「1度は行きたかった」― 山本昌氏が抱いていた野球日本代表への強い想い
侍ジャパンの常設化を前向きに捉える山本氏は、育成年代や女子の日本代表があることも「素晴らしい」と評価する。そして、侍ジャパンが野球界の発展に向けて、大きな役割を果たす可能性があるとも見ている。そう考える理由とは、いったいどこにあるのか。そして、なぜ山本氏は日の丸への「憧れ」を抱いていたのか。
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“レジェンド左腕”が明かした日本代表への憧れ、「そういう想いは強かった」
昨季限りで引退した山本昌氏は現役生活32年間で通算581試合に登板し、219勝165敗、防御率3.45の成績を残した。2014年9月5日・阪神戦ではNPB最年長勝利(49歳25日)を記録し、引退試合の2015年10月7日・広島戦ではNPB史上初となる50歳(57日)での公式戦出場を達成。数々の偉業を成し遂げてきたが、日の丸には縁がなかった。
全盛期の1990年台前半、野球日本代表はNPB所属の選手が入らずに構成され、国際大会にもアマチュア選手だけで出場していた。それでも、“レジェンド左腕”は当時から日本代表への強い想いがあったという。「1度は(国際大会に)行きたかった」と明かした上で、日の丸を背負って戦うことは「幸せなのだろうと思います」と話す。
侍ジャパンの常設化を前向きに捉える山本氏は、育成年代や女子の日本代表があることも「素晴らしい」と評価する。そして、侍ジャパンが野球界の発展に向けて、大きな役割を果たす可能性があるとも見ている。
そう考える理由とは、いったいどこにあるのか。そして、なぜ山本氏は日の丸への「憧れ」を抱いていたのか。2009年には、日本代表メンバー入りを“志願“していたという秘話も……。“レジェンド左腕”が侍ジャパンへの想いを明かしてくれた。
――山本さんが若い頃は、侍ジャパンは常設されていませんでした。以前は、国際大会にNPB(日本野球機構)所属の選手が日本代表として出場できなかったわけですが、現役時代に日の丸を背負って戦うことへの憧れはありましたか?
「私は非常にそういう想いは強かったです。1度は行きたかったなと。野球をしている以上はね。私の全盛期というのはおそらく90年代前半なんですけど、そういうのはいつも思いますね。あの時はまだ国際大会はアマチュアの選手のみで参加してましたのでね。(全盛期が)今なら、という思いはありますけどね。あの緊張感の中でやれるっていうのは、そうないでしょうから。幸せなことなんだろうというのは思います」
山本氏が明かす秘話、「日の丸ってかっこいいでしょ」「与田さんに電話したんですよ」
――プロ野球選手も日々の試合をファンのために緊張感を持ってプレーしています。ただ、日の丸を背負って他国の代表と戦う国際大会には、また違う種類の緊張感があると思います。日本代表として戦うことは、やはり選手にとっては「誇り」となるのでしょうか?
「そうですね。日の丸ってかっこいいでしょ。あんなにかっこいい国旗を誰が考えたんだろうって。シンプルで、日本の日の丸は世界で一番かっこいい国旗だと私は思っているので、それを背負えるというのは、幸せだなと。
日の丸に関しては、すごく執着心があったんです。(2009年に日本代表の投手コーチだった)与田(剛)さんに電話したんですよ。『(日本代表に)選んで』って。前の年、中日で11勝して、チームの防御率トップだった。だから『与田さん、俺を選ばん?』って。そうしたら『選ばない』って言われて。『そっかぁ』って(笑)」
――侍ジャパンが常設されていて、日の丸を目指せる環境があるということについては、どう思いますか? 今は若い世代の選手たちも各世代の侍ジャパンを目指すことが出来ます。
「私は素晴らしいことだと思ってます。サッカーは下部組織がずいぶん下から、本当に小学校くらいからチームがあって、それにちゃんとクラブの名前が付いていて、一貫して育成のシステムが出来ています。しかも、ボール一個あれば遊べるので、確かに野球よりもサッカーのほうが簡単かもしれません。
野球はバットとボールとグラブが必要なので、大変です。ただ、プロ野球という日本の最高レベルが集まっている人たちとアマチュアの人たちの交流がないのは、少し残念だなと思っています。これから先、どんどん置いていかれてしまうと思うので、そういう意味で、侍ジャパンが女子を含めてチームがあるというのは、また素晴らしいことだなと思いますけどね。僕らが普通にどこにでもアドバイスできるような環境が早く整ってくれればと思います。
その第一歩、第二歩として、この侍ジャパンがあるというのは、いいことだなと。例えばU-15は鹿取(義隆)さんが監督をされていますけど、そうやってプロ経験者が指導するチャンスが早く来るのではないかと期待しています。そしてやはり、(各世代の選手が)日の丸を目指す気持ちも大きくなりますし、盛り上がることにもなりますので。ぜひ高校も大学も社会人も女子もしっかりやってほしいなと」
若い世代にとっても大きな意義、「日本代表にマイナスな面は1つもない」
――確かに、若い世代の選手にとっても大きな意味があります。
「小さい頃から侍ジャパンがあるというのは、やはり目標になりますしね。選ばれた選手は自覚が出ますし、そういうところもいい影響がすごく出るだろうと。いい経験も出来ますし、もう1回選ばれたいという気持ちになる。小学生でも中学生でも高校生でも、選ばれればまた自信になるだろうし、プライドになるだろうし、みんなも入りたいと思うだろうし。
日本代表は女子、小学生から全部ありますけど、マイナスな面は1つもないのではないか、と思います。『なぜ今までやらなかったの?』と、逆に聞きたいくらいですね。もっともっと日本のトップでやっているプロ野球とアマチュアの交流が盛んにならないと駄目だとずっと現役時代から言ってきたので、そういう面で素晴らしいことだと思いますね」
――侍ジャパンがプロアマの雪解けへの突破口になるかもしれないですね。
「なってほしいですね。高校の代表を高校の監督がやるのはいいことですけど、(将来的には)そこにプロが入るようなことがあってもいいと思います。小久保監督が指名して、全部一列になることができてもいい。早くプロとの交流、行き来が出来るようになればいいですね」
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