稲葉監督の言葉から読み解く2020年の侍ジャパン 3年の集大成で狙う世界一

2020.1.6

いよいよ2020年が幕を開けた。野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームを率いる稲葉篤紀監督にとって、今年は集大成の年となる。2017年7月に現職に就任。当初から目標に掲げるのが、今夏に東京で迎える大一番で世界の頂点に立つことだった。

写真提供=Getty Images

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2019年は「プレミア12」で10年ぶりに世界の頂点に

 いよいよ2020年が幕を開けた。野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームを率いる稲葉篤紀監督にとって、今年は集大成の年となる。2017年7月に現職に就任。当初から目標に掲げるのが、今夏に東京で迎える大一番で世界の頂点に立つことだった。

 トップチームは昨年11月に開催された「第2回 WBSC プレミア12」で見事、優勝を飾った。2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック™(WBC)以来となる、10年ぶりの世界一で2020年に向けて弾みをつけた稲葉ジャパン。ここでは2019年の発言を振り返りながら、稲葉監督が描く2020年を読み解いていきたい。

 2019年、トップチームは3月9日と10日に行われた「ENEOS 侍ジャパンシリーズ 2019 日本vsメキシコ」から始動。この時、選ばれたメンバーは28人のうち27人が平成生まれという若手主体の構成となった。稲葉監督はその理由として「このメキシコ戦は私の選択肢を増やすためにも、まだ見ていない力のある選手を試す最後のチャンス」と説明。「五輪本番もイメージしながら、直接見たいと思って初めて呼ぶ選手、2020年以降のトップチームでの活躍を期待し、経験を積んでほしいと思った選手も呼んでいます」とし、吉田正尚外野手(オリックス)や村上宗隆内野手(東京ヤクルト)をはじめ、初招集11人というフレッシュな顔ぶれに経験を積ませた。

 国際大会のような短期決戦の場合、不測の事態で選手がチームを離脱した時の対応策が重要になる。また、次世代に繋ぐという意味でも、若手の中に侍ジャパンの経験を持つ候補者を増やすことは不可欠だ。ここでは吉田外野手が2試合で満塁弾を含む6打点と活躍した他、村上内野手、今永昇太投手(横浜DeNA)、山岡泰輔投手、山本由伸投手(ともにオリックス)が才能を光らせ、稲葉監督は「若い選手がどういうプレーしてくれるのかな、という中ですごく選択肢が増えて収穫があった」と手応えを掴んだ。

「プレミア12」の優勝で見えた2020年の大枠「熱いメンバーで」

 そして10月1日、「プレミア12」と前哨戦となる「ENEOS 侍ジャパンシリーズ 2019 日本vsカナダ」に向けたメンバー発表の席。「試すというのは、3月のメキシコ戦で終わりました。大会で勝てるチームを作っていこうと思っています。東京五輪とこのプレミア12で全く違う選手を選ぶことはない。土台になる選手たちになっていくと思います」と稲葉監督が選んだメンバーは、松田宣浩内野手(福岡ソフトバンク)、坂本勇人内野手(読売)らベテランから、高橋礼投手(福岡ソフトバンク)、山本投手ら若手まで幅広い顔ぶれとなった。

 就任以来「スピード&パワー」を標榜してきた稲葉監督だが、「プレミア12」では北中米のパワーピッチャーに打線が苦戦。国際大会では「連打をして点を取るというのは難しいと感じた。機動力とバントを使ってやっていく必要がある」と方針を微修正。「粘り強くやっていく。四球を選ぶ、バントをやる、なかなか長打は出ないので1点ずつコツコツ取るというのは勉強になりました」と話し、攻撃の方向性を見出した。

 4番として起用した鈴木誠也外野手(広島東洋)が全8試合で安打を放ち、打率.444、3本塁打、13打点と大会MVPを獲得。投げては、7回は初招集でプロ1年目の甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)、8回は山本投手、そして9回は守護神の山崎康晃投手(横浜DeNA)という勝利の方程式が誕生。投打両面で2020年への大枠が整ってきたことを伺わせた。

 稲葉監督が常日頃から大切にしているのは「結束力」だ。この時は強化試合のカナダ戦の10日前から合宿をスタート。「長めの合宿をお願いさせてもらいました。最長1か月、監督、コーチ、選手とコミュニケーションを図り結束していきたい」と同じ時間を共有し、チームとしての意識を高めた。その結果が、10年ぶりの世界一だ。稲葉監督は「今回は特にジャパンに対して想いがあるメンバーが集まってくれた。熱いメンバーで戦いたかった。これからもそういうメンバーで戦いたい」と話している。

鍵を握るメンバー選考、スペシャリストを「どれだけ入れられるか、必要になってくるか」

 2020年の侍ジャパンは、これまでの指揮官の発言から「プレミア12」の優勝メンバーが中心となりそうだ。だが、コンディションの問題でメンバーを外れた菅野智之投手(読売)、千賀滉大投手、柳田悠岐外野手(ともに福岡ソフトバンク)、森友哉捕手(埼玉西武)らについて、稲葉監督は「彼らは当然、実力があるので候補に入ってくると思います」と明言。日本球界を代表する選手たちが加わる可能性は十分ある。

 さらに、「プレミア12」で存在価値を高めた俊足の周東佑京外野手(福岡ソフトバンク)、リリーフの大竹寛投手(読売)や嘉弥真新也投手(福岡ソフトバンク)ら“スペシャリスト”について「大会を通じて必要になるのではないかと考えるようになりました」という指揮官。だが、プレミア12では28人だった登録枠が24人に減ることから、「どれだけ入れられるか、必要になってくるか。24人になる中で投手と打者で何人ずつになるか、スペシャリストを入れるか考えていきたい」と、最後まで頭を悩ませることになりそうだ。

「プレミア12」で世界一となり、成功体験を身に付けた稲葉ジャパン。監督、コーチ、選手らはそれぞれ世界の頂点に立つには何が必要なのかを感じ、そして目標を達成した時のこの上ない喜びを味わった。2019年11月に開催された「日本通運×侍ジャパン 野球教室」で、集まった子供たちに「金メダルが取れるように頑張ります」と力強く宣言した稲葉監督。2020年夏、稲葉ジャパンの集大成として挑む場で世界の頂点に立ち、日本中を感動の渦に巻き込みたい。

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