成長を後押した「大きな財産」 日米大学野球から3年 中央大・森下翔太の現在地

2022.5.30

2019年に行われた「第43回日米大学野球選手権大会」で、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表は3勝2敗で米国に勝ち越し、3大会ぶり19回目の優勝を飾った。当時のメンバー24人のうち18人がプロ野球選手となり、4人が名門の社会人チームに入った。残るは、当時1年生だった中央大学・森下翔太外野手と亜細亜大学・田中幹也内野手の2人。3年前の経験を基に成長した森下選手は4年生となった今年、ドラフト上位候補として名前が挙がる。

写真提供=Full-Count

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2019年の日米大学野球で1年生ながら代表メンバーに抜擢

 2019年に行われた「第43回日米大学野球選手権大会」で、野球日本代表「侍ジャパン」大学代表は3勝2敗で米国に勝ち越し、3大会ぶり19回目の優勝を飾った。当時のメンバー24人のうち18人がプロ野球選手となり、4人が名門の社会人チームに入った。残るは、当時1年生だった中央大学・森下翔太外野手と亜細亜大学・田中幹也内野手の2人。3年前の経験を基に成長した森下選手は4年生となった今年、ドラフト上位候補として名前が挙がる。

 エースは森下暢仁投手(現広島東洋)、4番打者は牧秀悟内野手(現横浜DeNA)、ブルペンには伊藤大海投手(現北海道日本ハム)らがスタンバイ。錚々たるメンバーが集まった大学代表の中で、1年生ながら先発メンバーに名を連ねたのが森下選手だった。東都大学野球リーグで一際輝いていた長打力が、大学代表で指揮を執った生田勉監督(亜細亜大学)の目に留まり、抜擢された。
 
「選ばれた時は素直に嬉しかったです。楽しみでしたが、レベルが高いと言いますか、一人ひとりの野球に対する意識が高いなと感じました。まだまだ上には上がいる、と感じた瞬間でした」

通算11打数無安打も貴重な経験に感謝「大きな財産になっています」

 対戦した米国代表も、メジャーリーガーの卵と呼ばれる逸材ばかり。第1・2戦は「5番・指名打者」で出場したが、あわせて6打数無安打2四死球。大会を通じても11打数無安打と快音は響かなかったが、先輩たちの活躍のおかげで、歓喜の輪に加わることができた。

 結果は残せなかったが、大会での経験は苦い記憶にはなっていない。むしろ、前に進むための原動力になったとさえ感じている。あの大会のおかげで、自分に足りないことが明確になったからだった。

「ここを伸ばせばいけるな、という手応えもありました。自分は長打力が持ち味だと思っているのですが、そこの部分では(米国相手でも)負けていない部分もあるなと感じることができました」

 打撃だけでなく、スピードでも自信を深めた。東海大相模高時代から「鍛えられてきました」という俊足は、守備に就いても、走者としても、光った。

「安打が出れば良かったとは思いますが、1年生なのに試合で使っていただいたこと、あの環境の中でプレーをできたことが、大きな財産になっています。先輩たちの野球はとてもレベルが高いものでしたが、(実力が)とても離れているという感じではありませんでした」

“お手本”となった早川隆久の試合までの準備

 数多くの“お手本”に囲まれながら過ごした日々で、特に印象に残っているのが、早稲田大学3年だった早川隆久投手の立ち居振る舞いだという。後に東北楽天へドラフト1位入団した左腕の姿は勉強になった。

「振り返ると、今プロで活躍している選手は試合に入るまでの準備や取り組み方が、アップの段階から違っていたなと思います。それに落ち着いていましたね。やはり侍ジャパンに入って、心の中はワクワクしているので、他の選手と話をするのに夢中になりがちでしたが、早川さんは話をしながらでも自分のやるべきことはやっていました」

 名だたる上級生ばかりが揃う環境の中で緊張をほどいてくれたのは、中央大学で2学年先輩でもある牧選手だった。4番打者として優勝に貢献した先輩には、グラウンド内外で頭が上がらない。

「牧さんが自分に気を遣ってくださったので、ずっと後ろについて回りました。明るい性格の牧さんにはいろいろな選手が話しかけてくるので、そこで僕からも声をかけて多くの人と話をすることができました」

再び袖を通したい代表ユニホーム「侍ジャパンは目指す場所」

 コロナ禍の影響もあり、2019年を最後に日米大学野球は開催されていない。未来のプロ野球選手たちと一緒に過ごし、未来のメジャーリーガーたちと対戦した経験はかけがえのないものとなった。その記憶はいつまでも色褪せない。

 思い出が詰まった侍ジャパンのユニホームは、実家で両親が大切に保管している。

「代表選考合宿中に採寸をしたのですが、絶対に受かりたいとメラメラ燃えるものがありました。ユニホームに袖を通した時は本当に嬉しかったです。侍ジャパンは目指す場所。またあのユニホームを着たいという目標が、自分の技術向上にも繋がっていると思います」

 今秋の新人選手選択会議(ドラフト会議)では上位指名が期待されるが、その目はすでにプロ入り後も見据えている。大学代表でのチームメートがプロで活躍する姿は、刺激以外の何物でもない。

「みんな徐々に1軍で試合に出始めています。自分はまだ大学4年で、プロの世界に入っていません。(先輩の姿は)いい刺激というか、悔しい部分が大きいです。4年生になってから『自分も(プロに)行ったら絶対に一番になってやろう』という気持ちがどんどん大きくなってきています」

 日の丸を背負った経験を糧に成長し続けた3年間。満を持してプロ入りを待つ森下選手は、先にプロへ羽ばたいていった先輩たちと、いつの日か再び侍ジャパンのユニホームを着ることを夢見ている。

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