5年ぶりの社会人代表選出 日本通運・木南了が集中する「自分の価値の出し方」

2023.9.4

10月1日から中国・杭州で開催される「第19回アジア競技大会」。野球日本代表「侍ジャパン」では、石井章夫監督の下、社会人野球から選ばれた精鋭24選手が1994年以来の優勝を目指す。昨年開催された「第4回 WBSC U-23ワールドカップ」には23歳以下の若手選手で結成された社会人代表が参加したが、コロナ禍の影響もあり、年齢制限のない社会人フル代表となると2019年「第29回 BFAアジア選手権」以来4年ぶりの国際大会。8月15日から鹿児島で開催された強化合宿では、選手たちの生き生きとした表情が印象的だった。

写真提供=Full-Count

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社会人代表は10月1日から中国で第19回アジア競技大会に出場

 10月1日から中国・杭州で開催される「第19回アジア競技大会」。野球日本代表「侍ジャパン」では、石井章夫監督の下、社会人野球から選ばれた精鋭24選手が1994年以来の優勝を目指す。昨年開催された「第4回 WBSC U-23ワールドカップ」には23歳以下の若手選手で結成された社会人代表が参加したが、コロナ禍の影響もあり、年齢制限のない社会人フル代表となると2019年「第29回 BFAアジア選手権」以来4年ぶりの国際大会。8月15日から鹿児島で開催された強化合宿では、選手たちの生き生きとした表情が印象的だった。

「個人的には、もう一度代表に選ばれて、チームで自分の価値を出したいと強く思っていたので、今回選ばれたことはすごく光栄ですし、やってやりたい、優勝を掴み取りたいという想いは強く持っています」

 真っ直ぐな視線と言葉に力を込めて語るのは、2018年「第18回アジア競技大会」以来の社会人代表入りとなった木南了捕手(日本通運)だ。これまで2度の代表経験を持つ31歳は「すごく新鮮な、いい刺激を受ける」場所と位置づける。

「普段はまったく違うチームでプレーする選手たちと勝利に向かって戦う。自分は捕手というポジションもあり、様々なコミュニケーションを図る中で色々な勉強をさせてもらい、すごくいい期間を過ごすことができました。また、日本代表として国際大会でチャレンジできることは本当にありがたいことだと感じています」

「ショッキング」なコロナ禍も野球と向き合い、気付いた感謝の気持ち

 5年ぶりの代表入り。「自分の結果が不甲斐なくて呼ばれなかった時期もあった」というが、この間は新型コロナウイルス感染症の脅威に世界中が脅かされた時期でもある。2020年春のこと。所属チームでのキャンプを終え、4月から始まる地方大会に向けて準備を進めている最中、コロナ禍による地方大会中止の知らせが飛び込んできた。

「こういうことが本当に起きるんだって、自分にはショッキングな出来事でした。野球はもちろん日常でも、当たり前のことができなくなった期間。不安やストレスもありましたが、改めて野球と向き合う時間を過ごせましたし、日常に対する感謝の気持ちも生まれた。あの期間や経験があるからこそ、今こうやっていい時間を過ごせているんだと思います」

 選手として積み重ねた経験に、シンプルに野球ができることへの感謝の気持ちも加わった今、侍ジャパンのユニホームを着て優勝を掴むためにも、まずは「チームのために自分の価値をどうやって出すかに集中したい」と話す。

「結果ありきのスポーツですし、まずは優勝に自分がどう貢献できるかに集中しないといけないと思っています。捕手なので、結果を出すためにはコミュニケーションを図ることが必要。投手も年下の方が多くなりましたし、自分からコミュニケーションを取りながら、彼らがどう自分のパフォーマンスを出せるかに注力したいし、それこそが勝利に繋がる、自分の貢献できる部分だと思っています。短期決戦ではありますが、チームとして試合に臨めるように、野手も含めてしっかりコミュニケーションを図っていきたいと思います」

 投手の良さを引き出すリードは折り紙付きだ。自ら「守備面では自信を持っている」と言い切ると同時に、今回は「自分の時間をバッティングにしっかり使ってきた」と話す。「自分の基盤となるものは、ある程度作れてきたと思うので、そこも自分の価値としてチームに貢献できればいいなと思っています」と手応えは十分感じている。


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石井監督らが選手に促す「組織の中で自分の価値をどう出すか」への集中

 今回の代表チームでは野手最年長、日本通運ではチーム最年長となり、これまで視界に入らなかったことも見えるようになってきた。それが石井監督をはじめとする代表スタッフのチームマネジメント術だ。

「代表合宿のミーティングで伝えられたのは、組織の中で自分の価値をどう出すか、まずはそこに集中しなさい、ということ。要所要所で求められることはあっても、縛られることはなく、自分に何が必要かは自分で考えるというスタンス。だからこそ、自分に責任感が生まれてきますし、『よし、やってやろう。絶対に価値を出そう』とやり甲斐が出てくるんですよね。必要なことを気付かせるアプローチだったり、自発的にやらせることの大切さだったり、マネジメントの部分で自チームに持って帰ることができることも多いので、僕はすごく勉強になっています」

 社会人野球が誇るトップレベルの選手が集まった集団だ。個々が持つ価値を十分発揮できれば、それは必ず勝利という結果に繋がる。自分の価値を引き出すことに集中できる環境があることに感謝しつつ、「会話を重ねるうちに、お互いに何か感じることがあると思う。代表という集まりがすごくいい場所でなければいけないと思いますし、そこを経験させてもらっている自分は、コミュニケーション、振る舞いなど、しっかりやっていかないといけないと思います」と表情を引き締める。

3度目の社会人代表という舞台「後輩たちには是非目指してほしい場所」

 学びの多い場所だからこそ、後輩たちには目指してほしい場所でもあるという。「自チームでの目標が最優先事項ではありますが、代表でしかできない経験はあるし、本当に多方面からいい刺激を受ける場所なので、是非目指してほしい場所ですね」。百聞は一見にしかず。まずは、自らがアジア競技大会で勝利のために価値を発揮する姿を示し、何かを感じてもらえたらと願う。

「9月25日から合宿に入って、そこからアジア競技会に向かいます。結果を出すためには最高の準備が必要。そこはブレずにいきたいと思います」

 29年ぶり2度目のアジア競技大会優勝を目指す侍ジャパン社会人代表は、10月1日から始まるセカンドステージから登場。中国、フィリピン、ファーストステージを勝ち上がったチームと総当たり戦を戦い、上位2チームがスーパーラウンドに駒を進める。悲願の優勝に向け、日本から大きな声援で後押ししたい。

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