「僕は野球教室のプロです」 井端弘和監督がアンダー世代指導へ情熱を注ぐ理由
今年11月に開催される「ラグザスpresents 第3回WBSCプレミア12」(プレミア12)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」の井端弘和監督。昨年11月の「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」では見事、2連覇で初陣を飾った。早速トップチームで手腕を果たした形だが、ご存じの通り、昨年10月の就任時から本人たっての希望でU-15代表の監督を兼任している。井端監督がアンダー世代へ寄せる思いは、歴代監督の誰よりも熱い。
写真提供=Full-Count
トップチーム監督就任時に明かしたU-15代表監督の兼任
今年11月に開催される「ラグザスpresents 第3回WBSCプレミア12」(プレミア12)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」の井端弘和監督。昨年11月の「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」では見事、2連覇で初陣を飾った。早速トップチームで手腕を果たした形だが、ご存じの通り、昨年10月の就任時から本人たっての希望でU-15代表の監督を兼任している。井端監督がアンダー世代へ寄せる思いは、歴代監督の誰よりも熱い。
井端監督は昨年12月、小学生約120人が参加した「NXグループ×侍ジャパン野球教室」に金子誠ヘッドコーチ、吉見一起投手コーチと一緒に講師として参加。冒頭の挨拶ではこう話していた。
「僕は自分のことを“野球教室のプロ”だと思っています。上手くなる秘訣を皆さんに教えて、明日以降の練習に取り組んでもらえるように、一生懸命頑張ります」
2022年からはU-12代表監督としてワールドカップ2大会に参戦
“野球教室のプロ”というのは、決して大げさな表現ではない。指揮官は「どの野球選手よりも、子どもたちと接している時間は長いと思っています。その辺は自信があります」と大きく頷く。それというのも、現役引退後に東京都内で幼児から中学生までを対象とする野球塾を開講し、地道に野球人口の増加に努めてきた一面があるからだ。
「なかには中学生になってから『野球を始めたい』と言ってくる子もいて、上手・下手を問わず入ってもらっています。ほとんどは野球をやったことのない子が小学1年生から入ってくるケースで、野球の“入口”に携われていることは本当に嬉しいです」
2022年から侍ジャパンU-12代表監督を務め、「WBSC U-12ワールドカップ」では2大会連続で指揮を執ったのも、その延長線上にあった。「どうしたら上手くなれるのか、子どもたちと一緒になって考えることは、自分の勉強にもなります。プロ野球選手に教えるよりも子どもに教える方が難しいですから、子どもに教えることができれば自分の(指導者としての)スキルが上がると感じています」と充実感を漂わせる。
子どもへの指導に真正面から取り組んできた経験が、稲葉ジャパンでの内野守備・走塁コーチ、さらにはトップチーム監督へと続く道を切り拓いた。
井端監督が問題提起する「中学3年のブランク」
プライベートでは1男2女の父親。小学6年の長男は昨年12月、全国選りすぐりの小学5、6年生が日本一の座を懸けて戦う「NPB12球団ジュニアトーナメント KONUMI CUP 2023」に横浜DeNAベイスターズジュニアのキャプテンとして出場し、チームを優勝に導いた。井端監督自身も愛息の応援を兼ね、大会期間の3日間すべて球場に訪れていた。
熱戦を見守った井端監督は「ジュニアトーナメントに出場した選手は、小学校を卒業してからスムーズに中学野球に移っていけると思います」と評していた。その一方、「次の課題は中学3年ですよね。個人的にはここを何とかしたいと思っています」と問題提起をしている。
中学3年の夏に部活動や所属チームを引退した選手は、その大半が翌年4月に高校で野球を始めるまで、半年以上の長いブランクが生じてしまう。井端監督は自身の中学3年時を次のように振り返った。
「夏に引退して、高校に行くのは半年後。ひたすら個人的に練習するだけでした。自分が所属していたチームのグラウンドを訪れても、試合をやっていて使えないことがあった。あるいは、下級生のために打撃投手を務めたり守ったりして、5球しか打たせてもらえないこともありました」
どうやら中学3年の野球選手をめぐる環境は、30年以上前から現在まであまり変わっていないようだ。
部活やチームを引退した中学3年生の環境改善に前向き
井端監督が考える理想は「中学3年生を対象とした大会を冬に開催すること」。高校受験とのバランスという難題もあるが、「半年というのは結構(大きな)問題だと思っています。いろいろな方々に協力していただいて、うまくできるようにならないかと考えています」と環境改善に乗り出す意気込みだ。
野球への“入口”段階となる幼児や小学生から、中学生、高校生に至るまで、アンダー世代に細かく目を配る井端監督。少子化や競技人口の減少が懸念される日本球界において、願ってもない侍ジャパンの指揮官と言えそうだ。
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