侍ジャパンが3大会ぶりに王座奪還 大谷翔平、ダルビッシュが繋いだ野球界の未来

2023.3.27

3月8日から世界各地で熱戦を繰り広げた「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)」は21日(日本時間22日)、野球日本代表「侍ジャパン」が米国を3-2で破り、3大会ぶりに世界一を奪還して幕を閉じた。栗山英樹監督の下、大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)、ダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)らメジャー組とNPB組が、文字通りに一致団結。侍ジャパンが戦った全7試合を見届け、メジャーリーグの解説者としても活躍する新井宏昌氏が、今大会で見えた日本球界の収穫を語った。

写真提供=Getty Images

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解説者・新井宏昌氏が語る“栗山ジャパン”成功のカギとは

 3月8日から世界各地で熱戦を繰り広げた「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™(以下WBC)」は21日(日本時間22日)、野球日本代表「侍ジャパン」が米国を3-2で破り、3大会ぶりに世界一を奪還して幕を閉じた。栗山英樹監督の下、大谷翔平投手(ロサンゼルス・エンゼルス)、ダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)らメジャー組とNPB組が、文字通りに一致団結。侍ジャパンが戦った全7試合を見届け、メジャーリーグの解説者としても活躍する新井宏昌氏が、今大会で見えた日本球界の収穫を語った。

 無傷の7連勝で世界一の称号を手にした侍ジャパン。MVPを3度受賞し、現役最強打者と評されるマイク・トラウト外野手(ロサンゼルス・エンゼルス)が主将として率いる米国との決勝戦は、史上屈指の名勝負となった。8回にはダルビッシュ投手、9回には大谷投手がマウンドに上がり、最後はトラウト選手を空振り三振に仕留め、歓喜の瞬間を迎えた。

「最後の最後まで痺れる試合を見せてくれた。大谷とトラウトの対決は歴史に残る名勝負だったのではないでしょうか。日本のため、大谷のための大会だった。大谷はプレーヤーとして投げること、打つことも自信に満ち溢れている。これだけ野球を楽しみながら結果を残す選手はいません」

 選手たちの活躍ぶりも素晴らしかったが、新井氏は「栗山監督のメンバー選考、采配に間違いがなかった」と振り返る。鈴木誠也外野手(シカゴ・カブス)は怪我で出場辞退となったが、日系人のラーズ・ヌートバー外野手(セントルイス・カージナルス)が攻守でチームを引っ張り、安打で出塁した時に見せた“ペッパーミル・パフォーマンス”は日本中で大流行した。

「メジャーリーガーですが、ヌートバーの実力は日本では未知数だった。当初は懐疑的な見方をする日本ファンもいたが、蓋を開けてみれば想像以上の活躍ぶり。1番打者としての役割を果たし、チームを牽引した。鈴木の離脱は痛かったが、それを補う活躍を見せたのが近藤(健介外野手・福岡ソフトバンク)でした」

全選手が役割を果たして仲間をカバー「栗山監督の思惑は全て上手くいった」

 当初、外野の布陣はヌートバー選手、鈴木選手、吉田正尚選手(ボストン・レッドソックス)の3人が先発し、近藤選手は控えが濃厚だった。だが、2番打者として全7試合に出場すると、打率.346、出塁率.500と代役以上の活躍を見せた。

 1次ラウンドは4番に座った村上宗隆内野手(東京ヤクルト)が絶不調ながら打線は繋がり、計38得点を叩き出す危なげない試合運び。決勝ラウンドでは準決勝のメキシコ戦で1点を追う9回無死一、二塁の場面で、5番に“降格”した村上選手が、中堅手の頭上を越すサヨナラ2点適時打で試合を決めた。全員がそれぞれの役割を果たし、不調の選手をカバーしながら白星を重ねていった。

「打線でヌートバー、近藤の1、2番を確立できたことが非常に大きかった。溜まった走者を大谷、吉田、村上が返す。下位からも小指を骨折しながら出場した源田(壮亮内野手・埼玉西武)、調子を取り戻した山田(哲人内野手・東京ヤクルト)がチャンスを作って繋がる打線になった。栗山監督の思惑は全て上手くいったのではないでしょうか」

 投手陣では、ダルビッシュ投手が宮崎キャンプ初日から参加。若い投手陣に惜しみなく知識を伝え、手本になるなど、自ら“先生役”を買って出た。佐々木朗希投手(千葉ロッテ)には伝家の宝刀・スライダーを伝授し、山本由伸投手(オリックス)らにもサプリメントなど体作りの重要性を説いた。キャンプインから2週間経った名古屋で大谷投手が合流した時には、すでに侍投手陣には“ワンチーム”の絆が出来上がっていた。

メジャー組とNPB組が一致団結「今大会で世界一を獲得したことは非常に意義がある」

 WBCでは史上最多となる3度目の金メダル獲得した侍ジャパン。まだ、大会自体の歴史は浅いが「過去に比べても各国が一流選手をより多く集め、最もレベルが高い大会になった。その中で日本野球のレベルの高さを見せつけた。今大会で世界一を獲得したことは非常に意義があると思います」と、新井氏は称える。

 近年は野球人口の減少が叫ばれているが、今回の侍ジャパンの活躍で再び野球熱の高まりが期待される。大谷投手が感情を爆発させながらチームを鼓舞した姿、諦めない姿勢で立ち向かい大事な場面で花開いた村上選手の打撃、最年長としてチームを牽引したダルビッシュ投手の背中――。侍ジャパンの姿が、すべての少年少女たちに夢と希望を与えたことは間違いない。

「日本の野球も捨てたもんじゃない。才能溢れる若い選手たちが臆することなく戦い、世界一を勝ち取った。今大会であまり出番のなかった選手たちも、次は主力になる可能性は大いにある。そして、この大会を見た子どもたちが『僕も、私も』と野球を始め、憧れの舞台を目指していく。第1回、第2回大会でイチローが作った流れをダルビッシュ、大谷が繋ぎ、さらに次の世代へと受け継がれていくことを切に願っています」

 次回大会は2026年に開催予定となっている。世界中に驚きを与えた侍ジャパンの快進撃は、この先も語り継がれていくだろう。


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