元日本ハムエース西崎幸広氏が大切にする野球指導「自分なりの方法を考えさせます」
競技人口の減少が課題とされる野球界では、かつてプロ野球選手として一世を風靡した多くのOBが、子供たちの野球離れにブレーキを掛けるべく、各地で野球教室や体験会を開催している。1987年のデビュー以来、日本ハムのエースとして活躍した西崎幸広氏もその1人だ。入団1年目から3年連続15勝以上をマークし、通算15年の現役生活では127勝102敗22セーブ、防御率3.25の成績を残した右腕は、現在日本ハムOB会長や野球解説者を務める傍ら、各地で行われる野球教室に講師として参加している。
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小学校低学年を中心に野球教室「『野球って楽しいんだ』と感じる経験を」
競技人口の減少が課題とされる野球界では、かつてプロ野球選手として一世を風靡した多くのOBが、子供たちの野球離れにブレーキを掛けるべく、各地で野球教室や体験会を開催している。1987年のデビュー以来、日本ハムのエースとして活躍した西崎幸広氏もその1人だ。入団1年目から3年連続15勝以上をマークし、通算15年の現役生活では127勝102敗22セーブ、防御率3.25の成績を残した右腕は、現在日本ハムOB会長や野球解説者を務める傍ら、各地で行われる野球教室に講師として参加している。
東京都軟式野球連盟が主催する野球教室や、王貞治氏が主宰する団体の野球教室など、年に20回ほど講師として子供たちの前に立つ。東京都軟式野球連盟主催の野球教室は、主に小学校1年から3年生が対象となり、中にはこれから本格的に野球を始めようという初心者も多い。まだ何色にも染められていない子供たちと触れ合うことは「これがまた面白いんですよ」と笑顔を見せる。
「小学校の低学年、特に1年生は集中力が長く続かないから、楽しくないと何かをやり続けられないんですよ。もちろん、野球もそう。さらに、お兄ちゃんが野球をしているから始めたとか、お父さんお母さんに勧められて始めたとか、基本的に自分の意思ではなく始めた子供も多い。だから、1年生から3年生までの早い時期に『野球って楽しいんだ』と感じる経験を積んで、長く野球を続けてもらいたいんです」
「全員が同じ投げ方だったら個性がないじゃないですか」
西崎氏が子供たちに教える時、大切にしていることがあるという。それは、やり方を押しつけないことだ。
「僕が教えることや僕が言うことがすべてではないんですよね。だから、必ず言うんです。『今からこういうことを教えます。だけど、これがすべてではない。これを参考にして自分はどうするか考えてみて下さい』って。詰め込む教え方ではなくて、自分なりの方法を考えさせるんです。
僕が子供の頃は『ああやって投げろ、こうやって投げろ』と、指導者が思う投げ方を教え込む方法が主流でした。でも、全員が同じ投げ方だったら個性がないじゃないですか。それじゃ面白くない。実は、昔の投手ほど個性的な投げ方が多いんです。プロになる人は聞いたことを自分なりに応用できるんですね。だから、僕は基本しか教えません。基本があって応用がある。基本を押さえておけば、その先は自由に変えていいんだよって伝えます」
もちろん、子供の理解度や習熟度は個人によってバラバラだ。中には、うまく基本を応用につなげられない子供もいる。そういう場合には、もう一歩踏み込んだアドバイスを送るという。
「例えば、キャッチボールをしている子供に『上半身だけじゃなくて、足を踏み出して投げてみるといいよ』という話をすると、足を踏み出すことばかりに集中してしまって、投げ方がぎこちなくなってしまうことがあります。急にロボットみたいになってしまうんですね(笑)。そういう時は、投げる瞬間に後ろから軽く体を押してあげるんです。そうすると、バランスを保つために足が一歩前に出る。足を踏み出すっていうのは、そういう感覚だよって教えてあげると、子供はすぐに理解しますね」
野球を通じて身につけてほしいこと「ルールに従うこと」
そして、もう1つ、子供たちに野球を通じて身につけてほしいことがある。それが「ルールに従うこと」だ。
「野球には、ピッチングにしてもバッティングにしても守備にしても、ルールがあります。これは社会に出ても一緒。社会にはルールがありますから、それにしっかり従えるようになってほしいですね。野球を通じて、野球が上手くなるというだけではなく、人間的な部分でも大きく成長してほしいですから」
野球をプレーする上では、基本を参考に自分で考えた応用に取り組める子供。そして、一人間としては、相手を尊重しながらルールを守れる子供。野球をプレーする楽しさを伝えると同時に、子供たちの将来を見据えた指導を通じて、これからも野球界に貢献していく。
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