「圧倒的」な強さで世界一を目指す 侍ジャパン女子代表・中島監督がW杯7連覇に懸ける想い
「私も日本代表というチームに育てられてきたことは間違いないので、恩返しができればと思いました」2021年3月1日からメキシコ・ティファナで開催予定の「第9回 WBSC女子野球ワールドカップ」に向け、侍ジャパン女子代表チームを率いることになった中島梨紗監督は、監督就任を引き受けた理由を明かした。
写真提供=NPBエンタープライズ
現役時代は5大会連続出場、ワールドカップ連覇の礎を築く
「私も日本代表というチームに育てられてきたことは間違いないので、恩返しができればと思いました」
2021年3月1日からメキシコ・ティファナで開催予定の「第9回 WBSC女子野球ワールドカップ」に向け、侍ジャパン女子代表チームを率いることになった中島梨紗監督は、監督就任を引き受けた理由を明かした。
現役時代は投手として活躍。強豪・神村学園高校から桜美林大学に進学すると、男子準硬式野球部に練習生として参加しながら、クラブチーム「侍」で技術を磨いた。大学在学中の2006年、台湾が舞台となった「第2回 IBAF女子野球ワールドカップ」に初出場すると、2014年の第6回大会まで5大会連続出場を果たし、連覇の礎を築いた。
大学卒業後に「侍」に所属する傍ら、語学留学やワーキングホリデーを利用しながらオーストラリアで野球経験を積んだ時も、帰国後に女子プロ野球チーム「イースト・アストライア(現・埼玉アストライア)」でプレーした時も、「常に目標としてきた」のは日本代表チームだった。
「私は常に日本代表を目標としていました。やはり目標とする場所があるのはモチベーションにもなる。ただ日本代表になりたいというだけではなく、なぜそこでやりたいのか、を教わった特別な場所です。ワールドカップの結果だけを見ると圧勝のイメージがあると思いますが、そのために積み重ねたことは代表でしか味わえない経験。達成感、団結、チームとして戦う大切さを学ばせていただいた場所ですね」
現在、日本代表はワールドカップ6連覇中。当然ながら、来年の第9回大会には7連覇の期待がかかるわけだが、監督と立場を変えた今は、選手とは別の視点が必要となる。
「選手の時は自分がやるべきことをしっかりやるだけ。自分ができることを100%出せるように集中すればよかったですが、チームを率いる立場になると、視野を広く持って、順序立てて物事を進めていかないといけない。勝って当たり前と言われる状況もあるので、そのプレッシャーもありますね」
恩師・大倉孝一元監督の姿に学ぶ準備や気遣い「あの経験は大きかったですね」
代表監督の就任要請を受けた時、「やります」と即答はできなかったという。現役引退後の2016年、韓国で開催された第7回大会に投手コーチとして参加した時、代表監督の大変さを目の当たりにしたからだ。
「私が尊敬している指導者の大倉孝一さんが監督でしたが、チームの外から試合を見ている人には分からない準備や気遣い、作戦の練り方などを間近で見て、当時『これは私には無理だな』と思っていました。その印象もあったので、私で大丈夫かなと、少し時間をもらって考えました。でも、投手コーチの経験がすごくいい勉強になっていて、やりたいこと、やるべきことが見えていた。あの経験は大きかったですね」
もう一つ、2017年に1シーズンだけではあったが、埼玉アストライアを監督として率いた経験も大きかった。シーズン開幕当初、チームは黒星が大きく先行。周囲から指導の甘さを指摘されることもあった。自分の指導スタイルを変えた方がいいのか迷った時期もあったが、「とりあえず変えずに1年貫いてみよう」と決意。監督の想いが通じたのか、後半に調子を上げたチームは年間女王に輝き、シーズンの幕を閉じた。
「“チームワーク”をテーマに掲げて1年間やり抜きました。試合の最初から最後まで100%の力を出し切り、試合に出ていようが出ていまいがチームのために自分ができることをする選手が多いチームが強い。そのような話から始まったシーズンでしたが、最初はなかなか勝てなくて……。それでも最終的には優勝という形に結びつき、間違っていなかったんだ、というのが正直うれしかったですね」
日本代表でも重視したいのは「チームワーク」だ。野球に対する姿勢はもちろん、グラウンドを離れた場面でも、チームのためにチームを一番に考えて動けるか。「私の中ではそこが一番ですね」と明かす。
7連覇を目指すW杯「胸を張って『これが日本代表チームです』と言えるチームに」
12月19、20日の2日間にわたり、代表候補43選手が参加する選考合宿が行われた。この中からメンバーに選ばれるのは半数以下の20人。文字通り、日本の女子野球界を代表する精鋭たちには、ハイスタンダードな資質を求める。
「胸を張って『これが日本代表チームです』と言えるチームにしたいですね。日本に限らず、世界中の誰からも応援してもらえるような、そんな素敵なチームにしたいと思います。野球が上手いのは当然。さらにもう一つ上のレベルに行くには、『これが女子野球日本代表なんだ!』『見ていて気持ちいいね!』と思われる言動や代表らしさが大切。流石だな、と思われるチームを作っていきます」
7連覇を狙う「第9回 WBSC女子野球ワールドカップ」には「圧倒的」をテーマに臨む姿勢だ。近年、世界各地の代表チームが目を見張るようなレベルアップを遂げている。女子野球界にとって素晴らしい進歩だが、世界のトップを走り続ける日本も成長を止めてはいけないという想いがある。
「2018年の前回大会はオーストラリア代表の投手コーチを務めました。その時、対戦相手として日本に『ひょっとしたら勝てるかも』と思ったことがありました。以前は海外チームにとって手が届かないところにあった日本との差が、少し縮まっている気がしました。だからこそ、もう一度『手が届かない』と思われるくらいの圧倒的な差を見せたい。その力は十分にありますし、全力を出し切る覚悟を持って臨みたいと思います」
野球の競技人口が減少していると言われるが、女子に限って言えば競技人口やチーム数は増加しているという。この機運をさらに後押しするためにも、代表チームが果たす役割は大きい。
「この流れを広げていくには、日本代表の活動をどんどん発信していくことが大切だと思います。代表選手が魅力的だったら、子どもたちは『ああいう選手になりたい』と目標にしてくれる。少しずつ女子野球の輪が広がっていることは確かなので、コツコツと継続していきたいですね」
2021年3月、ワールドカップ7連覇で女子野球日本代表の歴史を繋ぎ、日本全国、そして全世界でプレーする野球少女に夢と希望を届けたい。
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