日米大学野球でつないだ“世界一”の流れ 大久保監督が優勝後に浮かべた涙の意味

2023.7.24

「第44回 日米大学野球選手権大会(日米大学野球)」が日本時間7月8日から米国・ノースカロライナ州などで行われ、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表は米国代表に3勝2敗で勝利し、2大会連続20回目の優勝を成し遂げた。大会は2勝2敗で最終戦を迎える大接戦の展開に。米国開催回に日本が優勝を飾るのは、2007年以来16年ぶり2度目の快挙だった。

写真提供=Full-Count

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44回目を迎える伝統の大会で「侍ジャパン」大学代表が米国代表と熱戦

「第44回 日米大学野球選手権大会(日米大学野球)」が日本時間7月8日から米国・ノースカロライナ州などで行われ、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表は米国代表に3勝2敗で勝利し、2大会連続20回目の優勝を成し遂げた。大会は2勝2敗で最終戦を迎える大接戦の展開に。米国開催回に日本が優勝を飾るのは、2007年以来16年ぶり2度目の快挙だった。

 2019年の前回大会は、最高殊勲選手賞(MVP)に輝いた明治大の森下暢仁投手(現広島東洋)ら代表メンバー24人のうち21人がプロ入りした。今大会も6月の代表選考合宿を経て選出された26人の中には、今秋のドラフト上位候補との呼び声が高い選手も多い。対する米国代表もメジャー予備軍がひしめくと言われ、大会前からハイレベルな争いが期待された。

 舞台となったのは、日本と13時間の時差があるノースカロライナ州とサウスカロライナ州。旅の疲れがある中、慣れない天然芝のグラウンドに不規則な練習時間と決して有利とは言えない条件ながら、日本は幸先のいいスタートを切った。

青山学院大・下村が初戦好投で流れを呼び込むも…

 第1戦に先発したのは下村海翔投手(青山学院大)だ。今年の全日本大学野球選手権大会で優勝後に代表選考合宿へ追加召集された右腕は、試合の序盤はフォーク、カーブで緩急をつけ、中盤以降は「一番自信のあるボール」と話すカットボールを中心の投球にシフトチェンジ。米国打線を相手に5回まで投げ、ソロ本塁打による1失点に抑えて先勝を呼び込んだ。流れを掴んだかに思われたが、米国も簡単には勝たせてくれなかった。

 第2戦は草加勝投手(亜細亜大)が先発を任されたが、0-0の4回に米国打線の洗礼を受けた。1死からチャーリー・コンドン内野手に左翼へ先制ソロを運ばれると、3本の単打などで2死満塁に。ここでロドニー・グリーンJr.外野手に右翼フェンスを越える満塁弾を浴び、一挙5点を献上した。5回にも3点を許した日本は、9回に4点を返したが万事休す。5-8で黒星を喫すると、続く第3戦もわずか4安打で完封負けした。

1勝2敗で迎えた第4戦に粘り勝ち、大久保監督「選手のメンタルが強くなった」

 1勝2敗と先行された日本は、休養日を挟んで迎えた第4戦に再び下村投手を先発マウンドに送り込んだ。直球に強いと言われる米国打線を相手に第1戦では変化球中心の配球だったが、ここで方針を転換。「低めの変化球に(バットが)届いてしまうので。困った時に低めは通用しない」と高めの直球を有効に使い、3四球を与えながらも5回を無安打無失点に抑えた。

 1点リードの6回に2番手・武内夏暉投手(國學院大)が2被弾で3点を奪われ逆転を許したが、その裏に打線が反撃。1死三塁から3番・宗山塁内野手(明治大)の中前適時打で1点差に迫ると、4番・西川史礁外野手(青山学院大)も右前打でつなぎ、7番・廣瀬隆太内野手(慶應大)の左前適時打などで勝ち越しに成功した。

 大会後、大久保監督は第4戦の6回に繰り広げられた攻防を回顧。「正直、ちょっと厳しいのかなとは思いました。そこからよくひっくり返した。あの辺が選手のメンタルが強くなった、成長したところじゃないかな」と語った。第4戦に勝利した日本は、2勝2敗のタイに戻した最終第5戦で細野晴希投手(東洋大)が6回途中2失点と好投。打線も相手のミスを逃さずに6点を奪って快勝し、大会成績を3勝2敗として連覇を飾った。

 優勝を決めた後、大久保監督の目には光るものがあった。3月に開催された「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(WBC)」では、侍ジャパントップチームが決勝でマイク・トラウト外野手(ロサンゼルス・エンゼルス)らを擁する米国を3-2で破って世界一となった。開催国、対戦相手、着用するユニホームもすべて同じ。「今年、WBCでトップチームが世界一になって、その流れで大学野球の番が来ましたので、なんとか優勝をしなくてはいけない。そういう思いは強くありました」。喜びと同時に、重圧から解放された涙でもあった。


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鬼門だった敵地開催、2007年と今回の優勝に「何か縁があるんじゃないか」

 1972年に明治神宮野球場で産声を上げ、今年で44回目を迎えた日米大学野球。今大会までに日本は19回優勝しているが、そのうち18回が日本開催時のもので、22回の米国開催では優勝は1回と大きく負け越していた。唯一の“敵地優勝”は早稲田大の斎藤佑樹投手(元北海道日本ハム)らが出場した2007年のみ。当時、指揮を執ったのは青山学院大の河原井正雄監督だった。

 今大会は、直前の全日本大学野球選手権大会で18年ぶり5度目の優勝を飾った青山学院大から最多の5人が選出された。中島大輔外野手が主将としてチームをまとめ上げ、MVPには下村投手が輝いた。胴上げ投手になった常廣羽也斗投手も先発、抑えとフル回転。「当時は河原井さんが監督を務めて、今年は常廣や下村が活躍して、中島がキャプテンとしてまとめ上げてくれた。何か縁があるんじゃないかな」。大久保監督は大会終了後、感慨深そうに振り返った。

 日米大学野球を終えたナインは8月28日の「侍ジャパンU-18壮行試合 高校日本代表対大学日本代表」で再集結する。大久保監督は「相手の方が主役ではありますが、負けるわけにはいきません。投手陣にはしっかり調整してきてもらって、抑え込んでもらいたいです」。全力で真剣勝負を挑み、次の世代へとバトンをつないでいく。

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