数字と言葉が物語る大谷翔平の凄み 世界一決定戦・WBCの舞台でも見せた偉業

2023.4.3

野球日本代表「侍ジャパン」が劇的な勝利を重ね、3大会ぶりの優勝奪還に成功した「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)」。栗山英樹監督を筆頭にコーチ陣、スタッフ、そして32人の選手たちが誰一人欠けても成し得なかった偉業に、日本列島は大きな感動の渦に包まれた。

写真提供=Getty Images

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投手として2勝1セーブ、打者としては全7戦出場で打率.435

 野球日本代表「侍ジャパン」が劇的な勝利を重ね、3大会ぶりの優勝奪還に成功した「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)」。栗山英樹監督を筆頭にコーチ陣、スタッフ、そして32人の選手たちが誰一人欠けても成し得なかった偉業に、日本列島は大きな感動の渦に包まれた。

 ベテランと若手、メジャー組とNPB組が巧みに融合して生まれた結束力こそ、栗山ジャパンの真髄でもあるが、その中でも観る者の想像を遥かに超え、ドラマでも描ききれないような活躍を体現したのが、大会MVPに輝いた大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)だった。

 5回目を数えたWBCに史上初の“二刀流”で参戦した大谷選手が一線を画する存在であることは、数字が如実に物語っている。投手としては3試合に登板し、2勝1セーブをマーク。今大会最多の9回2/3を投げて打者37人と対峙し、5安打4四死球11奪三振、わずか2失点とした。1次ラウンド初戦の中国戦では初回から160キロのストレートを投げ込み、先発2戦目となった準々決勝ラウンドのイタリア戦では最速164キロを計測。要所で空振り三振を奪うと雄叫びを上げ、全身から気合をみなぎらせた。

決勝戦ではベンチとブルペンを往復、守護神として試合を締める

 先発マウンドに上がりながら、打者としても獅子奮迅の活躍だった。全7戦で3番打者を任され、23打数10安打で打率.435。1次ラウンドのオーストラリア戦では、東京ドーム右中間席後方の自身が出演する大看板に特大ホームランが直撃。その圧倒的なパワーに誰もが一瞬目を疑ったほどだ。その他にも二塁打4本を放つなど、長打率は.739を記録した。また、1次ラウンドでは全4試合で打点を挙げるなど合計8打点。9得点、10四球も今大会最多記録だった。

 野球界の常識を塗り替えたのは、前回覇者・米国との決勝戦だ。この日、3番・DHで先発出場した大谷選手は、6回の攻撃前に三塁側ベンチから左翼後方のブルペンへ向かい、登板準備をスタート。7回に打順が回ってきたこともあり、たびたびベンチとブルペンを往復する姿は新鮮だった。1点リードの9回にDHを解除してクローザーとして登板。2アウトから米国主将でエンゼルスの盟友でもあるマイク・トラウト外野手を空振り三振に仕留め、グラブと帽子を投げ捨てながら喜びを爆発させたシーンは多くの人の脳裏に鮮明に焼き付けられたことだろう。

 八面六臂の活躍をした大谷選手は大会MVPに輝いたばかりか、投手とDHの2部門でベストナインにも選出。WBC、そして野球の歴史に新たな1ページを刻んだ。

成功と成長のヒントにあふれた“伝説のスピーチ”

 今回のWBCでは、大谷選手の人間性が際立つ場面も多く見られた。その代表例が、決勝戦の直前にクラブハウスで生まれた名スピーチだろう。侍ジャパンは大会を通じて、試合前に作る円陣でチームの士気を高める“声出し”を行っていた。決戦の日に声出し担当となった大谷選手は、「翔平、お願いします」と促されると両手を腰に当て、笑顔を浮かべながらチームメートに語り掛けた。

「僕から1個だけ。あの、憧れるのをやめましょう。ファーストに(ポール・)ゴールドシュミットがいたりとか、センター見たらマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたりとか、野球をやっていれば誰しもが聞いたことがあるような選手たちが、やっぱりいると思うんですけど、今日一日だけは、やっぱり憧れてしまったらね、超えられないんで。僕らは今日、超えるために、トップになるために来たんで、今日一日だけは彼らへの憧れは捨てて、勝つことだけを考えていきましょう。さあ行こう!」

 憧れの気持ちは、相手に心を奪われた時に生まれるもの。憧れを抱いたまま試合に臨めば、プレイボールの声が掛かる前から相手に心理的優位を明け渡すことになってしまう。憧れの人に肩を並べることができたとしても、超えることは至難の業だ。まずは憧れの気持ちを捨てて、野球選手として同じ土俵に上がることが大事。自分の可能性に限界を設けず挑戦し続け、新境地を切り拓いてきた大谷選手の言葉には、成功と成長のヒントが凝縮されている。

 この“伝説のスピーチ”の動画が侍ジャパン公式ツイッターで公開されると、瞬く間に世界へ拡散。英語をはじめ様々な言語に翻訳されるなど、世界中に響きわたった。

 侍ジャパンの一員として世界一となった大谷選手が次に目指すのは、所属するエンゼルスで世界一になること。日本時間3月31日には2年連続で開幕投手として、敵地で行われたオークランド・アスレチックス戦のマウンドに上がった。今シーズンはどんな偉業を見せてくれるのか。多くの人々がその活躍を心待ちにしている。


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