侍Jが世界で勝つために―岩村明憲氏が明かすヒント、鍵は「情報」と「声掛け」

2016.5.11

野球日本代表「侍ジャパン」は、昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」では準決勝で韓国に敗れ、3位に終わった。王座を奪還し、再び世界一に輝くためには、何が必要なのか。日本代表のメンバーとして2度の世界一に輝いている現BCリーグ福島ホープス監督兼選手の岩村明憲氏が、そのヒントを語ってくれた。

2度の世界一に輝いた岩村明憲氏が明かす「一番大事なもの」とは

 日本代表のメンバーとして2度の世界一に輝いている現BCリーグ福島ホープス監督兼選手の岩村明憲氏。ヤクルトからメジャーリーグに活躍の舞台を移し、ワールドシリーズに出場するなど世界トップレベルを肌で感じてきた。

 野球日本代表「侍ジャパン」は、昨年11月の「世界野球WBSCプレミア12」では準決勝で韓国に敗れ、3位に終わった。王座を奪還し、再び世界一に輝くためには、何が必要なのか。経験豊富な岩村氏が、そのヒントを語ってくれた。

――対世界と考えた時、日本は何を武器に戦うべきなのでしょう?

「日本が独自に持つすごさとして、メジャーにも負けないデータっていうのがある。これは駆使した方がいいと思うね。日本のスカウトは優秀で、外国人選手の情報を、たとえ少なかったとしても確実なものを持ってきてくれる。彼らが上げてくれるインフォメーションは一番大事なものだと思うし、有効に使った方がいい」

――対戦相手の情報をしっかり把握しておいた方がいいと。

「2年前に日米野球があった時、(元チームメイトの)ロンゴリア(レイズ)選手とゾブリスト(カブス)選手とホテルで会って話したんだよ。いろいろ話したんだけど、2人が言うには『アキ(岩村)がいた頃とメジャーの野球がちょっと変わってきている』って。何が変わったかっていうと、投手が初球から変化球を投げてくるのは珍しくないって言うんだ。真っ直ぐだけじゃない、変化球が増えてるって。

 昔はね、60~70パーセントは真っ直ぐ、あとの20パーセントがスライダーかチェンジアップだったのが、今では真っ直ぐ系の球が40パーセントくらいの割合になっている。メジャーの野球がそう変わってきたなら、それを知るインフォメーションが必要。メジャーだってバントする選手は、普通にバントするからね。セーフティ(バント)も上手いし。特に、ドミニカとか小技が上手い。賢いよね。野球の知恵があるっていうか、野球を知っている。だからこそ、対外試合は情報をしっかり取り入れながらやった方がいいと思う」

重圧かかる侍ジャパンでのプレー「あのイチローさんが胃潰瘍になるくらいだから(笑)」

――侍ジャパンのように、短期間だけ日本を代表する選手が集まる場所では、チームとしてまとまる難しさがありそうです。

「このオフに、イタリアで開催された野球のコンベンションに参加してきた。その時、音楽と一緒で、スポーツにも国境はないって、あらためて感じた。野球があるところでは、野球をすれば会話は成り立つよって。だから、国境がない同じ日本人で、同じリーグでプレーしている日本人同士は気心が知れているわけだし、あまり難しく考えない方がいい。

 俺は、食事ってすごく大事だと思っている。みんなでワイワイ食事をすれば、グラウンド上ではなかなか出さない一面が見えて、性格が分かってくる。2006年に俺が日本代表だった時も、みんなで食事に出掛けて、イチローさんも来てくれた。2009年には、俺が内野のキャプテンだったから、内野手みんなで飯に行ったよ。そこで言ったんだ。俺らが日本の内野を守っているわけだから、これは誰が欠けてもだめだし、誰が出てもみんな一緒に戦っているつもりでやろうって。みんな自分のチームのレギュラーなんだから、誰が出ても遜色はない。だからこそ、プレッシャーが掛かる状況の中で、みんながみんなの思いや痛みを分かってあげようって話をしたんだ。本当のプレッシャーっていうのは、出ている本人にしか感じられないけれど、声を掛け合おうってね」

――「侍ジャパン」に掛かるプレッシャーは期待の大きさは相当なものでしょうね。

「あのイチローさんが胃潰瘍になるくらいだから(笑)。2006年に、俺が太ももを怪我して、今江(現東北楽天)選手が代わりにサードに入った。その試合で、センターからの送球を今江選手が落としたんだよね。彼はショックで、帰りのバスで泣き崩れていた。俺はアイシングしながらバスに乗り込んだんだけど、今江選手を呼んで言ったんだ。 『おい、ゴリ、俺がサードをやっていても、あれはエラーしたよ。気にするな。しょうがない。大丈夫だ。必ずチャンスは来るから取り返せよ』って。そうしたら、キューバ戦でタイムリーを打っただろ。自分が1つのピースであるからには、そういう声掛けをしていくのもチームなんだよね」

――侍ジャパンが世界一から遠ざかっていることで、これからも大きなプレシャーが掛かりそうです。

「最後はメンタルな部分が勝敗を左右するんじゃないかな。国を背負って戦うのは本当に大変なこと。俺は、2006年より、はるかに2009年の方がキツかった。周りが『勝って当たり前』って風潮になっていたから、それを跳ね返さなければいけない。そのプレッシャーに本当に押しつぶされそうになった。俺なんか、9タコ(9打数無安打)したからね。

 この時はイチローさんも不調で、俺の成績はそこまで目立たなかったけど、気付いている人には『岩村を外せ』なんて言われてたからプレッシャーは掛かった。それでも、互いに声を掛け合いながら、チームの1つのピースとして勝つことを目指せた。プレッシャーは相当なものだと思うけれど、チームとして声を掛け合いながらやってもらいたいね」

【了】

記事提供=Full-Count

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