4番を打つべき選手は誰なのか――山崎武司氏が見る侍ジャパン打線の実力

2016.8.22

4番を打つべき選手は誰か。打線の構成はどうするべきか。そして、新戦力として日の丸を背負うべき選手はいるのか…。強打者として活躍した山崎武司氏は、現在の侍ジャパンの打線をどう見ているのか。打撃のスペシャリストに、これからの侍ジャパン打線について語ってもらった。

写真提供=Full-Count

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通算403本塁打の強打者が見る侍ジャパン打線 「勝つための野球ということになると…」

 昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」は3位に終わったものの、破壊力を見せつけた野球日本代表「侍ジャパン」の打線。北海道日本ハムで不動の4番を打つ中田翔内野手が6番に入って大活躍するなど、選手層の厚さを見せつける形となった。今年も、昨季トリプルスリーを達成した山田哲人内野手(東京ヤクルト、現在は負傷離脱中)や、プレミア12では4番も打った筒香嘉智外野手(横浜DeNA)がペナントレースで結果を残しており、侍ジャパンでの活躍にも期待がかかる。

 現役時代に通算403本塁打を放ち、中日時代の1996年に本塁打王(39本)、楽天では39歳シーズンの2007年に本塁打(43本)、打点(108打点)の2冠王に輝くなど強打者として活躍した山崎武司氏は、現在の侍ジャパンの打線をどう見ているのか。4番を打つべき選手は誰か。打線の構成はどうするべきか。そして、新戦力として日の丸を背負うべき選手はいるのか…。打撃のスペシャリストに、これからの侍ジャパン打線について語ってもらった。

――まず、現役時代には4番を打つことも多かった山崎さんですが、侍ジャパンで4番を打つべき選手は誰だとお考えですか?

「勝つための野球ということになると、本当は4番というのは固定したい。でも、今は絶対的な4番はいないというのが現状かなと。ただ、全体的な選手のレベルが高いから、どの選手が4番に入っても結構打てる。以前は『4番はこの選手だな』という感じだったんですけど、今はそれこそ(中田)翔(北海道日本ハム)も打てるし、筒香(嘉智、横浜DeNA)も打てるし、(山田)哲人(東京ヤクルト)も打てる。飛躍的なことをいったら、そのうち大谷(翔平、北海道日本ハム)が打ってるかもしれない。

 色々そういうバリエーションのある打線構成ができるので、どっちかというと、勝ち抜いていくために相手ピッチャーに応じた4番起用の方がいいのではないかと思っています。相手が左の横手投げなのに筒香が4番ってどうかな、というのもあるし。ただ、右ピッチャーの時は筒香はボールをつかまえてくるし。人それぞれで4番候補が個性を出す今のチームだから、逆にすごく難しいですよね」

――去年11月の『世界野球WBSCプレミア12』では、初めは中村剛也選手(埼玉西武)が4番でした。

「そうですね。僕も最初は中村がいいかなと思って。中田翔か中村かなと。できれば右打ちがいいかなと本当は思うんですよね。相手(投手)の右左に関係なく打てるから。どうしても左投手のクセ球は左対左だと難しい。そのことを考えると、どうなのかなと感じます」

――4番候補に挙げられた中田翔選手は、『世界野球WBSCプレミア12』では6番で大活躍しました。

「6番は試合の勝ち負けに影響する打順だと僕も見てて思うし、6番の重要性ってすごくある。どうなんだろう…。これからやっていく上で、小久保(裕紀)監督が、ピッチャーに合わせて、というのが現状じゃないかな。そう思います。いいバッターが多いですからね」

山崎氏も評価する侍ジャパン打線の確かな実力「バッターは心配ない」

――打者としてはどうでしょうか? 東北楽天時代には野村克也監督(当時)が山崎さんを4番に据えて動かさなかった。打つ方の気持ちとして、打順が変わることで何か影響はありますか?

「日本代表に行くということもあるし、レギュラーシーズンとは違いますから。勝つことが前提で、(ペナントレースのように)143試合戦うのとは違います。大会で上の方に行けば、負けたら終わりです。だから状態のいい選手を使っていかないといけない。そういう部分では、なかなか打線って固定できないと思うし、それを監督やコーチが選手に言うべきだと思います。『状態がいい選手を使う』と。1、2番に誰を使うかとか、3、4番は誰を使うかとか、下位打線をどう組むかと、打線についてある程度のプランはあると思いますけど、2番が1番になったり、3番が5番になったり、4番が5番や6番にいったり、というのは僕は十分にあると思うので、そのあたりのコミュニケーションを取っておいたら、悪いことはないと思います」

――山崎さんと親交の深い元中日の山本昌さんは、『今の侍ジャパンの打線は相手ピッチャーからしたら怖い。これから5年くらいはすごく面白い』と話されていました。山崎さんも同じように見ていますか?

