侍ジャパンを率いる小久保監督の素顔・後編 森脇浩司氏が送ったアドバイスとは
指導者として新たに踏み出した挑戦に大きな期待を寄せているのが元チームメイトであり、今でも師弟関係が続く森脇浩司氏だ。小久保監督をよく知る同氏は「安心してチームを預けられる」と明言する。
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森脇浩司氏から見る「小久保裕紀」
今、日本球界で最も期待されている指導者の一人、野球日本代表「侍ジャパン」を率いる小久保裕紀監督。現役時代は福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークスでプレーし、通算2057試合に出場、2041本の安打を放ち、打率.273、1304打点、413本塁打と輝かしいキャリアを残した。
指導者として新たに踏み出した挑戦に大きな期待を寄せているのが元チームメイトであり、今でも師弟関係が続く森脇浩司氏だ。小久保監督をよく知る同氏は「安心してチームを預けられる」と明言する。森脇氏が見てきた小久保裕紀とは――。その素顔を森脇氏が語った。
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ここまで侍ジャパンの監督として十分な時を過ごしていると感じている。日本を代表する選手たちは個々にトップレベルの力を持っている。小久保監督には彼らが力を存分に発揮できるような環境作りが求められるが、試合前の練習を含め、十分過ぎる準備を整えて決戦に挑んでいるのが、試合を通じて感じ取ることができる。
プロ野球12球団の監督とはまた違った難しさがあるのが代表チームの監督だろう。143試合、長丁場のペナントは一戦一戦の中で先を見据えて戦っていくことが求められるが、ある意味負けたら終わりの国際大会は「一瞬の決断力」が求められる。
私もこれまで複数の球団でコーチ、監督を務めCS(クライマックスシリーズ)、日本シリーズといった短、中期決戦を多く経験させて頂いた。あまり先を見ない、目の前の一戦をいかにして勝つか。その試合の勝敗を分けた決断力がクローズアップされる。つまり、決断の連続なのだ。これが短期決戦の特徴だろう。
森脇氏が伝えた「決断力」の大切さ
その点、小久保監督は自らが足を運び選出した選手、そしてコーチ陣に全幅の信頼を置き、物事を進めている。
試合中、時には予期せぬ想定外の出来事にも動じることなく堂々とした姿を見せている。就任当初は「指導者の経験がなく日本代表の監督が務まるのか?」という意見も少なからず聞こえていた。だが、私はここまで強化試合、世界野球WBSCプレミア12などを見る限りあまりそうは感じない。小久保の監督就任が決まった時に顔を合わせてじっくり話す機会があったが、その時に見せた表情に偽りはなかった。
当時、福岡で会食をした際には清々しい顔で野球界のことも含め色々と話をした。私からはアドバイスではないが「決断力。自分を信じる。そして何事においても観察することが必要、その観察がタイムリーなコミュニケーションにつながる」と伝えた。
選手、コーチを信じ、その上で自分を信じる。ペナントのように先々のために種をまく戦い方はできない。本戦が始まれば負けたら終わりの1戦を勝っていくしかない。常に決断の連続だと。
私から言わなくても、小久保監督自身分かっていた。彼がプロセスを踏んでいく中で準備を怠ることはあり得ないからだ。
森脇氏が見る小久保監督の“長所”とは
侍ジャパンとしての目標は世界の頂点に立つことだろう。小久保監督自身もその目標に向かって動きを止めることなく突き進んでいるに違いない。
だが、私はそれと同時に今後の侍ジャパンも見据えていると思っている。
現在、侍ジャパンの組織はU-12からトップチームまで「日本代表」がカテゴライズされている。野球界の将来を考えればこれほど素晴らしいことはない。野球界のことを一番に考える小久保監督だけにNPBを含めた、揺るぎない組織作りを何とか確立させたいという思いがあるだろう。
強い使命感を持ち、それだけの期待にも応えるだけの器をもっている。彼の長所、特技に「言葉で人を動かすことが出来る、逆境でも常に平常心を保ち、的確な判断ができる」というものがある。安心してチームを預けられるのではないだろうか。
そして、代表選手は小久保監督と過ごした貴重な時間を今後に生かし、自チームに戻った際には若い選手にも伝えてもらいたい。それが未来永劫、侍ジャパンの存在価値を高めていくことになるだろう。
◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。55歳。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。178センチ、78キロ。右投右打。
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