W杯で最優秀投手賞を獲得 “高校3冠”右腕がU-18代表から得たプロへの学び

2024.5.27

大阪桐蔭高時代の2021年には明治神宮野球大会、22年春には選抜高等学校野球大会、同年秋には国民体育大会で優勝し、高校3冠を達成した川原嗣貴(しき)投手。現在は社会人野球のHonda鈴鹿で2年後のプロ入りを目標に、右腕に磨きをかけている。

写真提供=Getty Images

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Honda鈴鹿からプロ入りを目指す川原嗣貴の歩み

 大阪桐蔭高時代の2021年には明治神宮野球大会、22年春には選抜高等学校野球大会、同年秋には国民体育大会で優勝し、高校3冠を達成した川原嗣貴(しき)投手。現在は社会人野球のHonda鈴鹿で2年後のプロ入りを目標に、右腕に磨きをかけている。

 高校3年の夏に甲子園(全国高等学校野球選手権大会)に出場後、野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表として「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で銅メダルを獲得した経験が、今も背中を押している。

「自分たちの年代で一番レベルの高い選手たちと一緒にプレーできたことは、自信につながりましたし、勉強になりました」

 米フロリダ州が舞台となった大会。当時のチームメートは高松商業高の浅野翔吾外野手(読売)、大阪桐蔭高の同期でもあった松尾汐恩捕手(横浜DeNA)、近江高の山田陽翔投手(埼玉西武)ら、豪華な顔ぶれだった。

「第30回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で大車輪の活躍

 その中で川原投手は、4試合に登板して計13イニング16奪三振無四死球無失点の快投を演じ、最優秀投手のタイトルを獲得した。とりわけ印象的だったのは、スーパーラウンド第2戦のオランダ戦。負ければ5位以下が確定するという崖っぷちに立たされて臨んだ大事な一戦で先発を任された時のことだ。

 それまでの2試合はリリーフだったが、満を持して初先発。「チームはそれまでいい流れではありませんでしたが、代表監督の馬淵(史郎)さん(当時・明徳義塾高)から『頼むぞ』と言われた責任と、日本の高校球児を代表して戦っている以上、何としても日本に帰ってからいい報告をしなければいけないという責任を感じていて、気合が入りました」とキッパリとした口調で振り返る。

 降雨のため試合開始が2時間50分遅れるという悪条件の中、オランダ打線を5回3安打無失点に封じた。味方打線の援護はわずか1点だったが、5回終了後に降雨中断。雨が強くなったため、そのままコールド勝ちを収めた。「最後まで投げ切って勝ちたかった気持ちもありますが、チームの勝利が最優先事項ですから、しっかり貢献できたことを誇りに思います」と胸を張る。

 さらには、2日後に行われた韓国との3位決定戦では、5回からリリーフ登板。3イニングを1安打無失点に抑え、日本に勝利を引き寄せた。

「最後に馬淵さんから『君を選んでよかった』という言葉をいただいて、達成感というか、高校野球を全部やり切った、と思えました」と笑顔を浮かべる。


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韓国の163キロ右腕から受けた衝撃「物凄い球を見た」

 この大会は木製バットで行われ、そこでの投球から社会人、プロに通じる学びを得た。

「木のバットは金属と違い、芯で打たないと飛ばない。ツーシームやカットボールのように小さく芯を外す球種が有効だと感じました。あの大会ではカットボールを多投し、社会人になってからツーシームを習得しました」

 海外の選手から刺激も受けた。2度対戦した韓国の右腕キム・ソヒョン投手(現ハンファ・イーグルス)は、スーパーラウンドで対戦した際、浅野選手を見送り三振に仕留めたストレートが101マイル(約163キロ)を計測。「見たことのない球でした。とにかく速い。変化球まで速い。物凄い球を見たと思いました」と興奮した。

 その年、プロ志望届を提出した川原投手だったが、ドラフト会議(新人選手選択会議)では残念ながら指名漏れ。Honda鈴鹿に進む道を選んだが、高校から社会人に進んだ選手は最短でも3年間在籍する規定となっている。社会人1年目の昨年は専ら体づくりに励み、今年から主戦投手となった。来年秋のドラフト会議で指名され、プロで活躍する将来を思い描いている。

 国際試合を経験したことから、MLBや侍ジャパンのトップチームへの憧れが強まったことは確かだ。しかし、「最終的に行きたいな、とは思いますが、自分はまだまだそんなレベルに達している投手ではありません。またここから小さな積み重ねをコツコツとやっていって、最終的にそういう大きな舞台で戦える選手になれたらと思います」と、慎重で実直な人柄をうかがわせる。

 まずはHonda鈴鹿で結果を出すところから、慌てず一歩一歩、目標に近づいていく。

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