接戦、圧勝、逆転劇で掴んだ全勝優勝 大学代表が欧州遠征で得たかけがえのない経験
野球日本代表「侍ジャパン」大学代表が7月、欧州で開催された2大会で優勝を果たした。堀井哲也監督(慶應義塾大監督)が率いる精鋭24選手は、14日間で11試合を戦うという厳しいスケジュールにも関わらず、2大会をともに無敗で制する“完全優勝”。縦縞のユニホームで戦った国際大会の経験は、選手一人一人にとってかけがえのないものとなった。
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全国から選ばれた精鋭24選手がプラハ、ハーレムで2大会に出場
野球日本代表「侍ジャパン」大学代表が7月、欧州で開催された2大会で優勝を果たした。堀井哲也監督(慶應義塾大監督)が率いる精鋭24選手は、14日間で11試合を戦うという厳しいスケジュールにも関わらず、2大会をともに無敗で制する“完全優勝”。縦縞のユニホームで戦った国際大会の経験は、選手一人一人にとってかけがえのないものとなった。
全国各地の大学野球春季リーグが終了して間もない6月22日から3日間、神奈川県にあるバッティングパレス相石スタジアムひらつかで開かれた代表選考合宿。元読売の高橋由伸氏が臨時コーチを務め、トップチームの井端弘和監督が視察に訪れた合宿には、全国の大学から選ばれた46人が参加し、ここから24人に絞り込まれた。短期間に試合が集中するため、投手が多めの11人、野手も全員が複数ポジションを守れることを確認。直前合宿を経て、まず臨んだのが7月6日から始まる「第43回プラハベースボールウィーク」だった。
開催国チェコをはじめ9チームが参戦、青山学院大・西川が大会MVP
大会には、開催国チェコをはじめ、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、リトアニア、オーストリア、スロバキア、チャイニーズ・タイペイ、日本の9チームが参加。グループAとなった日本は初戦でドイツと対戦した。初回に西川史礁外野手(青山学院大)の2ランで先制したが、3回に2点を返されて同点。だが、4回に印出太一捕手(早稲田大)のタイムリーで勝ち越すと、5回と6回にも追加点を挙げて7-3で勝利した。
日本は2戦目のチャイニーズ・タイペイ戦でも2点をリードするが、4回に同点となる。2-2で迎えた最終回、日本は先頭の代打・神里陸捕手(國学院大)の四球をきっかけに2死三塁の絶好機を作ると、飯山志夢外野手(立正大)の打球が相手失策を誘ってサヨナラ勝利。2連勝で迎えた3戦目のチェコ戦は16安打9得点と打線が活気づき、2023年のワールド・ベースボール・クラシック出場者を含む開催国に快勝した。
グループリーグ全勝で決勝に進んだ日本は再びチャイニーズ・タイペイと対峙し、互いに一歩も譲らぬ接戦を展開した。日本は初回に2点を先制されるも、その裏にすぐさま同点に追いつく。5回に1点を勝ち越されるも、6回に西川選手の適時打などで2点を加えて逆転に成功。7回にも1点を挙げて、5-3で優勝を果たした。決勝でのタイムリーも含む5打点を挙げ、打率.444を記録した西川選手が大会MVPを受賞した。
ハーレムでは米国に快勝も、スペインとは大接戦
そして、12日からはオランダ・ハーレムに場所を移し、「第31回ハーレムベースボールウィーク」に臨んだ。日本、米国、チャイニーズ・タイペイ、オランダ、イタリア、スペインの6チームが総当たり戦のオープニングラウンドを戦った後、上位4チームが準決勝に駒を進める仕組みとなっている。
日本は12日にチャイニーズ・タイペイと初戦を戦う予定だったが、雨天のために順延。13日に行われた米国戦では9-5と勝利を飾った。今回の米国代表は全米短期大学体育協会(NJCAA)の選抜選手だが、NJCAAにはかつてブライス・ハーパー外野手(フィラデルフィア・フィリーズ)やMLB通算703本塁打のアルバート・プホルス氏らが所属するなどレベルは高い。それでも日本は2回、小島大河捕手(明治大)のタイムリーで2点を先制すると、3回にも打者一巡の猛攻を仕掛けて5点を追加。4回に2点、6回に3点を奪われたが、序盤の貯金も生きて白星を挙げた。
2戦目の相手は2023年欧州選手権覇者のスペインだった。先発の渡邉一生投手(仙台大)は2回まで無失点に抑えるが、3回に先頭からの2連打などで1死満塁から3失点。追う展開となった日本だが、4回に栁舘憲吾内野手(國学院大)のソロ弾などで2点を挙げると、2点を追う6回には小島選手の2点2塁打で同点に追いつく。投手陣も奮起し、6回以降は藤井優矢投手(東日本国際大)と中村優斗投手(愛知工業大)が無失点リレー。7回には四球で出塁した西川選手が度重なる相手のミスでノーヒットながらに勝ち越しのホームを踏み、5-4と競り勝った。
第3戦ではチャイニーズ・タイペイと対戦。プラハベースボールウィークから数えると10日間で3度目の顔合わせとなった。互いに手の内を知りつつある両チームだけに、試合は締まった展開となる。先発マウンドに上がった伊藤樹投手(早稲田大)が4回を無失点とすると、藤井投手、野口練投手(近畿大)、市川祐投手(日本大)が完封リレー。打線は3回まで無安打に抑えられたが、4回に4番に抜擢された小島選手が犠飛で1点を先制すると、6回にはソロ弾で2点目を追加。リードとバットでチームを牽引し、2-0の完封勝利を引き寄せた。
リードとバットでチームを牽引した明治大・小島が大会MVP
勢いに乗った日本は、第4戦ではイタリアに8-2、第5戦ではオランダに5-1と快勝し、全勝でオープニングラウンドを1位通過。準決勝では4位通過のチャイニーズ・タイペイと今遠征4度目の対戦を果たしたが、日本は8-0と圧勝した。
決勝では米国と対戦。日本は初回に小島選手の2点タイムリーなどで3点の先制に成功したが、先発の中村投手は2回に2点を返され、5回には2点本塁打で逆転を許してしまう。だが、6回に打線が奮起。松下歩叶内野手(法政大)の2ランなど打者一巡の攻撃で6点を挙げて再逆転。投手陣も6回以降、篠木健太郎投手(法政大)、藤井投手が無失点でつなぎ、10-4でゲームセット。2018年の第29回大会以来となる2大会ぶりの優勝を飾った。大会MVPには10打点を挙げた小島選手が選ばれた。
14日間で11試合を戦うという密度の濃い日々を過ごした欧州遠征で、大学代表24人が得た学びや刺激はかけがえのない財産になるはずだ。ここでの経験を残りの大学生活でどう生かすか、さらにはその先に続く野球でのキャリアにどう繋げていくか、さらなる成長を遂げることを期待したい。大学代表は8月28日に再集結し、U-18代表と壮行試合を戦う。欧州遠征を経て強めた絆とチームワークで、弟分たちの挑戦を受け止める。
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