U-15代表は「一足早い高校野球」 “日本一足の速い男”が辿る中学3年生の記憶

2020.9.28

2013年8月、全日本中学校陸上選手権大会(全中)の100メートルと200メートルで、あのサニブラウン・アブデル・ハキーム選手を破り、2冠を達成した男がいる。その男こそ、中央大学硬式野球部で副主将を務める4年生・五十幡亮汰外野手だ。

写真提供=Full-Count

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短距離全国1位の五十幡選手と、走り高跳び全国2位の藤平選手が出会った場所とは

 2013年8月、全日本中学校陸上選手権大会(全中)の100メートルと200メートルで、あのサニブラウン・アブデル・ハキーム選手を破り、2冠を達成した男がいる。その男こそ、中央大学硬式野球部で副主将を務める4年生・五十幡亮汰外野手だ。

 現在、100メートル走の日本記録保持者でもあるサニブラウン選手に勝ち、「日本一速い中学生」と呼ばれた当時も、本職は野球だった。同年11月にはU-15日本代表として「15U アジアチャレンジマッチ2013」に出場し、藤平尚真投手、石原彪捕手(ともに東北楽天)らとともに3戦全勝で優勝を飾った。

「藤平とは代表で一緒になる前に対戦したんですが、当時から144キロとか投げていて『中学生でこんなピッチャーがいるのか』と。藤平は走り高跳びで全中2位、自分は短距離で全中1位で、陸上でも全国トップという点では繋がる部分もあった。それがきっかけで仲良くなったのを覚えています」

 同じ関東勢としてもすぐに意気投合した2人だが、五十幡選手の印象に残っているのは、むしろ石原選手ら関西勢から受けた威圧感だ。

「集合場所のソファーに5、6人で陣取って『お前どっから来たんや?』と(笑)。お互い中学生で、舐められたらいけないというのもあったと思います。最初はビビりましたが、一緒にやると彼らの方が野球に対する気持ちはずっと強い。最終的にはお互い認め合って、いいチームになりました」

小柄ながら同世代では短距離日本一、実力を疑う視線の中でひと走り「お前、ヤバいんだな」

 同世代でトップクラスのメンバーが互いを認め合っていく過程では、印象深い場面もあった。当時から“日本一の足”が武器だった五十幡選手だが、他のメンバーと比較すると体格は圧倒的に小柄だった。実力を疑う視線を感じる中、アップでひと走りしてみせると、たちまち周囲の見る目が変わったという。

「みんなよりずっと小柄で華奢だったので、『本当に速いのかよ?』と言われてたのが、『お前、ヤバいんだな』に変わったんです。捕手の石原も『五十幡のこと、刺したいな……』と言っていました。そういえば、石原とは結局勝負していないままですね。自分もゆくゆくはプロに入って、あの時の決着をつけてみたいです」

 あれから7年が経つが、当時のメンバーの中には今も連絡を取り合う仲間もおり、プロに進んだ藤平選手や石原選手の活躍は大きな刺激となっている。五十幡選手にとって、U-15代表とはどのような場所だったのか。

「一言でいえば、一足先に高校野球を経験できた場所でした。シニアやボーイズでは、どこでもチーム内に実力差がありますが、代表は本当に高いレベルを経験できる。あと、だいたい進学先が決まっていて、お互いに入学する高校名で見られます。横浜にいく選手、日大三の選手、大阪桐蔭から声がかかった選手。そんな甲子園常連校で早くからレギュラーになるようなメンバーが、すでに高校の看板を背負いつつお互いを認め合う機会でした。今、中学生の子もU-15代表に選ばれたら、楽しみながら自信を持ってプレーしてほしいですね」

 一足先に陸上界で注目を浴びていた五十幡選手が、野球人としての自信を手にした場所。それがU-15代表チームだった。五十幡選手がそうだったように、この先もU-15代表に選ばれた中学生は自信と経験を深め、高校野球という次のステップを踏み出すための登竜門のような場所であり続けるだろう。

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