あの激戦をもう1度 2017年・第4回WBC™ 2大会連続ベスト4も選手飛躍のきっかけに
2023年3月に開催が予定される第5回「ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)。野球日本代表「侍ジャパン」を率いる栗山英樹監督は8月に渡米し、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手やシカゴ・カブスの鈴木誠也外野手らメジャーの舞台で活躍する選手たちを視察した。11月の「侍ジャパンシリーズ2022 日本 vs オーストラリア」、そしてWBC本番に向けて、どんなチーム編成を考えているのか。発表が待ち遠しい人も多いだろう。
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2大会ぶり頂点を目指し、小久保裕紀監督の下でチームを強化
2023年3月に開催が予定される第5回「ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)。野球日本代表「侍ジャパン」を率いる栗山英樹監督は8月に渡米し、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手やシカゴ・カブスの鈴木誠也外野手らメジャーの舞台で活躍する選手たちを視察した。11月の「侍ジャパンシリーズ2022 日本 vs オーストラリア」、そしてWBC本番に向けて、どんなチーム編成を考えているのか。発表が待ち遠しい人も多いだろう。
その一方で、参加が決まっている他の代表チームでは選手が次々と参戦表明。大谷選手の同僚でもあるマイク・トラウト外野手、ロサンゼルス・ドジャースのムーキー・ベッツ外野手は米国代表、ミネソタ・ツインズのカルロス・コレア内野手とホセ・ミランダ内野手はプエルトリコ代表として戦うことを明言している。
過去4回に負けぬ豪華メンバーが出揃うことになりそうな第5回大会。その前に侍ジャパンは過去のWBCでどのような熱戦を繰り広げたのかを振り返ってみよう。今回は2017年の第4回大会をプレーバックする。
常設化された侍ジャパン、定期的に海外代表チームと強化試合を実施
2013年3月の第3回大会から約半年が経った10月9日、侍ジャパンの指揮官に就任したのは小久保裕紀監督だった。福岡ソフトバンクや読売などで活躍し、通算413本塁打を誇った強打者は2012年を最後に引退。指導者としての経験はなかったが、選手に近い現場感覚の分かる人物として期待された。
初采配となった同年11月の「BASEBALL CHALLENGE 日本 VS チャイニーズ・タイペイ」は3戦全勝の好スタート。2015年の「第1回 WBSCプレミア12」では準決勝で韓国に敗れて3位に終わったが、定期的に海外代表チームと強化試合を戦いながら、侍ジャパンとしての強化・結束を図っていった。
だが、メンバー選考には頭を悩ませた。侍ジャパンが常設化されたことでチームのおおよその骨格は整っていたものの、何度も調整を重ねたMLB球団所属選手の参加は、青木宣親外野手(ヒューストン・アストロズ)のみ。期待された大谷翔平投手(北海道日本ハム)は代表選出されたが、負傷により辞退を余儀なくされた。
それでも、2月23日から始まった宮崎での直前合宿には錚々たるメンバーが集結。菅野智之投手(読売)、則本昂大投手(東北楽天)、坂本勇人内野手(読売)、松田宣浩内野手(福岡ソフトバンク)、筒香嘉智外野手(横浜DeNA)、鈴木誠也外野手(広島東洋)ら、若手からベテランまで日本代表の名にふさわしい投打のスターが出揃った。NPB球団との練習試合、CPBL選抜チャイニーズ・タイペイとの壮行試合で最終調整。小久保ジャパンは世界一奪還に向けて士気を高めた。
打線好調で第1ラウンドから6戦全勝、決勝トーナメントの地・米国へ
