世界2位に輝いた侍ジャパンU-15代表、鹿取監督が振り返る収穫と課題【前編】
侍ジャパンU-15代表は今夏、初の日本開催となった「第3回 WBSC U-15ベースボールワールドカップ2016 in いわき」(7月29日開幕、福島・いわき市)に出場し、銀メダルに輝いた。前回大会(2014年メキシコ開催)の7位を上回る最高成績を達成。しかし、選手たちの中には悔し涙を流す者も多く、その姿こそが次のカテゴリーへの力になっていく。チームを率いた鹿取義隆監督はそんな若き侍戦士たちの戦いぶりをどう見たのか。また、準優勝という結果で何が見えたのか――。指揮官に話を聞いた。今回は前編。
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今夏のワールドカップで銀メダル、若き戦士たちは何を得たのか
侍ジャパンU-15代表は今夏、初の日本開催となった「第3回 WBSC U-15ベースボールワールドカップ2016 in いわき」(7月29日開幕、福島・いわき市)に出場し、銀メダルに輝いた。決勝戦でキューバに9-4で敗れたものの、前回大会(2014年メキシコ開催)の7位を上回る最高成績を達成。しかし、選手たちの中には悔し涙を流す者も多く、その姿こそが次のカテゴリーへの力になっていく。チームを率いた鹿取義隆監督はそんな若き侍戦士たちの戦いぶりをどう見たのか。また、準優勝という結果で何が見えたのか――。指揮官に話を聞いた。今回は前編。
――予選リーグで勝利したキューバに敗れ、惜しくも2位で大会を終えました。この成績をどのように受け止めていますか?
「銀メダルは胸を張っていい成績だと思います。見ている方々は日本開催、決勝進出までしているので優勝という期待もあったと思う。ただ、そこにはフィジカル的に劣っている部分があった。キューバとは予選リーグ2戦目で戦い、4-0で勝ちはしたが、その時、相手選手は時差ボケや体調を壊していた選手が多く、状態はベストではなかった。それから体調が戻り、予選の後から彼らは打ち出した。力が戻り、最高の状態で勝ち上がってきた。日本に対しても2戦目で負けていたからやる気になっていた。強くなっていたと感じました」
――15歳以下といえども、世界屈指の野球国・キューバ代表との力の差は感じていたのでしょうか?
「キューバとの1戦目に先発した及川(雅貴)が2回目の対戦では全く通用しなかった(※及川は予選のキューバ戦で7回4安打無失点で勝ち投手に。決勝戦は1回1/3を投げ6安打5失点で負け投手となった)。投げた本人もショックはあったと思う。いいコースに投げていたけど、すべてセンター返しをされた。及川は140キロを超える力強い直球を投げ、素晴らしい素材の投手。しかし、この日に限っては少し球が高かった。キューバにとって打ちやすいボールになってしまった。
他のチームだったら、打たれていなかったと思う。キューバは右打者も左打者もセンター返しを徹底していた。ただ及川でなくても誰が投げても、点を取られていると思う。それくらい(決勝の)キューバは違うチームになっていた。選手たちもキューバの変化に驚いたはず。我々も『えっ、あの選手が?』と大きく変わっていた選手も2、3人いた。体調管理は大事なことだなと感じました」
日本が世界で勝つために必要なことは
――キューバはどのカテゴリーでも日本のライバルになっていきます。この準優勝の経験を生かし、上にいかなくてはいけません。必要となってくることは何でしょうか?
「一番は投手力を上げていくこと。フィジカルの差を埋める手段としてはそこになる。試合では隙を突かれ、重盗されたシーンもあった。ベンチでも注意をしていたけれど、試合になると忘れてしまうし、なかなかすぐに反応できなかった。その場面は試合の2イニング目だった。我々としても『そのケースで(重盗を)仕掛けて来るか?』というようなところで足の速いランナーが盗塁をしてきた。
意外だったが見事なプレー。及川はセットポジション、クイックも問題ない投手。ただ走者が二塁になると少し遅くなるところ突かれたのかもしれないし、連打され、マウンドで色々考えているところで相手は盗塁をやってきた。本人も『アレ?』と思っていた時だった。及川はこれからもトップレベルでやっていける選手なので良い経験になった。そういう対応力を磨いていくと思います」
――エースの及川雅貴投手を中心に守りの良いチームでした。大会を通じて、選手たちの成長も感じ取れた部分はどのようなところにあったでしょうか?
「捕手のキャッチングが特にうまくなっていった。ワンバウンドのボールの捕球などがそう。野口(海音)と星子(海勢)は、最初は捕れなかった球もあったが、前よりもうまくなっていた。暴投や捕逸などバッテリーミスで失点することが前の大会で非常に多かった。今回は前に比べれば少なかったような気がします」
――メンバー選考から守備の基本動作を重視していましたが、実際の選手たちの守備レベルはいかがでしたか?
「内野手たちもうまかった。二塁手の田口(夢人)も、遊撃手の近藤(大樹)も、一塁手の嘉手刈(将太)も三塁手の鈴木(琉晟)も、投手と三塁の兼務だった小山(翔暉)もみんなうまくなった。外野の選手も同じ。全体的に守備力は良いと思っていた上で大会に入ったが、よりうまくなっていった。このチームのテーマは『守り勝つ』と決めていた。それに関しては十分にできた。目立った失策も少なかった」
「守り勝つ野球」の象徴となった試合とは
――そのテーマの「守り勝つ」野球については、選手たちには言葉などで浸透させたのでしょうか?
「もちろん。大会に入る前の合宿のミーティングで話をしました。前回は失策からの失点が多かった。ベースカバーに行かなかったり、多少の失策があったりしたが、守備のレベルは高くなっていると感じました。スコアを見ると得点が多いようにも見えるが、ストライクがなかなか入らない相手投手なども多く、もらった点という印象の方が強い。全体の得点の3分の1は失策と暴投でもらっている。その反面、失策をせずに守り切って、0点の試合をした回数が多いというのは、守り勝つ野球ができたということです」
――守り勝った印象の強い試合を挙げるとするとどの試合になりますか?
「2-1で勝ったパナマ戦の9回の守備。1死二、三塁という一打同点のピンチでパナマの4番・アグラサルが右前に抜けそうな鋭い打球を放った。二塁手の田口が横っ飛びして好捕し、打者走者をアウト。三塁走者はスタートしていなかった。さらに2死二、三塁。5番のJ・ゴンサレスも田口がグラブを出して倒れこみながら捕球し、即座に一塁へ送球。それでゲームセット。ナイスプレーだった。
ここで勝たなければ、決勝リーグに行けなかったので、チーム力をより強く高めた試合だった。しびれた試合だった。その前日の米国戦に敗れたが、米国選手は日本がパナマ戦で見せたような粘り強い野球をしていた。泥臭くやってきた。その米国戦に負けた悔しさが、この試合に出たのだと思います」(後編に続く)
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