侍ジャパントップチームに初選出 サブマリン右腕を変えた大学代表での経験

2018.10.30

自らのことを「絶滅危惧種」と呼ぶ。野球界を見渡しても数少ないアンダースロー。別名“サブマリン”とも称される変則投法で注目を集めているのが、福岡ソフトバンクの高橋礼投手だ。

写真提供=Full-Count

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福岡ソフトバンクのルーキー右腕、大学2年生で選出された侍ジャパン大学代表で得たもの

 自らのことを「絶滅危惧種」と呼ぶ。野球界を見渡しても数少ないアンダースロー。別名“サブマリン”とも称される変則投法で注目を集めているのが、福岡ソフトバンクの高橋礼投手だ。

 今季ドラフト2位で専修大からプロ入りを果たした右腕。ここまでまだプロ0勝でありながら、その潜在能力を高く評価され、11月に行われる「2018日米野球」の侍ジャパンメンバーにも選ばれている。DeNAの東克樹に代わっての代替招集ではあるものの、稲葉篤紀監督は以前からその存在を高く評価していたという。

 このサブマリン右腕、かつて一度、侍ジャパンのユニホームに袖を通している。それが、2015年7月に韓国・光州で行われたユニバーシアード競技大会。この大会に際して結成された「侍ジャパン大学代表」の一員に、当時2年生ながら選出されている。

 この時、メンバーで2年生は2人だけ。先輩たちばかりの中で初めて侍ジャパンの一員として戦った。大学生とはいえ、日の丸を背負って戦うという経験に「大学生ではありましたけど、日本の代表として戦う責任感はすごくありました。これが日本なんだ、と良くも悪くも思われるので、しっかり結果を出したい、出さないといけないという思いはありましたね」と当時を振り返る。

 この大会、侍ジャパン大学代表はチャイニーズ・タイペイ代表とともに見事優勝した。決勝戦が悪天候のために中止となり、両国優勝という形にはなったが、韓国やアメリカといった相手と戦いながら、予選リーグから準決勝まで1点も失わない圧巻の戦いぶりを見せた。高橋礼投手も予選リーグ初戦の韓国戦、そして準決勝のアメリカ戦で1イニングずつを投げて無失点、1安打も許さなかった。

 初めて日の丸を背負っての国際大会。世界と日本とのある違いを感じたという。「日本のバッターのほうがいやらしさは感じます。ただ、特にアメリカの打者のパワーは恐怖でした。打撃練習を見ていても、すごい打球を飛ばすような選手もいて、ホームランを打つようなスイングをしている。そういうところが日本とは違いますね」。

 そのパワーには驚かされながらも、サブマリン独特の球筋が、国際舞台で威力を発揮するとも感じたという。「浮き上がる系のボールだったり、カーブも高めに投げたほうが効いていましたね。日本では低めに投げて目線を変えさせる感じですけど、アメリカの打者には高めに浮いたほうが、イヤそうに感じましたね。短期決戦で対応するのは難しいとは思います」。滅多にお目にかかることのできないアンダースローから、浮き上がってくるような球筋。それを一朝一夕で捉えるのは、至難の業。一発勝負の国際大会などでは、大きな武器となるだろう。

 国際舞台で多くの投手が苦労するのが、ボールの違い。このユニバーシアードもまた、日本のボールとは異なる国際球が使用されていた。ただ、高橋礼投手は、ボールの違いに関しては、それほど気にならなかったという。「若干、大きくて、縫い目の高い感じでしたね。そういうボールがあるというのは知っていましたので、意識せずに、こういうボールなんだ、次は違うボールが来るだろうな、と思いながらやっていました」。

歴代の侍ジャパンではアンダースローの投手が活躍「得られるものは大きい」

 1球ごとにボールの大きさが違い、1球ごとに縫い目の高さが違う。しかも、縫い目の山の高さも1球1球、少しずつ違っていた。「全部高かったら気になったかもしれないですけど。気にすると良くない感じはします」と回想する。さらに、今後の国際大会でも生きるようなヒントも口にした。

「綺麗な真っ直ぐを投げようとすると、抜けたり、引っ掛けたりすることがあるので難しい。高めに抜けたり、沈んだり。普通に真っ直ぐを投げても(ボールが)動くので、アバウトにいけばいいかなくらいの感覚で良かったですね」。ボールの質で、日本球よりもボールがナチュラルに変化しやすいという。

 この時の経験は、その後の高橋礼投手にとって大きな経験を与えてくれた。大会メンバーは錚々たる顔ぶれだった。投手は上原健太投手、浜口遥大投手、柳裕也投手、吉田侑樹投手、井口和朋投手、澤田圭佑投手、田中正義投手と全員がその後プロ入り。捕手でも坂本誠志郎捕手、宇佐美真吾捕手、野手で柴田竜拓内野手、藤岡裕大内野手、茂木栄五郎内野手、横尾俊建内野手、山足達也内野手、高山俊外野手、吉田正尚外野手と大半の選手がプロの世界に進んでいる。

「吉田正尚さんや茂木さんとかは凄くて、練習の量が落ちない、落とさないんです。ずっと宿舎でもスイングをしていましたね。投手の人は、そんなに大会中は練習をガツガツやる感じではなかったですけど、自分の体のケアは入念にされていた。正義さんもそうですし、浜口さん、柳さんなど、自分の体に繊細だなと思いましたね。当時、自分の体に興味があまりなかったので、それは勉強になりました。色々刺激を受けましたし、そのあとの大学野球の生活に凄く生きました。今でも生きているくらいなので、自分の体に興味を持つ、自分を知るというのは凄く大事なことだと思いました」

 世代でトップを走る選手たちの野球に取り組む姿勢を目の当たりにし、自らの意識が変わった。あの時の経験があるからこそ、その後の大学生活で成長を遂げ、プロの世界、そして、今回の侍ジャパントップチーム選出へと繋がっていった。

 これまで歴代の侍ジャパンには渡辺俊介氏や牧田和久投手(サンディエゴ・パドレス)のように、アンダースローで活躍した先輩たちがいた。「アンダースローのお二方は活躍されているので、自信があるわけではないですけど、胸張ってアンダースローとしてやっていきたいと思っています」と語る高橋礼投手。「日本の代表なので、それで世界一を争うというのは得られるものは大きいと思います」と思い描いていた侍ジャパントップチームでのチャンスが早くも巡ってきた。「絶滅危惧種」のアンダースロー。メジャーの強打者たちにひと泡ふかせる瞬間を見せて欲しい。

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次回:11月5日20時頃公開予定

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