憧れの先輩を追って果たした日本代表入り 白石美優が未来に繋げたい女子野球の魅力

2023.9.11

2008年と2014年に続いて3度目の自国開催となる「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップグループステージB」が13日、広島県三次市で開幕する。6連覇と優勝記録更新中である野球日本代表「侍ジャパン」女子代表。今年初選出された大阪体育大・白石美優外野手は、チーム唯一の現役大学生だ。トップチーム入りを果たした努力の裏には、連覇を成し遂げてきた先輩の存在があった。

写真提供=Full-Count

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中学1年生で出会った“生涯の目標”「今もずっと意識しています」

 2008年と2014年に続いて3度目の自国開催となる「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップグループステージB」が13日、広島県三次市で開幕する。6連覇と優勝記録更新中である野球日本代表「侍ジャパン」女子代表。今年初選出された大阪体育大・白石美優外野手は、チーム唯一の現役大学生だ。トップチーム入りを果たした努力の裏には、連覇を成し遂げてきた先輩の存在があった。

 11歳になる年に日本女子プロ野球機構が発足し、兄の影響で野球をしていた白石選手はすっかり心を奪われた。中学生になる2012年4月には、現役女子プロ野球選手から直接指導が受けられるユースチーム「ピュアエンジェル」が創設され、1期生として入団。そこで生涯の目標となる選手と出会う。同年に初めて日本代表入りし、今大会に至るまで途切れることなく代表に名を連ねている三浦伊織外野手(阪神タイガースWomen)だ。

「私にとって日本代表、侍ジャパンと言えば、男子選手じゃなくて、三浦選手。中学の時から憧れていて、ずっと目標にしている人です。高校生になると力の差をちゃんと理解できるようになって、女子プロ野球の試合やイベントで見かけても『私なんかが……』って、声を掛けることすらできなくなりました。雲の上の存在であることに気が付いたんです。今も三浦選手のようになりたくて、ずっと意識していますね」

女子プロ野球選手から大学生に転身… 憧れの選手と目指す前人未到の7連覇

「侍ジャパン」女子代表は2012年以来、負けなしの不沈戦艦だ。世界の頂点を走り続ける女子選手たちは眩しかった。だが、どれだけ実力差を痛感しても、白石選手は目標に迫るための努力を惜しむことはなかった。女子野球の名門・福知山成美高を卒業した2018年に女子プロ野球の門を叩き、その翌年には三浦選手がいる京都フローラへ移籍。打撃フォーム改良にも着手し、飛躍的成長を遂げた。

 その後、2021年に日本女子プロ野球機構が活動を休止したことをきっかけに、母の勧めで同年4月に大阪体育大へ入学。現在はアルバイトをしながら、野球、教員免許取得のための勉強と、多忙な日々を過ごしている。

 今年で23歳。「いつの間にか『三浦選手が日本代表にいる限り絶対無理。この人を超えないと日の丸を背負うことはできない』と思うようになっていました。今でも三浦選手には全てにおいて及びません」と、先輩はまだ手の届かない雲の上の存在だ。だが今回、夢に見た舞台で肩を並べられることに心を震わせている。

 もちろん、見据えるのは大会7連覇。持ち前の勝負強さと広角に打てる打撃力、広い守備範囲を可能にしている一歩目の判断力を武器に、勝利へ貢献する準備は整っている。「何回も代表に選ばれている選手は、連覇への道は険しいということを経験しているので、私以上に力が入っていると思う」。初選出だからこそ放てるフレッシュさを生かし、「代打などで出た時には1点にかける想いを全面に出していけたらなと思います」と意気込んだ。

代表チームの活躍を通じて知ってほしい女子野球全体の魅力

 代表チーム唯一の大学生として、果たしたい役割がもう1つある。女子大学野球のレベルアップ、注目度拡大のきっかけ作りだ。女子高校野球は2020年に阪神甲子園球場で初めて全国高等学校女子硬式選手権大会の決勝を行い、以後、注目度が急速に高まっている。しかし、大学野球に目を移すと、まだ盛り上がりに欠けていると言わざるを得ない。

「私が代表チームの練習や目標としている選手を間近で見られることは、自チームにとってもプラスだと思っています。代表合宿や国際大会で感じた意識の高さ、全員で同じ気持ちを持つ大切さ、ルーティンなどを大学のチームへ持ち帰ることで、女子の大学野球がもっと良いものになるんじゃないかと思います」と力を込める。

 オン・オフの切り替えをするため練習開始前に手を叩くなど、代表チームで行っているルーティンをすでに大学でも浸透させた。今度は自分が活躍することで、全国の野球少女だけでなく、大学生にも刺激を感じてもらいたい。野球が好きな人には女子の大学野球へも目を向けてもらいたいと強く願う。

「7連覇をすることで色々なメディアから女子日本代表の情報が発信されて、色々な人の目に止まると思っています。小さい子から大学生、社会人まで頑張っているこの競技の全体を知ってほしい。勝つこと、連覇することなど日本代表に関する情報が、そのきっかけになれば」

 憧れの女子野球選手に刺激を受け、夢を叶えた白石選手。だからこそ、「侍ジャパン」女子代表が秘める影響力を信じている。

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