あの激戦をもう1度 2013年・第3回WBC™ 準決勝敗退から掴んだ未来へのヒント
2017年以来5年ぶりの開催が待ち望まれる「ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)。来年3月8日に開幕する第5回大会の概要が発表され、栗山英樹監督率いる侍ジャパンは第1ラウンドでB組となり、韓国、中国、オーストラリア、他1チームと東京ドームで火花を散らすことになった。
写真提供=Getty Images
第3回大会の指揮官は山本浩二監督、NPB所属選手のみで目指した3連覇
2017年以来5年ぶりの開催が待ち望まれる「ワールド・ベースボール・クラシック™」(以下WBC)。来年3月8日に開幕する第5回大会の概要が発表され、栗山英樹監督率いる侍ジャパンは第1ラウンドでB組となり、韓国、中国、オーストラリア、他1チームと東京ドームで火花を散らすことになった。
3大会ぶりの優勝を目指す侍ジャパンは11月9、10日に「侍ジャパンシリーズ2022 日本vsオーストラリア」に臨み、第1ラウンドで同組のライバルと前哨戦を行う。栗山監督がどのようなチーム編成とするのか興味深いところだが、その前に日本代表/侍ジャパンがWBCの過去4大会で見せた激戦を振り返ってみよう。今回は2013年に開催された第3回大会の熱戦をプレーバック。大会3連覇を懸けて臨んだ侍ジャパンはどのような戦いを見せたのか――。
2006年、2009年と2連覇し、王者としてその名を轟かせた日本。投手力と機動力を生かして勝利をもぎ取る野球スタイルは世界中で高い評価を受けた。国内では回を重ねる毎にWBCという大会の価値が高く評価され、3連覇への機運が高まっていった。
チームを率いることになったのは、元広島東洋の山本浩二監督。2012年10月に就任が発表されると、11月にはキューバとの強化試合に臨み、無傷の2連勝と弾みをつけた。
だが、選手選考で大きな困難に直面。かねてよりWBCへの出場を打診していたMLB球団に所属するイチロー外野手、岩隈久志投手(ともにシアトル・マリナーズ)、川崎宗則内野手(シアトル・マリナーズFA)、黒田博樹投手(ニューヨーク・ヤンキース)、青木宣親外野手(ミルウォーキー・ブルワーズ)、ダルビッシュ有投手(テキサス・レンジャーズ)の6人が出場辞退。初めてNPB球団所属選手のみでチームが編成されることになった。
2月15日から合宿をスタートさせた侍ジャパンは、広島東洋、オーストラリア代表、阪神、読売と計5試合を戦いながらチームとしての精度を高めていった。最終28人のメンバーには田中将大投手(東北楽天)、前田健太投手(広島東洋)、阿部慎之助捕手、坂本勇人内野手(ともに読売)ら日本を代表するスター選手がズラリ。全員が同じ、優勝という目標に向かって団結を強めた。
第1、第2ラウンド苦戦も、1位通過で向かったサンフランシスコ
福岡が舞台となった第1ラウンド。日本は長年のライバルでもあるキューバ、ブラジル、中国と同組となった。実力では日本とキューバが難なく第2ラウンドへ駒を進めるかと思ったが、日本は初戦のブラジル戦で苦戦。先制された後に逆転するも、再逆転を許して試合は終盤へ。だが、8回に井端弘和内野手(中日)のタイムリーをきっかけに3点を挙げ、5-3で勝利を収めた。
3戦目のキューバ戦に3-6で敗れた日本は、第1ラウンドを2位で通過。東京で行われた第2ラウンドでは、初戦のチャイニーズ・タイペイ戦で再び苦戦を強いられる。チャイニーズ・タイペイの先発はMLBで鳴らした王建民投手。得意のカットボールを打ちあぐねた日本はなかなか点が入らない。一方、チャイニーズ・タイペイは5回までに2点をリード。流れを引き寄せられずに終盤を迎えたが、日本は8回に坂本選手のタイムリーなどで同点に追いつく。直後に1点を勝ち越され、迎えた9回。見せ場がやってきた。
1死から四球で出塁した鳥谷敬内野手(阪神)は、2死後に井端選手の打席で二盗に成功。その直後、井端選手が起死回生の同点タイムリーを放ち、勝利への望みを繋いだ。延長10回に中田翔内野手(北海道日本ハム)の犠牲フライで1点を勝ち越した日本は4-3で劇的な勝利を飾った。
続くオランダ戦では16-4と圧倒し、7回コールド勝ち。順位決定戦で再びオランダと対戦すると、2回に阿部選手の1イニング2本塁打など一挙8点の猛攻で勝利。1位通過で決勝ラウンドが行われる米国・サンフランシスコへと乗り込んだ。
反撃の機運の中で生まれた、まさかの重盗失敗…
激闘を繰り返しながら米国に立った日本が、準決勝で対戦したのはプエルトリコだった。中南米を代表する野球大国でWBCでの優勝に並々ならぬ決意を見せていた。MLB最強捕手の呼び声高いヤディエル・モリーナ捕手(セントルイス・カージナルス)、好打のアンヘル・パガン外野手(サンフランシスコ・ジャイアンツ)、アレックス・リオス外野手(シカゴ・ホワイトソックス)らを擁する強打のチームを構成してきた。
決戦の日。日本の先発マウンドに上がった前田投手は初回に1点を失ったものの、その後はプエルトリコ打線を封じ、6回1失点で能見篤史投手(阪神)に繋いだ。その能見投手はリオス選手に2点弾を許し、3点差に広げられたが、8回に日本のチャンスが巡ってきた。
鳥谷選手が三塁打で得点機を作ると、井端選手のタイムリーで1点を返上。続く内川聖一外野手(福岡ソフトバンク)も出塁し、1死一、二塁とチャンスを広げて阿部選手を打席に迎えた。だが、阿部選手に対する2球目の直後、二塁走者の井端選手がスタートを切る構えを見せたのに対し、一塁走者の内川選手は実際にスタートを切り、挟殺プレーでアウト。重盗失敗で反撃しきれなかった日本は1-3で敗れ、涙を呑んだ。
3連覇を逃す悔しい結果となったものの、未来に繋がる教訓を得た大会でもあった。この大会まで代表監督選出から本番まで、わずか半年ほどの準備期間でチームを急造していたが、第3回大会後にはトップチーム以下、アンダー世代、女子代表も含めた体制を強化。侍ジャパンの常設化がスタートするなど、未来を見据えたチーム作りと強化が進められるきっかけとなった。
※()内は当時の所属球団
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