「強くなるってこういうこと」 元U-18代表コーチが語る、侍ジャパン全体の相乗効果

2020.9.21

今年9月に台湾・高雄で開催が予定されていた「第13回 BFA U18アジア野球選手権大会」(以下、アジア選手権)。コロナ禍により12月20日に開幕が延期されたが、2大会ぶりの優勝を狙う野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表の目標は変わらない。それでは、世界と戦う上で最も大切なことは何なのか。2016年、2017年と2年連続でU-18代表コーチを務めた関東第一高校の米澤貴光監督は、世代を超えた侍ジャパン全体の協力の意義を語る。

写真提供=Full-Count

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2016、17年に代表コーチに就いた関東一高・米澤貴光監督が考える世界と戦うカギとは

 今年9月に台湾・高雄で開催が予定されていた「第13回 BFA U18アジア野球選手権大会」(以下、アジア選手権)。コロナ禍により12月20日に開幕が延期されたが、2大会ぶりの優勝を狙う野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表の目標は変わらない。それでは、世界と戦う上で最も大切なことは何なのか。2016年、2017年と2年連続でU-18代表コーチを務めた関東第一高校の米澤貴光監督は、世代を超えた侍ジャパン全体の協力の意義を語る。

「自分は初めての代表で、監督だった小枝(守)さん、同じくコーチの大藤(敏行)さんはじめ、多くの方に気を遣っていただきました。代表で何より大切なのは、選手のスイッチを入れてあげること。特に高校生は甲子園の直後で、なかなか気持ちが入らない面もある。そこで自分からスイッチを入れられる選手の存在は本当に大きい。他のメンバーにもいい影響を与えますから」

 中でも記憶に残っているのが、2016年にU-18代表として「第11回 BFA U18アジア選手権」を戦った鈴木将平外野手(埼玉西武)、九鬼隆平捕手(福岡ソフトバンク)、佐藤勇基内野手(法政大学)のエピソードだという。

「あの年はなかなかリーダーシップを取れる子がいなかったが、鈴木は合流してすぐに『走塁のアドバイスを下さい!』と僕のところにやってきた。翌年の藤原(恭大・千葉ロッテ)もそうでしたが、最初の一歩に貪欲な印象がありましたね。九鬼のリードは本当に王道で、まさに『そこでそれを求めるよね』というリード。ベンチとしても非常に準備がしやすかった。佐藤は本当に理解力が高くて『このピッチャーだとこっちにボールが飛ぶから、この辺を守ろうか』と伝えると、すぐに対応してくれた。短期間でここまで理解できる高校生がいるんだな、と感心した記憶があります」

大学代表との壮行試合、全力のアメリカなど、上のレベルの相手と戦う意義

 翌年、カナダで行われた「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」に臨んだ代表メンバーの方が、野手陣を筆頭に個々の能力では2016年のメンバーを上回っていたというが、前年の方がより力を発揮できた要因は何だったのか。米澤監督は、2017年は日程の都合により行われなかった大学日本代表との壮行試合の効果を挙げる。

「壮行試合は非常にありがたかった。2016年は、あの試合で柳(裕也・中日)君や佐々木千隼君(千葉ロッテ)といった大学でもトップクラスの選手に、手も足も出ないくらいコテンパンにされて、選手の目の色が変わった。ああ、強くなるってこういうことなんだと(思いました)」

 世代を超えた侍ジャパンの協力体制は、広く日本野球界の底上げ、レベルアップにも繋がっていく。

「高校生でトップレベルの子たちにとっても、より上のレベルを知ることは大きな糧になる。それは国内だけでなく、世界大会でも同じこと。2017年は正直、アメリカが本当に強かった。オコエ(瑠偉・東北楽天)の時も、それより前の松井裕樹君(東北楽天)の時も見ていましたが、想像していたものと大分違うなと。2017年からアメリカも、地域ではなく全米から選手を集めて、本気で勝ちに来るようになった。U-18に対する各国の位置づけが変わってきたということでしょう。この先は日本にとっても、レベルが測れない相手との戦いになっていく。ただ、勝つにせよ負けるにせよ、強いレベルの相手と戦うというのは、本当に意義のあること。あの時のメンバーが今、プロで活躍してるのはうれしくもあり、誇らしくもあります」

 同世代から刺激を受けるだけではなく、上の世代のトップ、さらには世界のトップを相手に自らの力量を知ること。それこそが、世代のトップを走り続けてきたU-18代表選手たちにとって、何よりも大きな成長の糧になる。

 各都道府県大会を勝ち抜いた猛者が集まる甲子園がなかった今年、上のレベルを知ることのできるアジア選手権は、より一層の意義を持つ大会となるに違いない。

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