侍ジャパンU-12代表、銅メダルはならず 仁志監督は選手称える「涙を流すくらいの成長をしてくれた」

2017.8.6

悔しい敗戦となった。最後の打者となった代打・中島大成(大阪南リトル)が三ゴロに倒れ、試合が決着。0-1。5回にわずかな綻びから失った1点が、最後の最後に、重くのしかかった。うなだれる侍ジャパンU-12代表の選手たち。10日間の激戦を戦い抜いてきたナインの目から、涙がこぼれ落ちた。

写真提供=Getty Images

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3位決定戦でメキシコに惜敗、行き詰まる投手戦に敗れて涙

 台湾・台南市で行われている「第4回 WBSC U-12ワールドカップ」は6日、大会最終日を迎え、侍ジャパンU-12代表は3位決定戦に臨んだが、メキシコに敗れて2大会ぶりの銅メダル獲得を逃した。5日まで行われたスーパーラウンドで3勝2敗の3位となり、3位決定戦へと進んだ侍ジャパンU-12代表。オープニングラウンドで敗れていたメキシコにリベンジを期したが、息詰まる熱戦の末に0-1で惜敗し、4位に終わった。

 悔しい敗戦となった。最後の打者となった代打・中島大成(大阪南リトル)が三ゴロに倒れ、試合が決着。0-1。5回にわずかな綻びから失った1点が、最後の最後に、重くのしかかった。うなだれる侍ジャパンU-12代表の選手たち。10日間の激戦を戦い抜いてきたナインの目から、涙がこぼれ落ちた。

「序盤に劣勢になると子供たちも緊張してしまって、いいところが出なかったりするところはこれまでもあった。やはり今日もそういう傾向にはあったかなと思います。負けられない試合というのは本人たちも分かっていると思う。序盤に緊迫した試合になると、なかなかこう気持ちが前にいかないとか、気持ちが出ても空回りしてしまうとか、そういうことが今日も見られた」

 仁志敏久監督がこう振り返ったメキシコ戦。両チームの投手陣が好投し、バックも好守で盛り立てる引き締まった好ゲームとなり、緊迫の展開となった。侍ジャパンの先発は山田脩也(荒町タイガース)。今大会4度目の先発マウンドに上がった小学校6年生の右腕が懸命にゲームを作った。

 初回、2つの四球などで2死満塁としたが、イケル・ガレゴスを右飛を打ち取り、窮地を脱出。2回2死では自身に直撃しようかという強烈なライナーをキャッチ。好プレーも見せて、無失点に封じた。3回は2番手・大山陽生(広島安佐ボーイズ)へと継投。大山も2人の走者を背負ったが、1イニングを無失点に切り抜けた。

 4回は3番手の加藤達哉(武蔵府中リトル)がマウンドへ。この左腕も二塁打を浴びて走者を背負ったが、無失点。1死二塁での右飛で二塁走者が三塁を狙ったが、この時のタッチアップで走者の離塁が捕球よりも早かったのを、キャプテンを務めた遊撃・徳永光希(香芝ボーイズ)が見逃さず、アピールプレーでアウトを奪った。

最後は暴投で決勝点を許すも…「バラバラだったチーム」が確かに成長

 好プレーを連発していた侍ジャパンU-12代表だったが、勝負を分けたのは、わずかなミスだった。両チーム無得点で迎えた5回。今大会幾多の窮地でチームを救ってきた山口滉起(大阪東リトル)が重い1点を失った。先頭のイチロー・カノに与えた四球をきっかけに2死二塁とされると、3番ファン・パブロ・ティラドへの初球を、捕手・森大輔(中百舌鳥ボーイズ)が痛恨のパスボール。走者が三塁に進むと、続く2球目はワイルドピッチに。懸命に森がタッチしに飛び込んだものの、及ばず、三塁走者の生還を許してしまった。

 結果的に、この1点が跳ね返せなかった。打線はメキシコ先発のファン・パブロ・エルナンデスの前に走者は出せども、本塁が遠い。初回に2死から戸井零士(松原ボーイズ)、山口の連打で一、二塁のチャンスを作った。2回にも太田和煌翔(千葉市リトル)の二塁打などで2死三塁、4回にも山口の内野安打をきっかけに、2死三塁と得点圏に走者を進めたが、あと1本が出ず。最終回にも、2死から山口が左中間への二塁打を放ったが、中島が倒れた瞬間に、メダル獲得の夢が潰えた。

「点の取られ方は残念でしたけど、山口もピッチャーをやらなければ野手で出て、4番でいいところで打ってという風にやってきて、すごく疲れていたと思う。山口らしいボールではなかったですね」。チャイニーズ・タイペイ戦の反撃の3ランや、韓国戦でのサヨナラ2点適時二塁打など、ここぞという場面で大仕事を果たしてきた山口。指揮官はこれまでの働きぶりを称え、責めることはなかった。 

 10日間、9試合を戦ってきたこの大会。台風10号の影響で試合中止が相次ぎ、2日連続でダブルヘッダーが組まれるなど、選手たちにとっては過酷な大会となった。台湾入り前にも合宿を行い、寝食を共にしてきた仁志監督にとっては、その中で選手たちの成長を感じた日々になった。

「今回はチームを作るところから始まって、始まったときはバラバラだし、自分のことしか考えられないような傾向がある子が多かった。それが、こうやって最後に負けて、涙を流すくらいの成長をしてくれた。最初の集まった時の雰囲気からすると、最後に負けて涙を流すなんていうのは想像も出来ないくらいのスタートだった」

キャプテンの徳永は「次はU-15の代表になって優勝を」

 一丸となりきれていなかった子供たちだが、大会が進むにつれて、チームになっていった。灼熱の台湾の地。試合に出ていない選手たちは2死になると、ベンチで氷を入れた袋を手に持った。守備から戻ってくる選手たちの首に当て、体温を下げるためだった。水を手渡し、用具の準備などに走った。試合前後の用具の運搬も子供たち自らの手で行った。それぞれがやるべき自分の役割をこなす。大人でも難しいことを、侍ジャパンU-12代表たちは、やってのけた。

 結果は4位とメダルには届かなかったが、この大会で選手たちが得たもの、経験は、将来への糧、財産となるはずだ。キャプテンの徳永は試合後、「チームとしての反省はあります。こういうことは自分のチームに戻ってからもあると思うので、生かしていきたいです。次はU-15の代表になって、キャプテンになって優勝したい」と語り、敗戦投手となった山口も「自分がしっかり抑えてやろうという気持ちだった。負けて悔しいです。もっと頑張ろうと思いました。次はU-15の代表を目指して頑張りたいです」と誓った。

「成長したのは、心の成長、チームメートを思いやるとか、そういったところですね。親御さんや所属しているチームの指導者があの子たちを見て変わったと感じるんじゃないですかね。今は我々の立場からすると、彼らの成長が1番の楽しみですから。野球をやるやらないにしても、立派な大人になることを願っているので。野球で活躍してくれれば、さらに嬉しいですね。あの子たちといる時間がすごく楽しかったし、たくさん叱りました。みんなで1つのことをやり遂げたという思いは監督、コーチも一緒ですから。またどこかで立派な選手になって会いたいですね」

 仁志監督は感慨深げに語る。悲願の世界一には届かなかった。悔しさも残った。でも、それ以上に大切な何かを、この期間で子供たちは得たことだろう。

【了】

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