「やっぱりいいバッターが多いですよね。ムラが少ないバッターが多い。どっちかというと、アベレージを稼ぐバッターが多い。哲人はホームランも打率もあるし、筒香はホームランも打ってるけど、どっちかというと打率がいい。秋山(翔吾、埼玉西武)もそうだし、坂本勇人(読売巨人)も調子が良くて今年は打率の数字が出ている。色々やって点数を取れる。いずれにしても、世界大会はそうそうホームランは出ない。大味なゲームで勝つというのは少ないから、どうしてもロースコアで勝たないといけない。そういう部分では日本向きだと思う。意外とバッターは心配ないんじゃないかな、と。どっちかというとピッチャーじゃないですかね。心配なのは」

――相手のピッチャーがよくても1点を取り切る力があると。

「そうそう。バントもできるし、エンドランも出来そうだし、色々なパターンの野球ができますから。」

――山田哲人選手は現在は離脱していますが、昨年トリプルスリーを達成して、今年も素晴らしい活躍を見せていました。侍打線では何番を打たせるべきだと思いますか?

「意外と後ろで5番を打たすのも面白いかもしれませんね。4番を翔か筒香に打たせて。それか3番・筒香、4番・翔…。本当はジグザグで行きたいだろうけど、翔が3番っていう感じじゃないですからね。4番を翔にして、5番・哲人にして、3番・筒香とかね。6番・翔でもいいかな。柳田(悠岐、福岡ソフトバンク)もいるなぁ。選手がいすぎて使いづらいな(笑)」

――去年のプレミア12では、山崎さんが中日でチームメートだった平田良介選手がポイントゲッターとして活躍しました。

「平田は守備でも十分に使える。守備固めでも使えるくらいだから、使いやすい選手かもしれない。7、8番を打つのは面白いですね」

山崎氏が考える新戦力、「新井を入れた方がいいんじゃない?」

――今年のペナントレースを見ていて、他に新戦力となりそうな選手はいますか?

「どうだろう。絶対的なスピードがあるとか、絶対的にディフェンスがすごいとか、そういう選手を控えとして入れたほうがチームとしてはいいんじゃないかなと思います。若い選手はパッと思い出せないけど…、新井(貴浩、東洋広島)を入れた方がいいんじゃない? 年齢に関係なく、その時頑張っている選手を。若手というより中堅どころになってくるんじゃないかな。菊池(涼介、東洋広島)とか、丸(佳浩、東洋広島)とか。中日で言えば大島(洋平)とか。足があるので。原口(文仁、阪神)もキャッチャーであの打力だったら使いたいですけど、守備力をもう少し上げればチャンスはあると思います。あとはやっぱり小久保監督の好みですね。こういう野球をしていく、という。ピッチャーも同じです」

――山本昌さんは『現役時代に日の丸への想いが強かった。一度背負ってみたかった』とおっしゃっていました。山崎さんも同じような想いがありましたか?

「そうですね。僕も全く縁がなくて。マサさんも僕も同世代だけど、あんまりそういうのもなかったし、それこそオリンピックも(出場は)アマチュア主体だった。やっぱり『全日本の4番打った』とか、そういうのは1つの勲章であり、ステータスでもあるから、誰でもやってみたいという気持ちはあると思う。日米野球の4番を打たせてもらったことあるけど、それでもやっぱり嬉しかった。縁がなかったから。羨ましいと思う。

 福留(孝介、阪神)にも色々(日本代表について)聞いたりしたけど、それは財産になるし。これからはスポーツの国際大会が多くなってくる。世界で戦えるのは、レベルを上げるためにはうってつけですよね。僕らは日本の中で日本一を決めるための競争をしていたわけだけど、今は世界を向いて、よければ最高峰のメジャーに行けるきっかけにもなる。誰だって結果を出していい成績を出せば、世界最高峰に行きたいのは当たり前だから。メジャーに移籍すると、『お金で行った』とか、『恩知らずだ』とかいう声もあるけど、お金が変わらなくても絶対に世界最高峰の舞台でやりたいに決まっている。だから僕はメジャーに行くのは大歓迎だし、そういうふうに思ってやらない選手なんて凄くないんじゃないですか?」

――日米野球でメジャーの選手と対戦することで刺激はありましたか?

「ありましたね。『ああ、俺はホームラン王って引っさげて日米野球にいったけど、全然パワーないな』って思った。そういう挫折感も味わったし。(国際化が進む)これからはスポーツにはいい時代になったよね」

――最後に、今の侍ジャパンが世界一になる力はあると思われますか?

「十分にある。僕は日本人だからということじゃなくて、冷静に今の野球を見てると、最もコンスタントに成績を挙げられるチームですよね。でも、やっぱり一発勝負だから、勝ち負けはつきますけど。他の国のピッチャーを見ていても、2、3人(いい投手が)いても、あとはイマイチとかはある。そこからスーパーな選手がいるとか、その兼ね合いはあるかもしれないけど、間違いなく評価としては上のクラス。だから優勝候補だと思います」

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