指揮官のアドバイスで打撃が開花 元U-18代表・森敬斗が振り返るW杯から得た成長

2023.7.31

今から4年前の2019年。桐蔭学園高3年生だった森敬斗内野手は甲子園の春夏連続出場を目指すも、神奈川大会の4回戦で敗れるという早過ぎる夏の終わりを迎えていた。そんな中に舞い込んできたのが、8月30日から韓国・機張郡で開催される「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」に向け、野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表に選出されたという知らせだった。

写真提供=Full-Count

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桐蔭学園高3年時にU-18代表に選出「ビックリしました」

 今から4年前の2019年。桐蔭学園高3年生だった森敬斗内野手は甲子園の春夏連続出場を目指すも、神奈川大会の4回戦で敗れるという早過ぎる夏の終わりを迎えていた。そんな中に舞い込んできたのが、8月30日から韓国・機張郡で開催される「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」に向け、野球日本代表「侍ジャパン」U-18代表に選出されたという知らせだった。

「ビックリしました。春は出たけれど、夏は甲子園に出ていなかったので」

 他のメンバーを見ると、星稜高の奥川恭伸投手(東京ヤクルト)や東海大相模高の遠藤成内野手(阪神)など甲子園を沸かせた面々もいたが、一方で大船渡高の佐々木朗希投手(千葉ロッテ)、創志学園高の西純矢投手(阪神)、興南高の宮城大弥投手(オリックス)、東邦高の石川昂弥内野手(中日)ら夏の甲子園出場は逃したものの、大きな注目を集める選手が揃っていた。森選手もその1人。「レベルの高いメンバーの中で野球ができるのは、すごく楽しみだと思っていました」と振り返る。

 チームを率いたのは、元報徳学園高の永田裕治監督だ。春夏通算18度の甲子園出場経験を持つ名将の元に、世代を代表するトップ選手たちが集結。大会初優勝を目指し、意気揚々と開催地へと乗り込んだ。

本職は遊撃ながら「1番・中堅」で全試合全イニング出場

 大会中は全8試合に先発し、1番打者として全イニング出場を果たした森選手。だが、守備位置は自チームで守る遊撃ではなく、中堅だった。この時の代表チームには、森選手の他にも遠藤選手、八戸学院光星高の武岡龍世選手(東京ヤクルト)ら、遊撃を本職とする選手が6人集まっていた。

「高校1年生の時に外野を何回か守ったことがあって、それで永田監督に『良かったら中堅をやってみないか』という話をいただき、『やります』と返事しました」

 慣れないポジションだったが、迷いはなかった。試合に出られることが最優先事項だが、「守備の上手な選手が多かったので、出場できるチャンスが増える可能性があるのであればと思いやってみることにしました」と振り返る。そして、この決断はプラスの方向に作用した。

 まず、いつもとは違うポジションにつき、文字通り、試合を新たな角度から見ることができた。「遊撃でも予測しますが、やっぱり中堅はグラウンド全体が見渡せるので、打者や投手の様子を見ながら、このスイングだったらどういう打球がどの辺りに来そうだとか、色々考えられたことがすごく楽しかったです」と話す。

好調な打撃成績の裏にあった永田監督からのアドバイス

 日本だけでは感じられない、海外選手たちのパワーやスピードも新鮮だった。「アメリカや台湾、韓国はすごくレベルが高いですし、日本人よりも単純に力がある。そういうスピード感やパワフルさを実感できたので、今となっては自分にとってすごくいい経験になったと思っています」。プロ入りをおぼろげに考える中、さらに高いレベルの野球に触れられたことで向上心をかき立てられた。

 この大会では打撃が絶好調だった。通算打率.320もさることながら、出塁率はなんと5割をマーク。「今ほどちゃんと配球を考えていませんでした。逆に余計なことは考えず、1打席1打席、前の打席を引きずることなくフレッシュな状態で立てていた。それがたまたまいい方向にいったんだと思います」と謙遜するが、強い手応えを感じる経験もした。

 オープニングラウンド2戦目の南アフリカ戦のことだ。前日の2四球という結果から2安打2四球へ向上したが、「バッティングはそれほどうまくいっていなかったんです」。悩める森選手に手を差し伸べたのが、永田監督だった。試合後に『ちょっと練習して』と声を掛けられ、ティー打撃を始めた。

「やっぱり金属(バット)の打ち方と木の打ち方は違うので。ちゃんとバットをボールの軌道のラインに入れて、バットにボールを乗っけるイメージで振る。自分の中では理解してやっていたつもりなんですけど、改めて教えていただきました」

 すると、翌日の米国戦ではいきなり第1打席で右翼へ三塁打を放ち、続く第2打席は左翼へヒットを運んだ。さらには右翼への安打も加えて3安打と大暴れ。普段は対戦する機会が滅多にない球速150キロの剛腕投手たちに対しても、臆せず勝負を挑めた。「国際大会でああいう凄い投手の球を打てたのは自信に繋がったと思います」。

元チームメートたちから受ける刺激「悔しい気持ちがある」

 個人的には好成績を残せたが、チームとしてはスーパーラウンドで韓国とオーストラリアに敗れて5位に終わる悔しさを味わった。チームを勝利に導けず、「あそこで打っていれば」「もう少し守備がうまければ」という思いは尽きない。優勝こそ叶わなかったが、野球の難しさと楽しさを実感する経験となった。

 当時、ともに戦いながら練習を間近で観察し、言葉を交わして刺激を受けたメンバーたちからは、今でも大きな刺激を受けている。それと同時に「自分以外の選手がどんどん活躍する中で悔しい気持ちもありますし、やらなければいけないという気持ちもあります」というのも本音だ。

 横浜DeNAにドラフト1位指名で入団し、今年で4年目。ここまでファームが主な活躍の場となっている。「悔しい思いの方が断然大きいですね。もっともっと結果を残していかないといけないと思います」。かつてのチームメートたちの活躍を発奮材料としながら、後半戦は1軍に昇格してチームの戦力として“優勝”の二文字を追いかけたい。

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