U-15代表・鹿取監督が大事にする「選手自身が何を感じるか」 異国での成長に期待

2022.8.22

8月26日から9月4日までメキシコ・エルモシージョで行われる「第5回 WBSC U-15ワールドカップ」(以下ワールドカップ)。2018年以来4年ぶりの開催となる大会に、野球日本代表「侍ジャパン」U-15代表も出場。デジタルチャレンジ、最終トライアウトを勝ち抜いた20選手が、トップチームと同じ縦縞のユニホームを身にまとい、優勝を懸けた戦いに挑む。

写真提供=NPBエンタープライズ

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8月26日からメキシコで「第5回 WBSC U-15ワールドカップ」開幕

 8月26日から9月4日までメキシコ・エルモシージョで行われる「第5回 WBSC U-15ワールドカップ」(以下ワールドカップ)。2018年以来4年ぶりの開催となる大会に、野球日本代表「侍ジャパン」U-15代表も出場。デジタルチャレンジ、最終トライアウトを勝ち抜いた20選手が、トップチームと同じ縦縞のユニホームを身にまとい、優勝を懸けた戦いに挑む。

 チームを率いるのは、2013年に侍ジャパン全カテゴリーが常設化されて以来、たびたびU-15代表監督を務めてきた鹿取義隆氏だ。鹿取監督は侍ジャパンのテクニカルディレクターとしても活動していたが、2017年に読売のフロントオフィス入り。一時、侍ジャパンから離れたが、2019年に再びU-15代表監督に復帰した。

 だが、2020年になるとコロナ禍の影響で侍ジャパンの活動は一時休止。たびたび延期されていた国際大会も今年、ようやく開催の目処が立ち、U-15代表も3年ぶりに結成されることとなった。

 今回の代表選考はU-12代表と同じく、1次審査は「全日本合同トライアウト~デジタルチャレンジ~」を開催。リトルシニア、ボーイズリーグ、ヤングリーグ、ポニーリーグ、フレッシュリーグの中学硬式野球5団体に所属する選手を対象に公募すると、全国から330人を超える応募があったという。

 鹿取監督、そして菅原和彦コーチ(本庄ボーイズ)、中條純コーチ(青森山田リトルシニア)、佐々木翔大コーチ(筑後サザンホークス)らコーチングスタッフはそれぞれ、応募があった全動画を隈なくチェック。その中から最終トライアウトへ進む40選手を選んだ。鹿取監督は「誰もがすごくレベルの高い選手に見えたので、40人を選ぶのに苦労しました」と嬉しい悲鳴を上げる。

選手選考のポイントは「基本ができていること」

 7月9日と16日の2回にわたり開催された最終トライアウトでは、ピッチング、守備、バッティングを行い、動画では確認しきれなかった動きなどをチェック。デジタルチャレンジの動画からわずか数か月の間に明らかに体が大きくなった選手もいたそうで「この年代の選手はやはり短時間に体の変化があるんだと強く感じましたね」と話す。

 最終トライアウトでは何を選考のポイントとしたのか。それは投・打・守・走のいずれも「基本ができていること」だったという。投手の場合、ワールドカップでは投球数制限が設けられているため、他のポジションもこなせる“二刀流”を中心に選考。技術的な点は「コントロールを重視しました」と説明を続ける。

「球の強さも必要ですが、投球数制限があるので無駄に球数がかさんでしまうと大変なことになる。なので、コントロールがいいピッチャー、少しアドバイスすれば良くなりそうなピッチャーを選びました。成長する可能性は全員が持っていますが、本番までの期間を考えての選考です」

 守備では「(打球を)捕ってからの動き、ステップアンドスロー」を重視。打撃は「チームでクリーンナップを打っている選手が多いので」と甲乙つけがたく、走力はタイムトライアルを行い、「ゲーム内の動きではありませんでしたが、走れる可能性のある選手を選んでいます」と太鼓判を押す。

代表チームでは普段とは違う役割も「チームのために何をすべきか」

 鹿取監督が目指すチーム像は「守り勝つ野球ができるチーム」だ。そう考える背景には、これまでU-15代表監督として数々の国際大会を戦ってきた経験がある。

「相手ピッチャーによっても変わるので、打ち勝つ野球はある程度の運が必要になる。でも、守り勝つのは運だけではできない。そこで大事になるのが基本的なことがしっかりできるかということになってきます」

 8月8日に発表された代表20選手は、21日から3日間にわたり国内直前合宿で練習を積んでからメキシコへ出発。鹿取監督はどんなチームになるのか、楽しみでもあるという。

「自チームでは全員がレギュラーで活躍する選手。誰がスタメンに入っても大丈夫だと期待しています。ただ、選ばれた20人の普段の打順を調べたところ、8番と9番は1人もいなかった。やっぱり、とは思いましたが(笑)、20人全員がスタメンに入れるわけではないし、いつもと違う役割を求められるかもしれない。そこは選手自身がクリアしていかなければいけないところ。チームのために何をするべきか考えてプレーすることは、選手たちの成長に繋がると思うので楽しみですね」

藤平、宮城らU-15代表経験者がNPB入り「成長に合わせて結果を残した」

 初対面の同世代選手たちと国際大会に臨み、海外のトップ選手たちと鎬を削る。言葉、食事、文化の違うメキシコへの遠征で、U-15代表20選手は様々なことを感じるだろう。「代表に入った段階で特別に感じることもあるだろうし、海外選手のプレーを見てパワーの差を感じるかもしれない。大人が何を感じてほしいと願うのではなく、選手自身が何を感じるか。色々感じて次のステップに繋げてほしいと思います」と鹿取監督は願う。

 その願い通り、U-15代表経験者の中から藤平尚真投手(東北楽天)、五十幡亮汰外野手(北海道日本ハム)、宮城大弥投手(オリックス)、及川雅貴投手(阪神)らNPB入りした選手もいる。こうした“先輩”たちの歩みが選手の道標にもなる。

「U-15代表がキャリアハイではなく、その後も続けて自分の技術を磨き、プロで活躍するのがベスト。藤平や宮城といった投手は成長に合わせて結果を残してきた。U-15代表では怪我のリスクが少ない投げ方を教えて、次のステップで悩まなくて済むような話をしているので、少しは役立ったかなと思います」

 ワールドカップでは、もちろん目指すは優勝だ。だが、オープニングラウンドから決勝まで最大8試合を戦う中で、20選手が次のステージに繋がる成長のヒントを掴んでくれればと願う。「伸び伸びと自分のパフォーマンスを発揮してくれればいいと思います。それがどこまで通用するか。図抜けていることもあれば、足りないこともあるでしょう。成長を楽しみにしています」。

 メキシコで世界を相手に戦う10日間。U-15代表20選手の健闘に期待したい。

記事提供=Full-Count
写真提供=NPBエンタープライズ

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