのような指導を受けるかで、選手の未来も変わってくる。かつて読売史上最強の助っ人と呼ばれたウォーレン・クロマティ氏は米国と日本の育成年代の野球を比較。熱く持論を展開した。

「日本の野球界でも最近になって、子供たちの投げ過ぎという部分を問題にするようになってきました。私は子供の投手の肩を大事にするという意見に大賛成です。高校野球も変化しようとしている。そこにも拍手したい思いです」

 現役時代に絶大な人気を誇ったクロマティ氏はこう語る。メジャーリーグのモントリオール・エクスポズ(現在のワシントン・ナショナルズ)から読売に加入したクロマティ氏は、1984年から90年まで7シーズンに渡り日本で活躍した。1989年にはMVPに輝き、通算打率も.321を残すなど輝かしい成績をマーク。ヒットやホームランを放った後の代名詞「バンザイパフォーマンス」も有名だった。

 現在は米国のフロリダ州や日本で野球教室を行うなど、野球少年にベースボールの魅力を伝え、技術指導も行っている。アメリカと日本における指導法の違いについて、持論を明かしてくれた。

「アメリカはまずチャイルド・ファースト。育成年代で酷使は絶対に避けます。この部分が指導法として優れている部分ではないかと思います。投手の肩を保護することは最優先です。例えば、登板した翌日と翌々日はオフにします。球数が多少かさむことはあっても、連投は絶対にさせない。それが原則ですね。投球過多は将来的な成長の余地を奪ってしまうリスクがあります。肩は過剰な負荷をかけ過ぎると、成長しません。アメリカでは父兄の方が登板過多を避けるように、チームに意見するケースも多いです」

 米国では子供たちの将来性を最重要視し、特に育成年代では投手の肩を保護することを徹底。野球少年の父兄も声高に主張することもあるという。

公式戦の日程面の配慮も願う「子供たちの未来を奪うようなことはあってはいけません」

「どこまで保護しても怪我することがある。若年層で変化球を多投することが肘の怪我に繋がるケースが多いです。特にカーブやスライダーを早い段階で覚えてしまうと、肘への負担が増え、怪我のリスクが高まります。年代や成長に応じて、投げ始める時期を指導することもあります。そこまで保護しても、大谷さん(ロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平投手)のようにトミー・ジョン手術(肘靱帯再建手術)を受ける子供も出てきます。プロテクトしてもし過ぎるということはないのです」

 クロマティ氏は切実な表情でこう説明した。その一方で、投手の保護という観点から日本の高校野球の長年の伝統について危惧しているという。

「去年はある投手が(甲子園で)800球も投げたと聞きました。6試合で! しかも、ほぼ連投ですよね? 私もジャイアンツでプレーしてきました。日本ではプロ野球以外にも、高校野球も見てきました。外国人ですが、日本の野球というものをよく知っている。日本の野球界では伝統が重んじられてきました。高校野球はまさにそうです。100年以上の伝統があるのです。この100年間、試合後に負けた選手たちは涙し、グラウンドの土を持ち帰ってきました。伝統は大事です。しかし、この100年間は、先発投手が短期決戦でチームの勝利のために連投に耐えてきた歴史と言っても過言ではないかもしれません」

 昨夏の甲子園では、決勝の舞台まで獅子奮迅の投球を続けた金足農高(秋田)の吉田輝星投手(現・北海道日本ハム)の力投が話題になった。

「公式戦は連戦にならないように日程面にも配慮が必要です。子供たちが酷使されてはいけません。選手の中には将来、日本のプロ野球に行きたいという選手、メジャーで活躍したいと願う選手もいるでしょう。子供たちの未来を奪うようなことはあってはいけませんから」

 日本とアメリカの野球に温かい視線を送り続けるクロマティ氏。アメリカでも増え続ける投手の肘の怪我を予防するため、日本の育成に心からの提言をしていた。

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