いよいよ迎えたWBC本番。オーストラリア、キューバ、中国と同じB組となった日本は、東京ドームで行われた第1ラウンド初戦でキューバと対戦。打撃戦を11-6で制すると、続くオーストラリア戦は投手陣が奮起。先発・菅野投手が2回に1点を許したのみで、3回以降は無失点リレーで繋ぎ、4-1で勝利した。第3戦の中国戦でも白星を飾った日本は、4大会目で初となる3戦全勝で第2ラウンド進出を決めた。
再び東京ドームが舞台となった第2ラウンドは、日本、キューバ、オランダ、イスラエルという顔ぶれ。いずれも実力者揃いのチームとあって混戦が予想された。日本は初戦、オランダと対戦。前回大会では準決勝まで進んだ強豪で、この大会にはウラディミール・バレンティン外野手(東京ヤクルト)、ディディ・グレゴリアス内野手(ニューヨーク・ヤンキース)らが出場し、優勝候補の一角と目されていた。
試合は3回を終えて5-5と拮抗。日本は5回に小林誠司捕手のタイムリーで1点を勝ち越したが、9回2死から同点とされ、延長戦へ。規定により11回からはタイブレーク方式で実施。日本は1死二、三塁から中田翔内野手(北海道日本ハム)が2点タイムリーを放ち、接戦に終止符を打った。
2戦目のキューバ戦も競った試合となった。初回に日本が山田哲人内野手(東京ヤクルト)のソロ弾で先制するも、直後に2点を返されるなど、取りつ取られつのシーソーゲーム。5-5で迎えた8回、日本は山田選手がこの日2本目となる2点アーチをかけるなど3点を加えて勝利を飾った。
イスラエルにも8-3で勝った日本は、第1ラウンドから6戦全勝と勢いに乗り、決勝トーナメントの舞台となる米国・ロサンゼルスのドジャースタジアムへと乗り込んだ。
実力が拮抗した準決勝・米国戦、雨のドジャースタジアムで奮闘するも…
準決勝の日。舞台となったドジャースタジアムには珍しく雨が降っていた。2大会ぶりの王座返り咲きを狙う日本は、“野球の母国”として是が非でも初優勝を飾りたい米国と対戦。先発マウンドに上がった菅野投手とタナー・ロアーク投手(ワシントン・ナショナルズ)は、どちらも気合の入ったピッチングで打者を圧倒。3回までスコアボードに「0」が並んだ。
試合が動いたのは4回。米国は失策と四球で2死一、二塁のチャンスを作ると、アンドリュー・マカチェン外野手(ピッツバーグ・パイレーツ)が左翼へタイムリーを運び、1点を先制した。
これまで好調だった日本打線だが、この日は米国投手陣に苦戦。微妙にバットの芯を外されるなど打ちあぐねていたが、6回に菊池涼介内野手(広島東洋)がセンターへ値千金の同点ソロ。試合を振り出しに戻した。
だが、米国は8回に1死から2連打で二、三塁としたところで、アダム・ジョーンズ外野手(ボルチモア・オリオールズ)が放った三塁ゴロの間に1点を勝ち越し。その裏、日本は2死一、二塁と同点機を作ったが生かせず、1-2と惜敗した。
第4回大会後に5選手がMLB移籍、参加選手が新たな一歩を踏み出すきっかけに
日本は2大会連続で準決勝敗退という結果とはなったが、千賀滉大投手(福岡ソフトバンク)の投げる落差の大きな“お化けフォーク”が世界で注目を集めるなど話題には事欠かず。この大会をきっかけに、平野佳寿投手(オリックス)、牧田和久投手(埼玉西武)、秋山翔吾外野手(埼玉西武)、筒香選手、鈴木選手がMLBへの道を切り拓くこととなった。侍ジャパンの一員としてWBCの舞台を経験した選手にとって、新たな一歩を踏み出すきっかけを得る舞台にもなったようだ。
決勝では米国がプエルトリコに8-0で完封勝利し、悲願の初優勝を飾った。第5回大会はこの4年後、2021年春の開催が予定されていたが、誰も予期し得なかった新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が発生。開催は2023年まで延期された。
6年ぶりの開催となるWBCに向けて、各代表チームがかける意気込みは大きい。その中で栗山ジャパンはどのような戦いをファンに届けてくれるのか。3大会ぶりの世界一奪還へ、今から待ちきれない。
※()内は当時の所属球団
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