世代を代表する20選手が一致団結 U-18代表が粘り強さで掴んだ2大会ぶり銅メダル

2022.9.26

9月9日から18日まで米フロリダ州サラソタで開催された「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(以下、W杯)で、野球日本代表「侍ジャパン」のU-18代表は2大会ぶりの銅メダルに輝いた。3位決定戦当日は、前日からの継続試合となっていた米国戦も行う“変則ダブルヘッダー”だったが、スーパーラウンド初戦で大敗を喫した韓国に6-2で勝利。馬淵史郎監督(明徳義塾高)は「最低限、3位ということは、子どもたちもよく頑張ったと思う」と選手たちの健闘を称えた。

写真提供=Full-Count

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明徳義塾高・馬淵監督が指揮、山田投手、浅野選手ら甲子園のスターも参加

 9月9日から18日まで米フロリダ州サラソタで開催された「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(以下、W杯)で、野球日本代表「侍ジャパン」のU-18代表は2大会ぶりの銅メダルに輝いた。3位決定戦当日は、前日からの継続試合となっていた米国戦も行う“変則ダブルヘッダー”だったが、スーパーラウンド初戦で大敗を喫した韓国に6-2で勝利。馬淵史郎監督(明徳義塾高)は「最低限、3位ということは、子どもたちもよく頑張ったと思う」と選手たちの健闘を称えた。

 日本の高校球児を代表する20選手が、侍ジャパンのユニホームを着て世界で躍動した。

 仙台育英高が東北勢初優勝を飾った「第104回全国高校野球選手権大会」決勝から6日後の8月28日。山田陽翔投手(近江高)や浅野翔吾外野手(高松商高)ら甲子園を沸かせたスターたちを中心とするU-18代表が国内合宿をスタート。馬淵監督の下、2019年以来3年ぶりの開催となるW杯に向けて調整を始めた。

 同31日には「侍ジャパンU-18壮行試合 高校日本代表 対 大学日本代表」を実施。立教大学や早稲田大学とも練習試合を行うなど、大学生に胸を借りて実戦を積みながらチームとしての結束力を高め、米国へと旅立った。

 今大会から1試合7イニング制となり、最大105球の投球数制限や先発投手が降板後も指名打者として出場できるルールを採用。木製バットの使用も含め、国際大会は普段向き合う野球とは少し違ってはいたが、日本はまずオープニングラウンド初戦でイタリアに6-0の完封勝利。第3戦ではパナマに土壇場で同点に追いつかれるも4番・内海優太内野手(広陵高)のサヨナラ犠飛で勝ち、第4戦は5回コールド(10-0)でオーストラリアを倒すなど開幕4連勝とした。

 第5戦ではチャイニーズ・タイペイに2回と3回に4点ずつを献上するなど、5回までに9点を許した。その後、2点を返したが及ばずに初黒星。グループ2位でスーパーラウンドへ駒を進めた。

苦戦を強いられたスーパーラウンド、必死で繋いだ銅メダルの望み

 初優勝に向けて心機一転、スーパーラウンド初戦から白星を積み重ねたい日本。その前に立ちはだかったのが韓国だった。先発を任されたのは、主将も務める山田投手。初回、先頭打者に左前打を許すと、送りバントの後に四球や適時打などで4失点。一方の打線は韓国投手陣を攻めあぐね、6回まで散発の3安打。最後は浅野選手が、韓国3番手右腕の101マイル(約163キロ)速球で見逃し三振を喫し、0-8と完敗。決勝進出に黄色信号が灯った。

 4位以上を確定させるためにも必勝態勢で臨んだ第2戦。オランダとの手に汗握る投手戦で気を吐いたのが、川原嗣貴投手(大阪桐蔭高)だった。走者を同時に2人背負うことなく、二塁を踏ませたのも一度のみ。打線は3回に藤森康淳内野手(天理高)の一塁内野安打をきっかけに1点をもぎ取って、川原投手の好投に応えた。5回を終えて降りだした雨が止まずに降雨コールド。川原投手は5回3安打6奪三振無四球の快投で、メダルへの望みを繋いだ。

 スーパーラウンド第3戦は地元・米国との対戦となった。日本は3回途中まで3-2とリードしていたが、降雨で中断。2時間経っても雨は止まず、サスペンデッドゲームとして翌日へ持ち越しとなった。これに伴い、大会最終日の18日は米国との継続試合を戦った後に3位決定戦を行う“変則ダブルヘッダー”として実施されることになった。

 一夜明け、米国戦は日本が3-2でリードする3回表無死満塁から再開。両者ともに一歩も譲らず、日本がリードを保ったまま7回裏を迎えた。4回から登板し、9者連続凡退と好投していた吉村優聖歩投手(明徳義塾高)だったが、先頭打者にライトへ安打を許すと、味方の失策やボークなどで同点。なおも無死三塁で二刀流捕手の野田海人選手(九州国際大付高)がマウンドに上がり、1死を奪ったものの決勝打を左翼へ運ばれ、逆転負けを喫した。

逆風をはねのけた3位決定戦、馬淵監督「粘り強く戦ってくれたおかげ」

 3位決定戦の相手はスーパーラウンド初戦で完敗した韓国。さらに、直前には米国に手痛い逆転サヨナラ負け。日本は強い逆風が吹きつける状況の中、銅メダルをかけた決戦に臨んだ。

 最後の最後で投打がしっかり噛み合った。打線は初回1死、黒田義信外野手(九州国際大付高)、松尾汐恩捕手(大阪桐蔭高)、内海選手の3連打で1点を先制。2回には1死一塁から3安打3四球などで一挙5点を追加する猛攻で、序盤に韓国を突き放した。

 投げては先発を任された生盛亜勇太投手(興南高)が、立ち上がりに2四球を与えたが、そこから9者連続凡退。4回に2ランを浴びるも力投した。5回から登板した川原投手は先頭に安打を許したが、併殺に仕留めて二塁を踏ませず。最後の打者を空振り三振に斬ってとり、日本を銅メダルへと導いた。

 試合を締めた川原投手は、大会を通じて4試合に登板し、3勝0敗、防御率0.00の好成績。計13イニングで7安打16奪三振という素晴らしい働きで最優秀投手賞に輝いた他、ベストナインにあたる「オールワールドチーム」に選ばれた。また、川原投手と大阪桐蔭高でもバッテリーを組む松尾選手は、正捕手として全9試合に出場。打率.321、チームトップの9安打6打点を記録し、バッテリー揃っての「オールワールドチーム」選出となった。

 U-18代表は20日に銅メダルを持って帰国。馬淵監督は「20人の選手が日本の高校球児の代表として粘り強く戦ってくれたおかげで、なんとか銅メダルを獲得することができた。日本野球のマナーと技術は世界に通用していたと思う。だが、目標はあくまでも金メダル。7イニング制での戦い方や投手の起用法など、今大会の課題をしっかりと洗い出し、次の大会に向けて前進していきたい。選手たちは日の丸を背負った経験を今後の野球人生につなげていってほしい」とコメントを発表。世界を相手に堂々と戦った選手を労うと同時に、次回以降、金メダルを目指す上での収穫と課題を語った。

 20人の選手たちは来年3月に高校を卒業した後、それぞれの未来に向かって歩み出す。どの道を選んでも、U-18代表として侍ジャパンのユニホームを着て世界と戦った経験は、かけがえのない宝物になるはずだ。


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