稲葉新監督の元でスタートを切る侍ジャパン 躍進へのポイントとなる「打てる捕手」の台頭

2017.8.14

野球日本代表「侍ジャパン」のトップチーム新監督に、稲葉篤紀氏の就任が決まった。当面の目標は2020年の東京五輪での金メダル。ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)では第1、2回大会で優勝した後、2大会連続でベスト4に終わっているだけに、“世界一奪還“への期待がかかる。

写真提供=Getty Images

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今年11月には新設の大会に出場へ、元侍ジャパンコーチの緒方氏がポイントに挙げたのは?

 野球日本代表「侍ジャパン」のトップチーム新監督に、稲葉篤紀氏の就任が決まった。当面の目標は2020年の東京五輪での金メダル。ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)では第1、2回大会で優勝した後、2大会連続でベスト4に終わっているだけに、“世界一奪還“への期待がかかる。

 今年11月には、東京ドームで新設の大会「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」が開催され、侍ジャパンは韓国代表、チャイニーズ・タイペイ代表と激突する。稲葉新監督は初陣で果たしてどんな戦いを見せてくるのか。まずは、メンバー選考にも注目が集まるところだ。

 再び世界の頂点に立つために鍵を握る選手について、侍ジャパンが世界一に輝いた2009年の第2回大会、準決勝で敗退した第3回大会で外野守備・走塁コーチを担当した元読売の緒方耕一氏は「打てる捕手」を挙げた。

「今年3月の第4回WBCでは、(正捕手となった)小林誠司選手が課題の打撃で打率.450という数字を残しましたけど、基本的にジャパンでは打てる捕手が今まで選ばれてきた。そういうキャッチャーが出てくるかは1つ注目ですね。出てきたら侍ジャパンはさらに強くなると思います」

 世界一に輝いた第1回大会は里崎智也氏(当時千葉ロッテ)、第2回大会は城島健司氏(当時マリナーズ)、そしてベスト4だった第3回大会は阿部慎之助(読売)が日本の正捕手を務めた。確かに、どの選手もリードやキャッチングに加え、打力が売りの選手だった。第4回大会は、嶋基宏(東北楽天)が負傷で離脱し、小林がラッキーボーイ的な存在で躍動。ただ、負傷がなければ、嶋が正捕手となっていた可能性が高い。嶋は2010年に打率.315をマークするなど、現在の日本球界では「打てる捕手」の一人だと言えるだろう。

「キャッチャーはまずは守りなんですけど、それにプラスして打てたらいい」

「今回も嶋選手が万全であれば、一番打てるのは嶋選手だったと思います。それを上手いこと小林選手がバッティングでも守備でもカバーしてくれた。これは大きかったと思います。

 もちろん、捕手は守備も大切ですが、打てるに越したことはない。リードとかキャッチングについては、侍ジャパンに選ばれるほどの選手はある程度のレベルにあることが大前提です。だから選ばれている。しかも、配球については(対戦)相手どうこうではなく、そのピッチャーのいいところを生かす必要がある。こんなことはありえないですけど、仮に私が捕手をやって、『何投げたい?』とピッチャーに聞いて、『これを投げたい』と言われたら『じゃあ、それを投げて』と言っても、ある程度は抑えられるくらいのすごいピッチャーが侍ジャパンには集まると思うので。

 そう考えると、打撃は重要です。国際大会では、初対戦のピッチャーが多くて、そう簡単には打てない。1回、打線がつながったら大量得点になる試合もありますけど、打てない時は本当に打てない。なので、1人でも打てる選手が打線にいたほうがいい。そう考えると、キャッチャーも打てるに越したことはないと思います。キャッチャーはまずは守りなんですけど、それにプラスして打てたらいいですよね」

 一時期、NPBでは多くの球団が捕手を固定できずにいたが、最近は若手捕手が台頭し、レギュラーを務める選手も増えてきている。打撃を売りとする選手も少なくないだけに、侍ジャパンでアピールする選手が出てきてほしいところだ。緒方氏は、国際大会で結果を残せる打者のタイプとして、以下の条件を挙げている。

「対戦相手は、ほとんどまともな直球を投げてきません。国際大会といえば豪速球投手、というイメージがある人が多いかもしれませんが、実際にはそうではなくて、ツーシーム、チェンジアップ、スライダーが得意なピッチャーが多いんです。なので、少しでも呼び込んで反対側に打てる、攻撃的なバッティングができる人が活躍します。そういう選手が捕手でたくさん出てきてくれるといいですよね」

 また、投手については、緒方氏は読売の後輩にあたる田口麗斗に期待を寄せた。昨年10月にはオランダ代表、メキシコ代表との強化試合で日本代表に初招集された左腕だが、WBC出場はならず。ただ、今季はセ・リーグ3位の防御率2.43、同6位タイの9勝など、先発ローテの柱の1人として安定した投球を続けている。そんな左腕は、国際大会で活躍できる“条件”を備えているという。

今季不振の山田に期待できる、さらなる成長


第2回大会、第3回大会で外野守備・走塁コーチを担当した緒方耕一氏【写真提供=Full-Count】

「国際大会で通じる選手は、ストレートが早いに越したことはないんですけど、右腕も左腕もスライダーがいいピッチャーが選ばれているイメージがあります。松坂大輔選手(現ソフトバンク)もそうだし、ダルビッシュ有選手(現ドジャース)もそう。前田健太選手(現ドジャース)や田中将大選手(現ヤンキース)杉内俊哉選手(現読売)もですよね。そう考えると田口選手が選ばれる可能は十分にあると思います」

 身長171センチと小柄ながら、切れ味抜群のスライダーを武器に好成績を残す21歳の侍ジャパンでの躍進にも注目が集まる。

 稲葉新監督は小久保裕紀前監督の元で打撃コーチを務め、選手とも強固な信頼関係を築いていた。それだけに、まずはWBC出場メンバーを中心にチームを組むことも十分に考えられる。緒方氏は、今季、打撃不振にあえぐ山田哲人内野手(東京ヤクルト)について「それでも、彼はグラウンドに立ち続ける。素晴らしいことだと思います」と評価する。

「開幕から何か月ももがいてるけど、ヤクルトが大変な状況の中で、彼がいることで救われていると思います。彼がいなかったら、もっとチーム成績は厳しくなっているかもしれない。彼はギブアップしない。これは一番大事で、大きなところだと思います。どんなに苦しくても自分からグラウンドに立ち続けるというところはプロですよ。成績がいい時は、堂々とできて、注目も浴びて、ちやほやされる。誰でもグラウンドに立っていられるんです。でも、苦しいときに同じように立っていられるかが非常に大事だと私は思います。すごいことです」

 今季は、WBCで4番を務めた筒香嘉智外野手(横浜DeNA)も前半戦は苦しんだが、ようやく状態を上げてきた。こういった苦しみを乗り越えてきた選手が、さらに一回り大きくなり、稲葉新監督を支える。一方で、東京五輪で頂点を目指すのなら、新戦力の台頭は必要不可欠。主力選手に若手が挑んでいくという構図ができれば、チーム力は間違いなくアップするはずだ。

 主力と新戦力の“融合”を44歳の若き指揮官がどのように進めていくのか。今後も侍ジャパンのトップチームから目が離せない。

【了】

記事提供=Full-Count
写真提供=Getty Images、Full-Count

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