「プレミア12」で光った存在感 ルーキー甲斐野央が国際大会で得た経験と手応え

2019.12.9

11月に行われた「第2回 WBSC プレミア12」で世界一に輝いた野球日本代表「侍ジャパン」。稲葉篤紀監督率いるチームで勝利の方程式の一角を任されたのは、ただ1人ルーキーで招集された甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)だった。

写真提供=Full-Count

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プロ1年目に貴重な経験「日本一を味わえて、世界一も味わえて」

 11月に行われた「第2回 WBSC プレミア12」で世界一に輝いた野球日本代表「侍ジャパン」。稲葉篤紀監督率いるチームで勝利の方程式の一角を任されたのは、ただ1人ルーキーで招集された甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)だった。

 10月1日に代表メンバー28人が発表された当初、甲斐野投手の名前はなかった。松井裕樹投手、森原康平投手(ともに東北楽天)、千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)の出場辞退に伴い追加招集されたのだが、大会が進むにつれてチームからの信頼度は上昇。セットアッパーを任され、5試合に投げて防御率0.00で2勝をマークし、山本由伸投手(オリックス)、山崎康晃投手(横浜DeNA)とともに盤石の必勝リレーを繋いだ。

 2019年は在籍する福岡ソフトバンクで日本一に輝き、侍ジャパンでは世界一になった。「日本一を味わえて、世界一も味わえて、プロ1年目でこんなことを経験できるなんてなかなかないことなので、すごく幸せでした」。ルーキーイヤーから得ることができた貴重な経験に、この上ない充実感を感じたようだ。

 大学代表の経験はあったが、トップチームに選ばれたのは初めてだった。周りを見渡せば日本球界を代表する選手がズラリと並ぶ。「めちゃくちゃ不思議でしたね。テレビで見たすごい人がいっぱいいて、僕がマウンドに立って投げているというのは違和感しかありませんでした」と、当初は自身が代表チームにいる実感が沸かなかったという。

対戦の中で感じた日本と世界の違い「詰まっていても芯で打っているんじゃないか、と」

 日本シリーズが終わったのは10月23日。甲斐野投手の追加招集が発表されたのは、その翌日のことだった。激闘を終えて疲労も感じていたが、迷わず招集オファーを受け入れた。「追加招集とはいえ、日の丸のユニホームを着たいという思いは、もちろんありました。もし日本シリーズの時に体の状態が良くなければ辞退するつもりでしたけど、状態は良かったですし、体も問題なかった。人生に1回しかないかもしれないので行くべきだ、いい経験になると思って行きました」。そして、トップチームで念願の日の丸がついたユニホームに袖を通したルーキー右腕は、大舞台で強烈なインパクトを残した。

 戦いを重ねる中で感じた日本と世界の違いもあったという。それは、パワーと技術だ。「詰まっていても(バットの)芯で打っているんじゃないか、というような打球でしたね。特に(高橋)礼さん(福岡ソフトバンク)が先発した米国戦を見ていて思いましたね」と、北中米の打者が持つパワーに驚かされた。同時に、「外国の打者はミスショットがある。日本のプロのバッターはすごいです。簡単に三振してくれたら助かりますけど、そうはいかない。日本の打者はミスショットがないイメージです」と、改めて日本の打者が持つ技術の高さに気付かされた。

「プレミア12」でも生きた武器のフォーク「縦の変化は効きましたよね」

 海外の打者との対戦で有効だったのは、甲斐野投手が武器とするフォークだった。「初めて対戦するバッターが多いので、縦の変化は効きましたよね」と振り返る。大会で使用されたWBSC公式球もプラスに働いた。NPB公式球より「縫い目が高く、曲がりやすくて、落ちやすい。フォークもプロ野球で投げているよりも落ちていたので、感触は良かったです」と相性は抜群。2020年も国際大会ではWBSC公式球が使用される見込みで、フォークを投げる投手の多い侍ジャパンにとっては好材料となりそうだ。

 侍ジャパンでは、様々な捕手とバッテリーを組むことになる。「プレミア12」では、同じ福岡ソフトバンクでプレーする甲斐拓也捕手の他に、會澤翼捕手(広島東洋)や小林誠司捕手(読売)にボールを受けてもらった。短期間でのコンビ結成に当初は不安も感じていたというが、いざマウンドに立つと違和感はなかった。

「會澤さんも誠司さんも長くプロでやっておられる方なので、すごく自分のことを分かってくれていました。データとか性格も見て、その人に合った配球をしてくれる。ものすごく勉強されていたと思うので、シーズン中と同じような投げやすさがありました。拓也さんがアドバイスしてくれた部分もあると思いますが、難しいと思っていたことが実は難しくなかったですね」

 プロ1年目で侍ジャパンの一員として戦い、世界一の頂点に立った。ここで得た経験は、プロ野球選手としてのキャリアを歩き始めたばかりの甲斐野投手にとって大きな糧となるに違いない。

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