元日本代表・ENEOS大久保秀昭監督が提言する「社会人代表」の価値の高め方

2020.11.23

2018年7月、台湾で開催された「第6回 FISU世界大学野球選手権大会」。当時、慶応大学で指揮を執っていた大久保秀昭監督(現ENEOS監督)は侍ジャパン大学代表監督に任ぜられ、久しぶりに日本代表のユニホームに袖を通した。日本代表として銀メダルを獲得した1996年以来、22年ぶりに日の丸がついたユニホームを身にまとい、「やっぱり感動するし、嬉しいものですよね。久しぶりにワクワク感がありました」と振り返る。

写真提供=Full-Count

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2018年に大学代表監督として22年ぶりの代表ユニホーム「ワクワク感がありました」

 2018年7月、台湾で開催された「第6回 FISU世界大学野球選手権大会」。当時、慶応大学で指揮を執っていた大久保秀昭監督(現ENEOS監督)は侍ジャパン大学代表監督に任ぜられ、久しぶりに日本代表のユニホームに袖を通した。日本代表として銀メダルを獲得した1996年以来、22年ぶりに日の丸がついたユニホームを身にまとい、「やっぱり感動するし、嬉しいものですよね。久しぶりにワクワク感がありました」と振り返る。

 大久保監督が日本石油(現ENEOS)の捕手だった当時、日本代表はアマチュア選手のみで構成され、文字通りアマチュア野球界のトップが集う憧れの場所だった。

「当時はプロ野球と同じくらい、代表になることに魅力があったんです。当時、一緒にやっていた選手たちが日本代表にいく中、自分もそこを目指して代表の一員になりたいという思いを持ってプレーしていました。バルセロナからアトランタに向かっていく時に、センターラインを固めていく上で、当時の川島(勝司)監督にメンバーに選んでいただいて、自分の夢や目標に近づいた。でも、そこで満足することなく、アマチュアの最高峰で世界の野球を見たい、メダルを獲りたいという気持ちが強くなりました」

 周囲からは国の代表を名乗るに相応しい活躍や結果が求められ、選手には大きな期待が寄せられる。「チームとして本当に負けられない、絶対にメダルを獲らないといけない、予選リーグで敗退しようものなら日本には帰れない、くらいに精神的に追い込まれるというか、極限状態でやっていた集団でしたね」というほどの緊張感はあったが、そこにこそ「本当に世界の野球を経験できる、貴重なトップが集まる場所」=「日本代表」をアマチュア選手が目指す価値があったという。

社会人代表は「選手がワンランク上がるような場所であってほしい」

 時は経ち、野球日本代表「侍ジャパン」はプロ選手で構成されるトップチームを筆頭に、社会人代表、U-23代表、大学代表、高校代表、アンダー世代とカテゴリー分けされ、社会人代表が目指す最大の国際大会はアジア競技大会となった。2018年の「第18回 アジア競技大会」では銀メダル、そして2019年の「第29回 BFAアジア選手権」でも2位と奮闘しているが、大久保監督は他のカテゴリーに比べて社会人代表の活躍やその価値が十分に伝わっていないのではないか、というもどかしさを感じているという。

「稲葉ジャパンはもちろん、大学代表、高校代表と比べても、社会人代表の情報があまり表に出てこなくて注目されづらい状況にあると思うんですよね。注目を集めるには、社会人代表の価値や魅力を高めることが一つだと思います。例えば、社会人代表を大会毎に結成する“にわか”チームではなくて、時間をかけて作り上げるチームにしてもいい。僕らの時は4年間かけて作ったチームだったので、余計に日の丸を背負って戦うという思いがチームでも個人でも強まりました。当時チームメートだった杉浦(正則)さんは日本代表であることに価値を感じて、プロには行かず9年、代表への思いを持ち続けた。社会人代表となった時に、責任感も含め、選手が技術的にも精神的にもワンランク上がるような場所であってほしいと思います」

各国代表やプロと交流試合ができるように…「プロを目指すことが全てではない」

 社会人野球では機会の少ない国際経験を積めることが、社会人代表に選ばれる意義の一つだ。一方、近年では台湾で開催されるアジアウインターリーグにJABA(日本野球連盟)選抜として出場し、リーグ戦を戦える機会もできた。こういった国際経験と、侍ジャパン社会人代表として得られる国際経験を差別化するためにも、大久保監督は次のようなアイディアを提言する。

「WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC™)に出場する各国代表チームと親善試合ができるとか、プロと交流試合や壮行試合ができるとか、侍ジャパン大学代表と試合をします、というのでもいいと思います。そうすることで、選手個々のモチベーションも上がりますし、社会人野球全体の底上げにもなる。プロを目指すことが全てではなく、世界とも対戦するチャンスがあるからトップ社会人であり続けることが楽しいという選手が出てきてもいいのかな、と。プロ野球ファンや大学、高校野球ファンにも『社会人はさすがだな』と思ってもらえる機会にもなると思うんですよね」

 日の丸がついたユニホームを着るワクワク感を知るからこそ、国を代表して戦うことの緊張感を知るからこそ、そして、社会人野球のレベルの高さを知るからこそ、社会人代表がさらに魅力的になるように投げかけられたアイディア。代表のみならず社会人野球がより価値あるものとして輝くヒントが隠されていそうだ。

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