プロ入りより恋焦がれた“社会人代表”　忘れられない衝撃「大人があそこまで…」

ユニホームに袖を通した瞬間、全身を高揚感が駆け巡った。「ゾッとしました。今まで味わったことのないワクワクでした」。2014年に韓国・仁川で開催された「第17回 アジア競技大会」。今季まで中日でプレーした遠藤一星外野手にとっては、侍ジャパン社会人代表は野球人生最大の目標と言っても過言ではなかった。

中日で7年間プレーした遠藤一星、2014年のアジア競技大会に出場

　ユニホームに袖を通した瞬間、全身を高揚感が駆け巡った。「ゾッとしました。今まで味わったことのないワクワクでした」。2014年に韓国・仁川で開催された「第17回 アジア競技大会」。今季まで中日でプレーした遠藤一星外野手にとっては、侍ジャパン社会人代表は野球人生最大の目標と言っても過言ではなかった。

　憧れのスタート地点は、東京・駒場学園高校時代までさかのぼる。初めて現地で観戦した都市対抗野球大会の光景が衝撃的だった。スタンドを埋め尽くす大応援団。意地と意地のぶつかり合い。

「大人があそこまでガッツを出して、勝利に執着するのか」

　プロとはまた違う社会人野球の魅力に取りつかれた。

東京ガスで都市対抗野球8強入りに貢献し、社会人代表入りへ

　進学した中央大学で2学年先輩だった美馬学投手（現・千葉ロッテ）の背中を追い、同じ東京ガスに入社。4年目の2014年には都市対抗野球大会本戦に出場し、8強入りに貢献した。守備範囲の広さや俊足、思い切りのいい打撃は社会人でも指折りの存在となり、その年の秋に行われたアジア競技大会の代表に招集された。

「一番憧れていたのは、社会人野球のトップ。日本代表のユニホームなんて、なかなか着れるわけじゃない。何にも代え難い大事な瞬間でした」

　韓国に到着すると、喜びは緊張感へ。初戦の前日には、緊張感は恐怖感へ。切望していた分、重みは十分すぎるほどに感じた。主に3番を担い、遊撃だけでなく一塁も守った。「やっぱり国際大会の異様な雰囲気はありましたね」と振り返るが、バットの頼もしさは変わらなかった。出場した4試合で打率.385をマーク。直後のドラフト会議で、プロへの扉が開いた。

NPB入り果たすも「社会人日本代表になるというのが一番だった」

　誰もが目指すNPBの舞台。ただ、遠藤外野手の心持ちは少し違った。

「絶対にプロという考えはなかったんです。社会人日本代表になるというのが一番だったので、もし選ばれていない状態でドラフト指名されていたら、すんなりプロに行けていなかったかもしれません」

　夢を叶えたからこそ、心置きなく新たな環境に飛び込めた。

　中日では3年目に内野手から外野手に転向。2019年にはキャリア最多の108試合に出場し、打率.270、2本塁打、11打点をマークした。2020年も守備固めや代打などで65試合に出場したが、今季は1軍出場ゼロ。10月に戦力外通告を受けた。

　表情は、思った以上にすっきりしている。

「本当に人に恵まれました。このタイミングで戦力外になったのも、何か意味があるんだと思います」

　中日での7年間も、社会人での4年間も、学生時代も。歩んできた野球人生に、堂々と胸を張る。

記事提供＝Full-Count
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