大学代表の2大会制覇を主将として牽引 早稲田大・印出が国際大会で得たかけがえのない経験

2025.1.20

印出太一捕手は早稲田大の主将として、2024年の東京六大学野球リーグで春秋連覇を達成した。夏には野球日本代表「侍ジャパン」大学代表の主将も務め、チェコで行われた「第43回プラハベースボールウィーク」(7月6-9日)を4戦全勝、オランダでの「第31回ハーレムベースボールウィーク」(同12-19日)を7戦全勝と、無傷の11連勝で、2つの国際大会を制した。長期にわたった欧州遠征の“舞台裏”を振り返る。

写真提供=Full-Count

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主将・捕手として早稲田大と大学代表を優勝へリード

 印出太一捕手は早稲田大の主将として、2024年の東京六大学野球リーグで春秋連覇を達成した。夏には野球日本代表「侍ジャパン」大学代表の主将も務め、チェコで行われた「第43回プラハベースボールウィーク」(7月6-9日)を4戦全勝、オランダでの「第31回ハーレムベースボールウィーク」(同12-19日)を7戦全勝と、無傷の11連勝で、2つの国際大会を制した。長期にわたった欧州遠征の“舞台裏”を振り返る。

 印出捕手にとって2024年は、栄光に包まれた1年だった。プロ野球ドラフト会議で指名されなかったことは残念だったが、昨夏に社会人野球の最高峰「第95回都市対抗野球大会」で初優勝を飾った三菱重工Eastへの入社が決定。年明けの1月6日から、横浜市内にある専用グラウンドでの練習に参加している。

カップ麺を10個持参も苦労した海外での食事「耐えるしかない時も…」

 そんな印出捕手は昨夏の欧州遠征で、初めて侍ジャパンのユニホームに袖を通した。「外国の打者と対戦する中で、捕手として配球面で新しい引き出しを作ることができたと思いますし、海外で文化の違い、日本の野球に対する評価を肌で感じることができました」と口元を綻ばせる。

 欧州遠征の試練は食事面だった。「向こうはパンとマッシュポテトが主食。日本のような白米はほとんどありません。そこに海外の難しさがありました」。とはいえ、大学代表の堀井哲也監督(慶應義塾大監督)が代表選手選考合宿の段階から「タフな選手を選びたい」と強調し、選出されたメンバーには「環境が大きく変わる中で、長期間自分のパフォーマンスができるように、日本国内にいる時から準備を大事にしよう」と伝えていただけに、選手たちも覚悟ができていた。

 日本からカップ麺10個を持参した印出捕手は、「それだけではとても足りず、耐えるしかない時もありました。食あたりを起こすことはありませんでしたが、お腹いっぱい食べたという感覚は全くありませんでした」と明かしつつ、「厳しい環境でしたが、タフに、ぶれずに戦っていこうという気持ちを選手全員が持っていたと思います」と頷く。


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シートノックにスタンディングオベーション「世界に評価されている」

「日本の野球は世界に評価されている」と実感したのは、試合前のシートノックだった。「対戦相手の中にはシートノックをしないチームもありましたが、僕らは日本の文化として大事にしていました。僕らにとっては普通のことでも、守備のレベルの高さ、キビキビとした動きが、海外の方々の目には異色に映ったようです。スタンドの観客がスタンディングオベーションをしてくださったり、指笛を鳴らして称えてくれたりしました。相手チームも拍手をしてくれました」と目を細める。

 開催国のチェコ、オランダとの対戦はともかく、それ以外ではスタンドに現地在住の日本人や日本を応援する現地のファンの姿が目立ち、日本戦となると観客数が増える現象も見られたという。

 欧州遠征最後の試合となったハーレムベースボールウィーク決勝は米国と対戦し、激しいシーソーゲームとなった。印出捕手は、最速160キロ右腕で東京ヤクルトからドラフト1位指名された先発・中村優斗投手(愛知工業大)とバッテリーを組んでスタメン出場。3-2とリードして迎えた5回の守備では、2番打者に特大の逆転2ランを被弾した。

「果てしないほど飛ばされて、びっくりしました。高めの強いボールでしたから、日本なら詰まったり、ファウルになったりしていたと思います。左翼スタンド最上段の奥の照明塔まで飛んでいきました。130メートルは飛んでいたと思います」と印出捕手。米国選手のフィジカルの強さを思い知らされた瞬間だった。

今春から三菱重工Eastに入社 2年後のドラフト指名とともに目指すものとは…

 それでも日本の打線は、6回に打者10人の猛攻で一挙6点を奪い、大逆転する。印出捕手も送りバントを決めて貢献し、守っては6回から2番手の篠木健太郎投手(法政大)、3番手の藤井優矢投手(東日本国際大)をリード。「ある程度打たれるのは仕方がないので、同じ打たれるなら走者がいない時に打たれようと考え、四球などで無駄な走者を出さないことを心掛けました」という慎重な配球で、4イニングを無失点で乗り切り、結局10-4で勝ち切った。

 愛知・中京大中京高時代も主将を務め、2023年の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパン・トップチームの優勝に貢献した高橋宏斗投手(中日)とバッテリーを組んでいた。2026年のドラフト会議での指名を目指すのはもちろんだが、その先に、高橋投手と一緒に国際大会の檜舞台に立つ夢も描いている。「野球をやる以上は、上を目指す意志を持って、社会人野球で頑張っていきます」と力強い。欧州遠征で貴重な経験を得た“主将体質”の捕手が、改めて新たな環境に挑む。

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