成長と涙… 悲願の世界一へ、 侍ジャパンU-12代表が4位で終えたW杯で得たもの
7月28日から8月6日に台湾・台南市で行われた「第4回 WBSC U-12 ワールドカップ」。アメリカの3大会連続優勝という形で幕を下ろした大会で、悲願の世界一を目指した仁志敏久監督率いる侍ジャパンU-12代表は、3位決定戦でメキシコに惜敗し、メダル獲得を逃した。
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メダル獲得を逃すも4位に入った日本、U-12W杯の激闘を振り返る
7月28日から8月6日に台湾・台南市で行われた「第4回 WBSC U-12 ワールドカップ」。アメリカの3大会連続優勝という形で幕を下ろした大会で、悲願の世界一を目指した仁志敏久監督率いる侍ジャパンU-12代表は、3位決定戦でメキシコに惜敗し、メダル獲得を逃した。
大会最終日、銅メダル獲得を目指して戦い、敗れた若き侍たちは人目をはばからずに泣いた。0-1。メキシコに奪われたわずか1点のビハインドを跳ね返すことが出来ず、悔し涙が選手たちの頬を伝った。
「始まったときにはバラバラだし、自分のことしか考えられないような傾向のある子が多かったんですけど、こうやって最後に負けて涙を流すくらいの成長をしてくれた。あの子たちといる時間がすごく楽しかったし、たくさん叱ったし、合宿からやってきて、みんなで1つのことをやり遂げたという思いは監督、コーチも一緒。最後に負けて涙を流すなんていうのは想像できないくらいのスタートだった。負けて悔しいですけど、達成感、一生懸命にやった充実感は持っていると思うので、それをこれからに生かしてほしいですね」
2大会連続で侍ジャパンU-12代表を指揮した仁志監督は、大会を振り返り、こう語った。メダルを逃した悔しさは、もちろん大きい。それでも、選手たちが見せた頑張り、そして、期間中に選手たちが見せた成長ぶりに、ただただ目を細めるばかりだった。
逆境を何度も跳ね返した大会だった。オープニングラウンド初戦はチェコに大勝したが、2戦目のメキシコ戦ではリードを奪われ、追う展開となり、5-6で敗れた。オープニングラウンドの成績が引き継がれるスーパーラウンドのことを考えれば、痛い敗戦だった。
さらに、悪天候にも悩まされた。開催地の台南市付近を台風10号が通過し、30日のチャイニーズ・タイペイ戦、31日の南アフリカ戦を雨で流した。8月1日のブラジル戦も試合途中に雨脚が強まり、降雨サスペンディッドゲームとなった。予備日として設定されていたのは8月2日の1日のみ。3試合を雨で流した侍ジャパンU-12代表は、出場12か国で唯一、2日、3日と2日連続でダブルヘッダーを課された。
韓国戦では奇跡の逆転サヨナラ勝利、メキシコ戦は悔しい惜敗
天候が回復して迎えた2日。侍ジャパンU-12代表は素晴らしい戦いを見せる。午前に行われた南アフリカ戦は控えメンバーを中心に戦い、5回コールド、31-0で大勝。夜に予定されていた優勝候補の一角、開催国のチャイニーズ・タイペイ戦へと弾みをつけた。
そして、そのチャイニーズ・タイペイ戦。メキシコに敗れていたため、負ければ、スーパーラウンドを圧倒的に不利な状況でスタートさせなければならなくなる重要な一戦だった。しかし、4回までに4点をリードされる苦しい展開をひっくり返す。5回に、大会途中から”エースで4番”となった山口滉起(大阪東リトル)が1点差に迫る3ランを放つと、最終回の6回に一挙に4点を奪って逆転。負けられない一戦で、驚異の逆転勝ちを見せた。この1勝が大きな意味を持ち、オープニングラウンド・グループAを首位で通過。スーパーラウンドへと駒を進めた。
スーパーラウンドでは優勝候補筆頭のアメリカに3-6で敗れたものの、その翌日に行われた韓国戦で、またしても、驚異の大逆転サヨナラ勝ちをやってのけた。両チーム無得点で4回まで終える緊迫の展開。だが、5回表に一挙に5点を失った。攻撃は残り2イニング。「さすがに5回に5点取られちゃうと、キツイなと思うんですけど…」と仁志監督も言う絶望的な状況だった。
負ければ、3位決定戦進出も逃す危機。侍ジャパンU-12代表は、この崖っぷちから這い上がった。5回裏に森大輔(中百舌鳥ボーイズ)、戸井零士(松原ボーイズ)、山口の3連打などで一挙に4得点。1点差に詰め寄ると、6回に3つの四球で満塁とし、またしても山口が中越えの2点適時二塁打。大逆転サヨナラ勝ちで、スーパーラウンドを3位で通過した。
メダル獲得をかけて挑んだメキシコ戦。オープニングラウンドで敗れた相手に、リベンジを期した戦いとなった。この試合も息詰まる投手戦となった。4回まで両チーム無得点。均衡が破れたのは5回だった。ここまで幾度となくチームを救ってきた山口が、自らのワイルドピッチで1点を失った。最後の最後まで粘りを見せたが、本塁が遠かった。1点も奪えずに惜敗。2大会ぶりのメダルは、手からこぼれ落ちた。
「点の取られ方は残念ですけど、山口もずっとピッチャーをやらなければ、野手で出て、4番でいいところで打ってという風にやってきて、すごく疲れていたと思う。山口らしいボールではなかった。まあしょうがないですね」
涙に暮れる山口を見やりながら、仁志監督は、大黒柱としての活躍を見せた4番をかばっていた。
仁志監督は次回大会へも意欲「やらせていただけるのなら」
今大会の侍ジャパンU-12代表の粘りは称賛に値する。だが、惜しむらくは、強豪国との試合で、主導権を握れなかったところにあるだろう。2度のメキシコ戦、チャイニーズ・タイペイ戦、アメリカ戦、韓国戦。接戦となった試合は、すべて相手に先手を奪われた。
「序盤に劣勢になると、子供たちも緊張してしまって、いいところが出なかったりするところは、これまでもあった。そういう傾向になったかなと思います。負けられない試合だとこちらがプレッシャーをかけてしまっているのもあるかもしれないですけど、負けられないというのは本人たちも分かっていたと思う。序盤にこう緊張感のある試合になると、なかなか気持ちが前にいかないとか、気持ちを出しても空回りしてしまうとか、そういうことが見られたかなと思います」
仁志監督が言うように、先手を奪われ、苦しい展開となった。チャイニーズ・タイペイ、韓国には逆転勝利を収めたものの、その追う展開が、最後の最後のメキシコ戦で響き、ビハインドを跳ね返せなかった。高校野球やプロ野球の9回制と違い、大会は6回制。イニング数が少ないため、より先に点を奪われると、苦しくなってしまうのだ。
今回で4回目となったU-12ワールドカップ。日本はまだ決勝に進出したことはない。決勝は第2回から3大会連続でチャイニーズ・タイペイとアメリカの顔合わせとなり、3大会ともアメリカが頂点に立っている。今大会、そのチャイニーズ・タイペイに勝利したことは大きな意味があるが、それでも、この2か国の壁は高いと言える。
「心の成長、チームを思いやるといったところは本当に成長したと思います」と選手の成長を第一に挙げた仁志監督は「やらせていただけるのなら」と、2年後の第5回大会でも監督を務めたい希望を示していた。激闘の末に、4位で終わった侍ジャパンU-12代表。メダル獲得、そして悲願の世界一の夢は、次なる世代へと託された。
【了】
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