5度目のW杯出場は「目指します」 女子代表・川端友紀が特別な価値を置く場所

2020.10.5

4大会連続出場し、そのたびに優勝を飾ってもなお、川端友紀内野手(エイジェック)には特別な価値を置き、憧れ続ける場所がある。それが「WBSC女子野球ワールドカップ」だ。

写真提供=Full-Count

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女子W杯に4大会連続出場、主力選手として6連覇に大貢献

 4大会連続出場し、そのたびに優勝を飾ってもなお、川端友紀内野手(エイジェック)には特別な価値を置き、憧れ続ける場所がある。それが「WBSC女子野球ワールドカップ」だ。

 川端選手は日本代表に初選出された2012年、カナダで開催された「第5回 IBAF女子ワールドカップ」に出場。そこで世界の頂点に立って以来、2018年「第8回 WBSC女子野球ワールドカップ」でマドンナジャパンが6連覇を遂げるまで、4大会にわたって主力選手としてチームを牽引し続けた。

「日本の女子野球選手にとって、ワールドカップ(W杯)が憧れの舞台であることは変わりないと思います。女子野球では世界と戦える機会がなかなかありません。その中で、世界と戦ってみたい、W杯に出たいという選手は多いと思います」

 小学生の頃、のちにプロ野球選手となる兄・慎吾内野手(東京ヤクルト)の影響で野球を始めた川端選手は、中学に入学するとソフトボールに転向。高校、社会人では投手として活躍したが、2009年に日本女子プロ野球機構が開催した第1回合同トライアウトを受け、女子プロ野球選手としてのキャリアを歩み始めた。

 京都アストドリームスに入団すると、遊撃手として1年目から活躍。特に打撃は天性のセンスを発揮し、2年連続で首位打者に輝いた。プロ3年目を迎えた2012年、そんな川端選手が日本代表に選ばれたのは自然の流れだった。

「それまで女子プロ野球の世界は知っていても、社会人や大学生、高校生といったアマチュアの選手とはなかなか試合や交流をする機会がなかったので、いろいろな選手とプレーできることがすごく新鮮でしたね。当時は私も若手の方だったので、先輩方と一緒にプレーするのも緊張しましたし、初めての世界大会で日の丸がついたユニホームを着て戦うことも緊張したのを覚えています」

刺激を受けた六角彩子との出会い「この子と一緒に野球をするのはすごく楽しい」

 初めて一緒にプレーする選手が多い中、川端選手が大いに刺激を受けたのが、女子硬式野球クラブチーム侍から選ばれた六角彩子内野手(現埼玉西武ライオンズ・レディース)だったという。

「私より2つ年下なんですけど、本当に野球を楽しんでいて、心から野球が好きなんだっていうのがプレー全面に表れているんです。初めて一緒にプレーした時に『この子と一緒に野球をするのはすごく楽しいな』と思ったことが、すごく印象に残っていますね。この前、試合をする機会があったんですけど、今でもあの姿勢は変わっていません。普段から仲良くしています」

 4大会を経るにつれ、立場は若手からベテランに移り変わった。最後に出場した2018年はチーム最年長となり、改めて代表ユニホームに袖を通す責任やプレッシャーを痛感。当時の様子をこう振り返る。

「初めて出場した時はそこまで考える余裕がなくて、とにかくチームに貢献しようと無我夢中に先輩についていっただけでした。でも、回を重ねる毎に自分が上の立場になり、前回は最年長。全然違う立場を味わって、チームを引っ張っていかないといけないという責任感やプレッシャーを感じながら、プレーしていました」

 所属チームで主将を務めたこともあるが、本来はプレーで引っ張っていくタイプ。「言葉にするのはあまり得意じゃなくて」というが、日本代表で接した先輩の姿から学び、成長に繋げた。2018年のワールドカップでは、主将の出口彩香内野手(埼玉西武ライオンズ・レディース)をサポート。若手選手がチームに溶け込みやすい環境を作ろうと、積極的にコミュニケーションを図った。

4大会を通じて感じる世界のレベルアップ「気の抜けない試合が増えました」

 その結果、マドンナジャパンはW杯6連覇という偉業を達成し、世界に女王たる姿を見せつけた。女子野球界で日本代表は、向かうところ敵なし、というイメージが強いが、勝ち続けているから感じるプレッシャーもあるし、「勝てて当然」という心の隙が生まれた瞬間、足元をすくわれかねない。

「野球は最後まで何があるか分からないスポーツ。絶対、ということはありません。しかも、代表チームは毎回メンバーが入れ替わり、新しいチームとしてスタートする。それは日本だけじゃなくて、世界も同じですごい選手が出てくるかもしれない。だから、監督やコーチには準備の大切さを口酸っぱく言われてきましたし、その通りだと思っています」

 同時に、4大会を戦う過程で世界各国の急速なレベルアップを肌で感じた。当初は「本当に強いのはアメリカだけという感じだった」が、2018年には「アメリカより強いチームも出てきて、気の抜けない試合が増えました」という。事実、2018年にコールド勝ちしたのは2試合のみ。キューバ戦では先制され、「かなり危ない橋を渡りました」と苦笑いする。

 それでも、女子野球の発展という視点で見ると、世界のレベルアップは大きなプラス要素だ。川端選手も「海外には足が速かったり、パワーがすごかったりする選手がたくさんいる。彼女たちがしっかりした指導を受け、練習をして、レベルの高い野球をしたら本当に怖い存在になるので楽しみですよね」と笑顔を見せる。

「子どもたちが目標にしてくれるからこそ、女子野球そのものが成長していける」

 ソフトボールをしていた中高生時代、日本代表選手に憧れ、いつかオリンピックに出たいと思っていた。今、日本代表でプレーする女子野球選手として、子どもたちの目標になる存在でありたいと願う。

「ソフトボールであっても野球であっても、日本代表は夢の舞台だし、目標であるべき。子どもたちが目標にしてくれるからこそ、女子野球そのものが成長していけるんじゃないかと思います。そのためにも私たちが、カッコよくて、強くて、目標にしたい、と思われるような存在でいたいという責任は感じていますね」

 今年もまた11月12日から9日間の日程で、メキシコを舞台に「第9回 WBSC女子野球ワールドカップ」が開催される予定だ(10月5日現在)。代表入りを目指すか問われた川端選手は、笑顔を見せながら力強く「目指します」と言った。

「現役をやっているからには、一番高いレベルでプレーしたい気持ちはある。体が動くうちは目指し続けます。楽しいですし、世界の舞台でいろいろな選手を見るとすごく勉強になりますから。また出場したいですね」

 5大会連続出場・連続優勝を目指し、川端選手の挑戦は続く。

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