アジア競技大会で何とか掴んだ銅メダル 社会人代表が得た今後に繋がる収穫と課題

2023.10.16

10月1日から中国・杭州で開催された「第19回アジア競技大会」。1994年以来となる2度目の優勝を目指して大会に臨んだ野球日本代表「侍ジャパン」社会人代表チームは、韓国、チャイニーズ・タイペイに次ぐ3位という成績で大会を締めくくった。

写真提供=Getty Images

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前回大会に続き、石井監督が率いた「失敗を恐れずに挑戦する」24選手

 10月1日から中国・杭州で開催された「第19回アジア競技大会」。1994年以来となる2度目の優勝を目指して大会に臨んだ野球日本代表「侍ジャパン」社会人代表チームは、韓国、チャイニーズ・タイペイに次ぐ3位という成績で大会を締めくくった。

 2018年の前回大会に続き、チームの指揮を執ったのは石井章夫監督(東京ガス)。石井監督がチームに求めたのは、個々が持つ価値を最大限に発揮することだ。そのためには自分と向き合い、何が必要なのかを考え、行動するという自発性も求められる。例えば、攻撃はサインなしで戦うことを公言していたが、23歳から40歳という幅広い年齢の24選手について「全員が成長のために失敗を恐れず挑戦する人たち」と評価し、期待していた。

 セカンドステージからの出場となった日本は、中国、フィリピン、そしてファーストステージを勝ち上がったラオスと同組で戦った。初戦のフィリピン戦は、堀誠投手(NTT東日本)、加藤三範投手(ENEOS)、嘉陽宗一郎投手(トヨタ自動車)、片山雄貴投手(Honda熊本)の4投手が無失点で繋ぐと、打っては下川知弥内野手(NTT東日本)が3安打2打点の活躍で6-0と完封勝利を収めた。

 続くラオス戦では、岩本喜照投手(日本新薬)と渕上佳輝投手(トヨタ自動車)が走者を1人も出さぬ完全リレー。打線も5回までに18点を挙げる猛攻を見せ、18-0で格の違いを見せつけた(5回コールド)。

2連勝で臨んだ中国戦で直面した、まさかの苦戦

 日本にとって思わぬ苦戦を強いられたのが、第3戦の中国戦だった。近年、野球の強化・普及に力を入れている中国は急速な成長を遂げていた。日本の先発・森田駿哉投手(Honda鈴鹿)は初回、先頭から2連打を許しながら無失点に抑えたが、2回に内野安打と2四球から満塁としたところでレフト前にタイムリーヒット。1点を先制された。

 1点を追う日本は3回に木南了捕手(日本通運)がセンター前にヒットを放ったが、7回には3四球で得た満塁のチャンスを生かし切れず。9回には先頭の北村祥治内野手(トヨタ自動車)が四球で出塁すると、続く佐藤竜彦外野手(Honda)がチーム2本目となる安打をレフトへ運んだものの得点には結びつかなかった。

 4回から片山投手、加藤投手、そしてチーム最年長の佐竹功年投手(トヨタ自動車)が中国打線を1安打に抑えたが1点が重く、0-1の完封負けを喫した。


写真提供=Getty Images

苦しむ打線がチャイニーズ・タイペイ戦で見せた意地

 A組2位でスーパーラウンドに進出した日本が次に迎えたのは、前回大会の決勝で敗れた韓国だった。中国を相手に思わぬ黒星を喫したが、休養日を1日挟んでリフレッシュ。25歳以下のプロ選手を中心とする韓国を相手に、心機一転臨んだ試合は投手戦となった。

 先発マウンドに上がった嘉陽投手は4回に2連打で無死一、三塁のピンチを迎えたが、三振と投手ライナーなどで無失点と乗り切った。6回に二塁打と死球で1死一、三塁としたところで、レフトへの犠牲フライで1点を献上。8回には4番手の佐竹投手が1点を失ったものの、2点差で打線の援護を待った。

 打線は初回、先頭の中川拓紀内野手(Honda鈴鹿)の四球、北村内野手の左前打で先制のチャンスを作ったが、後が続かなかった。その後も安打や四球で走者が出ても畳みかけることができずに無得点。2試合連続の完封負けを喫した。

 スーパーラウンド第2戦は、ここまで4戦全勝と勢いのあるチャイニーズ・タイペイ。台湾プロ野球や米国マイナーリーグ、NPBに所属する選手などを擁し、爆発力のある打線を持つチームに対し、この日も日本は投手陣が存在感を光らせた。

 先発の岩本投手が3イニングを1安打に抑えると、2番手の渕上投手も3イニングを2安打で乗り切って無失点。試合途中から強まった雨の中も、好守にも支えられながらチャイニーズ・タイペイ打線を封じた。

 投手陣の頑張りに、この日は打線が奮起。チャイニーズ・タイペイの先発を務めた王彦程投手(東北楽天)から、2回に向山基生外野手(NTT東日本)のタイムリーで1点を先制すると、4回には丸山壮史内野手(ENEOS)のセンター前タイムリーで2点目を挙げた。試合は降雨のため6回終了時点でコールドとなり、日本が2-0と完封勝ちした。

メダルを懸けた大一番で再び中国と対戦

 決勝進出を逃した日本が3位決定戦で対峙したのは、セカンドステージで敗れた中国だった。銅メダルを懸けた大一番。同じ相手に連敗はできないとばかりに意地を見せた。

 日本は初回、中国に1点を先制されるが、2回表に1死から辻野雄大捕手(Honda)の四球、金子聖史内野手(東芝)の二塁打で得点機を作ると、鈴木聖歩外野手(JR東日本東北)がライトへ打球を運んで2点を挙げ、逆転に成功。だが、3回に再び逆転を許して1点を追う展開となった。

 4回3失点だった先発の堀投手の後を受け、5回は加藤投手、6回は田澤純一投手(ENEOS)、7回は嘉陽投手が無失点リレー。すると、8回表に打線が奮起。先頭の丸山選手が右翼線に二塁打を放つと、1死三塁から代打で起用された猪原隆雅外野手(ミキハウス)がライトへ同点打。さらに1死満塁で南木寿也捕手(JR北海道硬式野球クラブ)の打球が失策を誘って1点を加え、勝ち越しに成功。最後は佐竹投手が6者連続凡退で締め、日本は銅メダルを手に入れた。

 優勝は果たせなかったものの、3位決定戦で勝利をもぎ取った日本。攻撃はノーサインなど新たなスタイルの野球で臨んだ大会では、短期決戦で勝ちきる難しさ、中国をはじめとするアジア野球の成長を感じることになった。ここで得た収穫と課題は、今後の社会人代表チームの成長にとって大きな糧となるはずだ。

 12月3日からは台湾で「第30回 BFAアジア選手権」が開催される。わずか2か月ほどの期間だが、社会人代表チームがどのような進化を遂げるのか楽しみだ。

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