強心臓でW杯7連覇に貢献 奄美大島が生んだ左腕・泰美勝が思い描く未来予想図

2024.11.25

22歳の左腕は、ピンチに滅法強い。野球日本代表「侍ジャパン」女子代表は、7月28日から8月4日までカナダで開催された「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップ(以下W杯) ファイナルステージ」で大会7連覇の偉業を達成。リリーフで輝きを放ったのが、ZENKO BEAMSの泰美勝(たい・みか)投手だ。

写真提供=Getty Images

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同点2死満塁の大ピンチで登板も「0に抑える自信がありました」

 22歳の左腕は、ピンチに滅法強い。野球日本代表「侍ジャパン」女子代表は、7月28日から8月4日までカナダで開催された「カーネクスト presents 第9回WBSC女子野球ワールドカップ(以下W杯) ファイナルステージ」で大会7連覇の偉業を達成。リリーフで輝きを放ったのが、ZENKO BEAMSの泰美勝(たい・みか)投手だ。

 W杯ファイナルステージ2戦目のカナダ戦。侍ジャパン女子代表は3-0とリードして6回の守りを迎えた。中島梨紗監督の胸に一抹の不安がよぎったのだろうか。泰投手はイニングが始まる前に「一応、肩を作っておいて」と声を掛けられた。ブルペンで投球練習を始めると、味方の先発投手がにわかに制球を乱すようになる。1安打1四球1死球で2死満塁のピンチを招き、押し出し四球で失点。さらに中前適時打で同点とされた後に死球を当て、なおも2死満塁のピンチが残った。

 ここで泰投手にお呼びがかかった。中島監督から「自分のピッチングをしてこい」と背中を押され、マウンドに上がる。「緊張は全然なくて、0に抑える自信がありました。普段、ZENKO BEAMSでもタイブレークなどピンチの場面で行くことが多くて、そういう状況に慣れていましたから」と涼しい顔で振り返る。前日のチャイニーズ・タイペイ戦にも登板し、1イニングを3者凡退で片づけていたことも落ち着けた要因だろうが、大した度胸の持ち主だ。

「最速は122キロですが、自分としてはストレートに自信があって、2種類のカーブとチェンジアップでタイミングをずらしながら、最後はストレートで詰まらせるパターンが最高だと思っています」と泰投手。この場面でも相手打者を二塁ゴロに仕留め、ピンチから“生還”してみせた。

 続く7回も続投し、1安打3奪三振で無失点。4点リードで迎えたタイブレークの延長8回は、無死一、二塁からのスタートで3点を失ったものの、リードを守り切り勝利投手となった。

W杯連勝は39でストップ「体格とパワーでは差をつけられている」

 今大会でも最終的には連覇をつないだ侍ジャパン女子代表だが、第5戦では米国に延長タイブレークの末に敗れ、W杯での連勝が39でストップした。決勝で米国に雪辱したものの、力の差はない。

 泰投手は「私は今回、初めて米国チームを見ましたが、みんな身長は170センチ以上。日本にはいない最速130キロ超の投手が普通にいて、日本ではあまり見られないフェンスを越えるホームランを打つ選手がたくさんいました。体格とパワーでは差をつけられていると感じました。8連覇へ向けて、投手のレベルを上げていかなければならないと思います」と危機感を募らせる。

「海外の選手は腕が長くて、日本人では届かない外角のボールにも届いてしまいます。コースにしっかりコントロールして、インコースを攻めていくことが有効ではないかと思います」と対策を練っているところだ。


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「一番負けたくないライバル」は同じく投手で東北楽天入り

 鹿児島県の奄美大島出身。幼少の頃はバレーボールや極真空手に取り組んでいたが、1歳下の弟・勝利(かつとし)さんが先に入っていた少年野球チームが部員不足だったことから、5年生の時に加入した。最初は左投げにも関わらず、強肩を買われて三塁手。6年生でエースになった。中学時代は近隣3校の合同チームで、唯一の女子としてプレー。ここでも弟とチームメートになった。「弟は一番負けたくないライバルです」と笑う。

 女子硬式野球の名門・神村学園高を経て、2021年にZENKO BEAMS入り。一方、弟は神村学園高から2021年ドラフト4位で、投手として東北楽天に入団した。昨年3月にトミー・ジョン手術を受ける試練があったが、リハビリを進め、来季は1軍デビューを狙う。野球を始めてからずっと張り合ってきた弟がプロ野球選手になったのだから、泰投手が侍ジャパン女子代表レベルとなったのも、必然と言えるかもしれない。

「当面の目標は来年のアジアカップと、その先の次回W杯のメンバーに選ばれること。それにZENKO BEAMSで日本一になることです」と表情を引き締める泰投手。「将来的には、現役を引退しても女子野球に携わりたい。女子野球をいろいろな方々に広く知っていただきたいですし、いずれはオリンピック競技になって、試合をテレビ放送されるくらいになってほしいです」と声を弾ませた。“奄美大島発”の夢はどこまでも広がっていく。

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写真提供=Getty Images, Full-Count

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